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【談話】川内原発差し止め却下の決定に抗議する

2015年4月23日

全国保険医団体連合会
公害環境対策部長 野本 哲夫

 

 鹿児島地裁は4月22日、原子力規制委員会の新規制基準について、「不合理な点はない」として、九州電力・川内原発1、2号機の再稼働差し止めを求めていた住民の訴えを却下する仮処分を決定した。審理では、基準地震動の適否、巨大噴火の可能性、避難計画の実効性が主な争点となっていたが、決定は原告側の主張を悉く退けており、「再稼働ありき」の結論と言わざるを得ない。原発再稼働の中止を求める多数の国民世論を無視した決定に強く抗議する。

 安全審査の基本となる新規制基準は、福島第一原発事故の全容も解明されておらず、原発事故に対する根本的な安全策も確立されていない中で作成されたもので、「世界一厳しい安全基準」どころか極めて不十分な安全基準である。

 今回の決定が、新規制基準に適合したから安全という新たな「安全神話」を復活させる契機とならないか、強く危惧する。

 4月14日に福井地裁で出された高浜原発3、4号機の差し止め仮処分決定では、新規制基準について、「緩やかにすぎ、安全性は確保されない」「合理性を欠く」として、住民の人格権が否定される危険性を指摘、規制委員会の安全審査を否定した。大飯原発1、2号機の再稼働差し止めを命じた昨年の福井地裁判決では、250キロ圏内の住民に対し事実上の拒否権を認めている。

 川内原発の周辺には火山が集中し、専門家からは巨大噴火のリスクが最も高いと指摘されている。巨大噴火の予知は非常に困難で重大な事故につながる可能性がある。事故時の避難計画の作成についても、病院や介護施設などの要援護者の避難計画は10〜30キロ圏は見通しが立っていない。立地自治体である薩摩川内市以外の周辺自治体への説明も不十分で、「同意」にはほど遠い状況である。

 各種の世論調査では、原子力規制委員会が安全と認めた原発についても再稼働に反対が過半数を占めている。九州電力は川内原発1、2号機の再稼働を止め、政府は全原発の再稼働中止と原発からの撤退を決断すべきである。

以上