【声明】アベノミクスの破綻を隠し、国民を愚弄する「新三本の矢」
骨太方針の具体化をやめることこそが求められる
2015年10月4日
全国保険医団体連合会
2014〜2015年度 第22回理事会
安倍晋三首相は9月24日の記者会見で、「アベノミクスは第2ステージへと移る」、「新三本の矢を放つ」と表明した。しかし、「新三本の矢」はその実現性、実効性が甚だ疑問であるばかりか、安保関連法強行で落ち込んだ支持率を回復させ、支持をつなぎとめることを狙ったもので、国民を愚弄するものと言わざるを得ない。
第一の矢である「強い経済」は、2020年度までにGDP600兆円を達成するとしているが、そのためにはバブル経済期並の年率3%以上の成長率が必要である。また、第二の矢「子育て支援」は、既に着手済みの政策を掲げるに過ぎない。
第三の矢は「安心につながる社会保障」として「介護離職ゼロ」、特養増設による待機者の解消を打ち上げた。しかし、「川上から川下へ」と患者・利用者を地域に追い出す在宅偏重の政策との整合性が取れておらず、また施設を増設しても介護の人手不足解消の手立ては示されていない。そもそも安倍政権はこの間、「自助努力」の名のもと負担増と給付減を強いる社会保障制度大改悪を立て続けに実行してきた。さらに「骨太方針2015」でも医療・介護保障制度の大幅な抑制策を掲げており、「安心」は空しく響くのみである。
アベノミクスとこれまでの「三本の矢」は、企業の利益の拡大を図ることが、国内消費の向上、デフレ脱却につながるという触れ込みであったが、消費税増税や円安による輸入品値上がりで実質賃金は低迷し、雇用者数の増加もほとんどが非正規労働者である。格差と貧困の拡大はいっそう深刻さを増している。
8月の消費者物価は2年4カ月ぶりにマイナスに転じ、2%の物価上昇を目指した「異次元緩和は振り出しに戻った」と報じられた。安倍政権下で行われた10回の景気動向調査を見ても異次元緩和や財政投入などの景気刺激策の影響を除けば、この間の経済の停滞は顕著となっている。今年4〜6月期の実質GDPは前期比1.2%減(年率換算)となり、金融緩和、財政出動、成長戦略の「三本の矢」で狙った「デフレ脱却」「経済の好循環」は失敗が明らかである。
アベノミクスの破綻とこれまでの「三本の矢」の失敗を取り繕うために、安倍政権は実効性も実現性も不確かな新たな「矢」を放とうというのである。
今、政治に求められるのは、「人気取り」のための場当たり的な政策ではない。一人ひとりが活躍できる社会を本当に実現するには、消費税増税を中止し、大企業の利益を労働者や中小企業に還元することこそが必要である。そのために「骨太方針2015」の具体化を止め、社会保障費を拡充する政策に抜本的に転換するべきである。
私たちは、憲法に基づく社会保障を充実させ、名実ともに国民皆保険が実施されるよう取り組みを引き続き強めていくものである。
以上