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【声明】公的年金個人情報の大量流出問題を真摯に受け止め、
マイナンバー制度の実施を中止すること

2015年6月4日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 6月1日、日本年金機構はサイバー攻撃を受け、125万件に上る大量の個人情報が流出したと発表した。流出した個人情報は、振り込め詐欺などに悪用されることが懸念されている。流出が発覚してから発表に至るまでの遅れや、対象者への連絡の不備、基礎年金番号変更の手順が未定であるなど、政府の危機管理体制の欠如が次々と露呈している。
 国民一人一人に唯一無二の番号を付けて、年金を含む社会保障・税・災害対策という、広範囲な分野を一元管理するマイナンバー制度については、以前から情報漏洩と悪用の危険性が繰り返し指摘されてきた。今回の問題はそれが防ぎきれないことをあらためて浮き彫りにした。
 個人情報は極力分散管理することが鉄則であるが、マイナンバー制度は桁違いの情報が集積されるため、リスクを集積するようなものである。
 公的機関である日本年金機構ですら不備のあった情報管理を、マイナンバーを取り扱う準備もできていないあまたの民間事業者に行わせることは非現実的であり、情報漏洩がおきた場合の影響ははかりしれない。

 現在審議中の法案は、現行法では保険給付の支給・保険料等の徴収に関する事務での使用に限定されているマイナンバーの利用範囲を、保険者が行う特定健診等の情報管理等に拡大するとしている。
 さらに、政府の産業競争力会議は2018年度から新たに医療番号を導入し、マイナンバーと紐付け、機微性の高い「患者の医療情報」にまで利用範囲を拡大することを打ち出した。
 そもそも、法施行前に利用範囲を拡大する法案を提出することは、「法律施行後3年を目途として施行の状況等を勘案」して検討を加え、「国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずる」と定めるマイナンバー法附則6条を大きく逸脱するものである。
 衆議院内閣委員会の参考人質疑では、法附則6条はリスク等について見極めた上で利用範囲の拡大を考えようとするものだが、施行前に利用範囲の拡大を決めようとすることは不当であるとの意見や、国民にきちんと周知しないまま番号が配られると漏洩や不正利用というリスクが必ず頻発するとの意見が出されている。
 内閣府が2015年1月に実施したマイナンバー制度に関する世論調査結果では、マイナンバーについて「内容まで知っていた」との回答は全体の28.3%にとどまっている。制度そのものを知らない国民が多いことは明らかである。

 公的年金の個人情報流出という重大問題を起こした以上、その深刻な影響を考えるならば、このまま制度を実施することはできないはずである。
 現在参議院で審議中のマイナンバー法改定法案は取り下げ、10月からの番号通知及び2016年1月からの利用開始を中止することを強く求めるものである 。

以上