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【談話】社会保障の充実こそ経済再生の道
―「骨太の方針」に抗議する

2015年7月3日
全国保険医団体連合会
副会長・政策部長 三浦清春

 

 安倍内閣は「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針)を閣議決定した。
 「骨太の方針」は、2020年度に「財政健全化」目標を達成するために、社会保障の削減を「歳出改革の重点分野」に位置づけた。
 2018年度までの「集中改革期間」で、社会保障関係費の伸びを、「高齢化による増加分に相当する」伸びである1兆5000億円程度に抑制することを目指す方針である。「経済・物価動向等」を踏まえた「目安」とし、削減額には幅を持たせているものの、実質的には社会保障にキャップをかぶせるものにほかならず、断じて容認できない。

 医療・介護分野の歳出削減方針の特徴は、▽患者負担増と保険給付の削減▽「地域差是正」を名目とした医療費抑制路線の推進▽個人の健康づくりの自助努力喚起のための保険者への支援▽社会保障関連分野の産業化―である。具体的な削減策は財政制度等審議会の「建議」の内容をほぼ取り込み、手当たり次第の医療・介護切り捨てと言わざるを得ない。

 貧困と格差が拡大している下でのさらなる負担増と給付の削減、医療費の抑制は、受診抑制と患者の重症化をさらに深刻化させる。外来時の定額負担や75歳以上高齢者の窓口負担2割への引き上げ、湿布薬などの保険外し、介護保険給付の見直しと地域支援事業への移行―などの検討はやめるべきである。
 また、療養病床の入院受療率の地域差是正を含めた医療費適正化計画などを通じて、都道府県別の1人当たり医療費の差を半減させることを目指す方針も盛り込まれた。地域の医療特性等を考慮せず、削減ありきの機械的な医療費抑制方針は、地域の医療難民、介護難民をますます増やすことになる。
 患者負担増や給付削減、医療費抑制路線と合わせて、個人の健康づくりの自助努力と、その喚起のための保険者への支援が強調され、社会保障分野の産業化が方針とされたことにわれわれは強い懸念を抱くものである。
 こうした方針の背後にある「自助を基本にした国民皆保険」、「経済成長と両立する社会保障制度」といった、「基本的考え方」そのものに問題があることも指摘しておきたい。

 「骨太の方針」は「経済再生と財政健全化の二兎を得る」道を目指すとしている。
 しかし、今回の「骨太の方針」に沿って2020年度に向けて社会保障の給付削減と負担増を続けることに加え、2017年4月から消費税率を10%に引き上げれば、GDPの約6割を占める個人消費はさらに落ち込み、経済成長は望み得ない。
 方針が削減の目玉としている社会保障は、国民に健康と安心を提供するだけでなく、個人消費を押し上げる効果もある。とりわけ医療・介護サービスは、経済波及効果、雇用誘発係数が全産業の平均より高く、国内経済とりわけ地域経済への影響が大きい。消費税率の引き上げは止め、社会保障を充実させることこそが「二兎を得る道」である。われわれは、社会保障を徹底的に抑制する「骨太の方針」の閣議決定に抗議するとともに、その具体化を許さない取り組みを強めることを表明する。

以上