【声明】マイナンバー法改定に抗議し、
拙速な制度実施は中止することを求める
2015年9月9日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
9月3日、マイナンバーの利用範囲を拡大する法案が衆議院本会議で可決、成立した。
改定法は、現行法で「社会保障」「税金」「災害対策」の3分野の事務での使用に限定されているマイナンバーの利用範囲を、保険者が行う特定健診情報や個人の預貯金情報の管理に拡大する内容である。
マイナンバー法自体が未だ施行されていない中で、6月の年金情報流出の検証や再発防止策も不十分なまま改定法を成立させたことに、われわれは抗議する。
そもそも、法施行前に利用範囲を拡大する法案を提出、可決することは、「法律施行後3年を目途として施行の状況等を勘案」して検討を加え、「国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずる」と定めるマイナンバー法附則6条を大きく逸脱するものである。
国民一人一人に唯一無二の番号を付し、社会保障・税・災害対策という広範囲な分野を一元管理するマイナンバー制度については、情報漏えいと悪用の危険性が繰り返し指摘されてきた。
6月に起きた日本年金機構からの125万件に上る大量年金情報流出では、発覚してから発表に至るまでの対応の遅れや、対象者への連絡の不備、基礎年金番号変更の手順が未定であるなど、政府の危機管理体制の欠如が次々と露呈した。
改定法では、日本年金機構の個人番号利用と情報連携の実施を延期することとしたが、公的機関ですら不備のあった情報管理を、民間事業者に行わせることは非現実的であり、情報漏えいが起きた場合の影響は計り知れない。
さらに政府はこの先、マイナンバー制度のインフラを活用し、医療等分野における番号制度を新たに導入することを打ち出している。機微性の高い個人の医療情報がマイナンバーと紐付けられて管理・集積され、「効率化」の名による医療費抑制や企業・民間事業者に利活用されてはならない。
内閣府が9月3日に発表した世論調査では、マイナンバー制度の内容を知らなかったとの回答が56.6%と過半数に及んでおり、いまだに制度に対する国民の認知度は低い。また、プライバシー侵害のおそれがあるとの回答は34.5%、個人情報の不正利用による被害が心配との回答は38.0%となっており、国民の不安も払拭されていない。
こうした状況を踏まえるならば、国民へのていねいな説明と周知、運用上の改善に時間をかけるべきであり、拙速に制度運用を始めるべきではない。
われわれは、マイナンバー法の利用範囲の拡大をしないことはもちろんのこと、そもそも10月からの番号通知、2016年1月からの利用開始を中止することを強く求める。
以上