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2015年2月6日

これでは介護崩壊が加速する
国庫負担を拡充し、介護報酬の引き上げ・改善を 【談話】

全国保険医団体連合会
地域医療対策部
医科部長 中島 幸裕
歯科部長 賀来 進 

 

1.介護崩壊を食い止めるため、介護報酬のプラス改定を改めて求める
 2月6日に開催された社会保障審議会「第119回介護給付費分科会」は、2015年度介護報酬改定案を諮問通り了承した。
 改定内容は、1月14に閣議決定した「マイナス2.27%」を前提としたもので、基本報酬の多くが引き下げられている。介護職員処遇改善加算については、さらなる要件を満たした場合の加算Tが新設されたが、介護職員の給与は介護報酬全体で賄うため、ネットでのマイナス改定は、介護職員の処遇改善を困難にしてしまう。
 介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するものである。医学・医療の新たな知見や介護技術の進歩を介護報酬にしっかりと反映させ、介護担当者の労働条件を改善するためには、介護報酬全体の引き上げを図ることが必要である。
 そもそも、介護報酬は、介護事業所の必要経費を補填するとともに、公的介護保険の範囲や質・量を規定するものだが、その役割は、それだけにとどまらない。
 平成22年版厚生労働白書では、『とりわけ、医療・介護分野については、経済波及効果及び雇用創出効果がある。このため、…成長と雇用の創出が期待される』、『社会保障を持続可能なものにするとともに、その充実を図り、不安を取り除くことで、消費を促し、経済を活性化させることも期待できる』と明記している。
 国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することである。公約を実現し、介護崩壊を食い止めるためにも、国庫負担を拡大し、介護報酬のプラス改定を行うことを改めて求めるものである。

2.施設サービスや短期入所の評価を引き上げ、介護療養病床の廃止を撤回すべき
 介護療養病床の施設サービスや短期入所療養介護に、機能強化型の報酬が設定されたが、これまでよりも報酬は引き下げられた。また、機能強化型以外の介護療養病床の引き下げ幅はさらに大きい。介護老人保健施設も特別養護老人ホームの施設サービスや短期入所についても大きく引き下げられた。
 政府は、施設サービスの切り捨てを進めようとしているが、施設は介護を必要とする者と介護をする者が一箇所に集まることで、設備も人員も、そして介護のノウハウも蓄積するというメリットがある。居宅における療養環境を改善し、希望する者が居宅で必要な介護を受けられるようにすることは当然だが、施設の方が介護サービスの効率が良く、医療ニーズへの対応もしやすいという点を無視してはならない。
 特に、介護療養型医療施設の2018年3月末での廃止を撤回し、必要な施設療養が受けられるようにすべきである。

3.医療系介護報酬は、区分支給限度額から外すべき
 訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、医学的な必要に応じて実施すべきであるが、区分支給限度基準額の範囲でしか介護保険給付を受けられない。
 これらのサービスや、区分支給限度基準額の対象外である居宅療養管理指導や介護老人保健施設、介護療養型医療施設における介護を除く部分は医療そのものであり、医療保険の窓口負担率を大幅に引き下げて、医療保険給付に戻すべきである。
 少なくとも、区分支給限度に組み込まれた訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、区分支給限度の対象から除外すべきである。

4.居宅療養管理指導における同一建物居住者減算を廃止すること
 医師、歯科医師等の居宅療養管理指導については据え置かれたが、前回改定で導入した「同一建物居住者」に対する10%減額は、そのままである。そもそも居宅療養管理指導は、「居宅療養上の指導や他の事業所との連携」を評価するものであって、訪問診療にかかわる費用は、医療保険で評価している。
 したがって、「同一建物居住者」の居宅療養管理指導を減額する理由はなく、「同一建物居住者」に対する10%減額を廃止すべきである。

5.認知症対応型共同生活介護をはじめ、介護報酬を引き上げること
 認知症への対応の強化が求められているにもかかわらず、認知症対応型共同生活介護や、認知症対応型通所介護の報酬が引き下げられた。認知症への対応を強化するためにも、認知症対応型共同生活介護、認知症対応型通所介護報酬を引き上げるべきである。

6.訪問介護、通所介護の新総合事業への移管を止め、全国一律の介護保険給付とすること
 介護保険法「改正」によって、2015年4月より、新総合事業が開始され、2017年3月までの経過措置を経て、現在は全国一律に給付されている要支援者に対する訪問介護と通所介護が市町村独自に実施する新総合事業に移管される。
 しかし、新総合事業は、全国一律のサービス提供を廃止し、市町村の財源や資源に応じたサービス水準と報酬にするものであり、これは介護サービスに対する国の責任を放棄し、歯止めのない介護サービスの低下を生み出すこととなる。
 要支援者に対する訪問介護と通所介護を全国一律の介護保険給付に戻すべきである。
 また、訪問介護は、介護保険制度のかなめであり、報酬を引き上げるべきである。

7.告示・通知の発出から実施まで、十分な周知期間を設けること
 2006年の診療報酬と介護報酬の同時改定では、4月から改定される内容が3月下旬〜4月に入らなければ判明せず、しかも誤りが多く、介護現場に大混乱をもたらした。2009年改定では一定改められたが、2012年改定も通知が出されたのは3月16日であった。
 こうした事態にならないよう、早急に告示・通知を発出すべきである。

以上