【談話】化血研による血液製剤の不正製造問題について
2015年12月8日
全国保険医団体連合会
研究部長 斉藤みち子
化学及血清療法研究所(化血研)の血液製剤の不正製造を巡り、12月3日、第三者委員会が不正の経緯、動機、その他の事実関係などの調査報告書を公表した。調査報告書によると、早いものは、1974年当時からおもに1990年代前半から不整合が存在したとされている。
とりわけ薬害エイズ事件の発生と非加熱製剤から加熱製剤に切り替わり生産増強が迫られる中、トップの指示の下、安定供給最優先で開発製造してきたとされる。その際、検査回避のための虚偽の製造記録を組織的に作成し、隠蔽工作が図られてきた。品質管理部門の管理職が、これらの隠蔽事実を知りながら故意に知らせなかったが、第三者委員会はこれらに関して、「化血研の閉鎖性、独善性が不整合の隠蔽を生じさせた最大の原因」とし、加熱製剤の増産のため薬事法等の法令遵守が欠如していたことを認定した。
化血研の宮本誠二理事長らは記者会見を行い、自身を含め品質管理の役員らが不正を長年承知しており、前任からの社内慣習を変更することなく続けてきたことに言及。自身も含め関係役員の辞任と人事刷新を発表した。
化血研は、薬害エイズの被告企業として、薬害被害原告との確認書で「安全な医薬品の供給義務を自覚し再発防止に向けた努力する」と誓約したが、今回の調査で非加熱製剤を製造した部門でも当時から不正が行われてきたことがわかった。薬害被害者に対する誓約はうわべだけであり、化血研の姿勢の根本には患者を軽視し、企業利益を優先させるものである。
実際の現場では、待ちわびたワクチン出荷を期待する一方、不安心理の中、ワクチン接種をためらう患者も多く見られる。
企業利益優先による隠蔽や虚偽の記録作成など一連の行為は、単に化血研の医薬品製造に関する信頼を失墜させるだけでなく、ワクチン行政全般に不信感を抱かせ、ひいては患者さんの不利益を生じさせることになる。
厚労省は業務改善命令を行うとしているが、これまでの検査、監督のあり方に根本的な疑問符が着いた今こそ、薬事行政や医薬品に対する信頼を喪失する行為に対して毅然とした態度で臨む必要がある。
また(報告書は)、血液製剤の安全性に関し、同一性、安定性、安全性のデータが得られないものの、国家検定を経て販売されており致命的な副作用症例が報告されておらず「問題なし」としている。厚労省は、安全性を担保する根拠を公表し、医療担当者、患者・国民の疑念に丁寧に答えるべきである。その上で、長年に渡る不正が見抜けなかった検査、監督のあり方について、正面から向き合い、より効果的で有用な体制のため改善していくことを要望する。
以上