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戦後70年 日本の医師・歯科医師として 反戦・平和への決意

 

 戦後70年にあたり、過去の過ちに学び、歴史の惨劇を繰り返さない決意を改めてここに表明する。
 戦争は、その理由の如何に関わらず、人命を奪うことを強制し、またそれを正当化しようとする。
 70年前に終結を迎えた戦争では、日本の医師・歯科医師は、軍医として徴兵され、戦死し、また生き延びたとしても、前線で多くの将兵とともに戦傷と飢餓と疫病の地獄に苦しんだ。また戦時下の医療では救われたはずの兵士は、再び戦場で殺し殺され続けることになった。人の命を救うべき医師・歯科医師がこうして殺戮とそのための再生産に加担させられる一方、戦時下で非人道的な医療が正当化され、731部隊や生体解剖事件など、許しがたい犯罪行為に加担するものをも生み出した。
 私たちは、非人道的医療、医学研究が行われた事実を直視し、こうした医学犯罪の温床となった人権軽視などその本質を見極め、人権を軸に据えた医学研究、医学教育の実践に努めなければならないのはもとより、それらを引き起こした戦争とそれを許した社会への絶えることのない検証と反省が必要であることを肝に銘じる。
 戦後日本の医師・歯科医師は憲法の平和原則の精神の下で、国民皆保険を創設し守り育て、国民医療を充実させ、国民の命と生活を守る国づくりを行ってきた。そうした状況を患者・国民とともに作り出してきたことに誇りを持つとともに、国民のいのちを軽視する動きに危機感を持ってきた。
 そして私たちは、1989年、医療を担う医師・歯科医師の宣言として「平和への希求」をかかげ、『人命を守る医師・歯科医師はいかなる戦争をも容認できない。私たちは歴史の教訓に学び、憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対し、核戦争の防止と核兵器廃絶が現代に生きる医師・歯科医師の社会的責任と考える。』ことを誓った。
 いま戦後70年に当たり、「戦後」を「戦前」に戻すかのような動きが台頭し、再び戦争の脅威を迎えようとしている。安倍首相は、アジアに於ける近隣国との間に生まれる様々な緊張を冷静に分析し、平和裡に取り除こうとしないばかりか、もっぱら威圧的な外交、ひいては軍事力の行使を辞さない外交を目指す構えである。さらには米軍が世界で展開する軍事行動に協力するため、明らかに憲法に違反する集団的自衛権行使を目指す安保関連法の制定を行おうとしている。
 戦争の悲惨さを風化させ、若者を再び戦場へ駆り出し、多くの命を奪う戦争への道を再び歩むことを許してはならない。国会や全国各地で若者や老人や全ての年齢、階層のものたちがつながり、民主主義を守れ、戦争するな、安倍政治を許さないとの訴えは、安保関連法案が衆議院で強行採決された後も広がり続けている。私たちもその一翼を担い、全国各地で行動を起こし、廃案にするまでたたかい続ける覚悟である。戦後70年の夏、憲法と平和を破壊する動きに反対し、戦後を戦前とさせないため、人々の命を守るべき医師・歯科医師として戦争に反対し平和を守るために行動することを決意する。

2015年8月2日
全国保険医団体連合会理事会