【談話】2016年度診療報酬のマイナス改定合意に抗議する
2015年12月24日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
塩崎恭久厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣は、12月21日、2016年度の診療報酬改定率について、本体は0.49%引き上げる一方、薬価等を1.33%(薬価1.22%、材料価格0.11%)引き下げることに合意した。「別枠」での対応として、薬価の市場拡大再算定(通常)による見直しで0.19%、薬価の特例再算定(巨額再算定)の実施で0.28%引き下げるとともに、後発品、調剤、入院食など6項目での引き下げ等が講じられる。
これまで、薬価の通常再算定による減額分(今回0.19%)は薬価改定率に含められてきたことから、いわゆるネットの改定率はマイナス1.03%となる。別枠での対応を全て含めれば、14年度改定の1.26%削減(消費税対応除く)を上回るマイナス幅となる。医療現場を一層疲弊させる今次改定は、到底認められない。
報道からも明らかなように、今回のマイナス改定は、「骨太の方針2015」が掲げる社会保障費の自然増を当面3年で1.5兆円に圧縮する方針の達成に向けて、初年度の削減目標となる1,700億円の捻出財源として、2016年度診療報酬を狙い撃ちしたものである。まずもって考慮されるべき医療の質・水準とは関係なく、削減目標達成の帳尻合わせに診療報酬が利用されたことに強い憤りを覚えるものである。
しかも、「骨太の方針2015」は、小泉構造改革の年2,200億円の機械的削減よりも厳しい削減方針である。医療機関の経営が悪化し、消費税負担も解消されない中、医療崩壊が再び引き起こされようとしていることに強い危惧を抱かざるをえない。
財務省は、本体部分の「一定程度のマイナス改定」を求めたが、医療関係者の運動もあり、本体のマイナス改定は回避される結果となった。しかし、14年改定に続き、薬価引き下げ分の大半が本体部分に充当されない形になった。医療機関等の交渉努力などで引き下げられた薬価財源は、本体部分に完全に充当されるべきものであり、本体財源への充当の慣行の遵守を強く求めるものである。
人件費・技術料等を含む本体部分は0.49%増とされたが、2010及び12年度の本体改定率と比べ約0.9〜1.1%弱も低く、医療従事者の雇用・労働環境の抜本的改善には程遠いものである。雇用誘発・経済波及効果の高い医療・福祉への大幅な財源投入は、地方経済の活性化を進め国策である「地方創生」にも資するものである。
政府は、患者窓口負担増等を理由にマイナス改定を求めるが、その一方で、患者・利用者負担をはじめとした全般的な負担増計画を検討し進めている。「別枠」の対応にも、湿布薬の枚数制限など給付抑制が含まれている。本体部分の引上げをめぐっても、高額療養費制度の改悪で手当を図るとの報道も聞かれる。診療報酬は削減し、患者負担も増大するのが政府の基本姿勢といわざるをえない。
地域医療の再建、経済の活性化を求めて、全国保険医団体連合会は、診療報酬マイナス改定の合意に抗議し、大幅なプラス改定と患者窓口負担の軽減を強く求めるものである。
以上