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2015年1月9日

給付減・負担増計画を撤回し、国民皆保険の充実を求める【談話】

全国保険医団体連合会
政策部長 三浦 清春

一、厚生労働省は1月9日、26日招集の通常国会に提出する医療保険制度改革法案の骨子案を社会保障審議会医療保険部会に提示した。
骨子案は、「負担の公平化」の名で、@在宅医療との公平性を理由にした入院時の食事代の自己負担引き上げ、A紹介状なしの大病院受診時に1〜3割負担とは別に定額負担を求める、B75歳以上の高齢者865万人の保険料引き上げなど、全ての世代に負担増を押し付けるものとなっている。個人の健康や疾病には社会的・経済的要因も大きく影響する。経済的理由で患者になれない病人≠ェ増加しているのに負担増を強行するならば、重症化が進み、医療費はかえって増大することが懸念される。

一、看過できないのは、患者の自己責任による混合診療を2016年度から実施することである。「患者申出療養(仮称)」を創設し、現行の先進医療と同等の有効性・安全性を確保するとされているが、先進医療の対象外の患者や、先進医療で実施されていない療養なども対象とされている。安全性・有効性が未確立なまま実施されている自由診療や、なんらかの理由で先進医療として実施できない臨床研究まで、混合診療を拡大し、医療保険の財源が流用されることになる。患者の安全性や医療の倫理性が蹂躙されることが危惧される。

一、骨子案では、「医療介護総合法」に基づく供給体制再編計画、医療費適正化計画、国保制度見直しを軸にした新たな医療費抑制策が盛り込まれ、都道府県にその責任を押し付けるものとなっている。
医療費適正化計画の見直しでは、都道府県単位で医療費水準の目標、医療の効率的な提供の目標の設定を法定化し、実績と乖離した場合の要因分析と対策を講じるよう求めている。
国保については運営責任を2018年度から都道府県に移行するとしている。都道府県は統一的な国保運営方針を定め、医療費(見込み)を各市町村で分担し、市町村ごとの医療費水準なども反映させて分担金額を決定する。医療費の水準と市町村が納める分担金、すなわち国保料をリンクさせる仕組みを導入するものになっている。さらに、市町村ごとの標準保険料率を設定するだけでなく、都道府県単位で保険料率を一本化することも検討されており、保険料の高騰を招くことが懸念される。

一、「社会保障プログラム法」に基づき、保険者が加入者の予防・健康づくりの「自助努力」に応じて「保険料への支援」を実施できることが盛り込まれている。保険料の減額や現金の支給について検討されているが、財政的な増減を生じさせない仕組みとされており、健康づくりを怠り、疾病リスクが高くなった加入者の保険料は増額されることになる。予防・健康づくりの取組を客観的に判断できるのか極めて疑問である。保険料は所得に応じて、保険給付は平等にという国民皆保険の原則を崩すことを認めることはできない。

一、骨子案は、@患者負担、A保険給付の範囲、B医療費適正化に関する施策について、「今後さらに検討を進めるべき事項」としている。「社会保障・税一体改革」路線のもとで、さらなる給付減・負担増の道筋をつけようとするもので、国民皆保険の崩壊につながることが危惧される。
医療保険制度改革は、「必要な医療が公的保険で受けられる」という国民皆保険の本質を守り、充実させるべきである。それに逆行する骨子案は撤回し、広く国民的な議論と合意形成に努めることを強く求めるものである。

以上