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【声明】報道を萎縮させ、民主主義に重大な影響を及ぼす
高市総務大臣の発言に厳重に抗議する

2016年2月17日
全国保険医団体連合会

 

 高市早苗総務大臣は2月8、9日の国会での答弁で、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合に、電波停止を命じる可能性に言及した。
 報道番組に対する安倍政権の介入が取り沙汰される中、放送事業を所管する大臣が、放送内容が政治的に公平かどうかを判断し、処分する可能性を公言したことは、政権にとって好ましくない報道をさらに萎縮させ、ひいてはわが国の民主主義に重大な影響を及ぼすものとして看過できない。
 医療、社会保障の拡充を、医療者の立場から、報道機関等を含む幅広い国民に訴え、ともに取り組みを進める当会は、今回の発言に厳重に抗議するとともに、発言の撤回を求めるものである。
 併せて報道機関、マスメディア各社には、政権の露骨な介入や攻撃に臆せず、毅然として権力の監視役、社会の公器としての任を果たされることを望みたい。

 高市大臣は電波停止の根拠として、放送事業者が放送番組の編集に当たって「政治的に公平であること」「できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を規定している放送法4条を挙げた。
 しかし、そもそも放送法は、放送事業者に不偏不党を保障し、表現の自由を確保することを目的に掲げている。特定の政治的勢力の不当な介入を排除する趣旨であり、それを保障するため同法3条は「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」としている。4条各号は放送事業者が自律的に実現すべき性格の倫理規定であり、所管大臣が同条各号の違反を理由に処分する法律上の根拠はない。

 より重要な問題は、高市大臣の発言は、憲法の基本的人権や民主主義を脅かすものであり、安倍首相や菅官房長官も大臣の発言を追認していることである。
 報道の自由、知る権利を含む表現の自由は、国民の意思決定、それに基づく民主主義の政治過程にとって不可欠な権利である一方、権力の規制により萎縮しやすい。それゆえにこれらの権利、自由が人権の中でも特に優越的地位を占めることは憲法学上の常識である。憲法9条2項の改憲の政権の狙いと併せて、今回の高市大臣らの言動は、現政権の憲法、基本的人権や民主主義に対する鈍感さを如実に示している。

 私たちは、「憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対する」ことを医師・歯科医師の社会的責任と自覚する観点からも、今回の高市大臣の発言に厳重に抗議し、発言の撤回を強く求める。

以上