【総選挙】医療守る選択を―「全世代型」はまやかし
(全国保険医新聞2017年10月5日号より)
全国保険医団体連合会会長 住江憲勇
衆議院が9月28日に解散された。総選挙は10月22日投開票となる。安倍首相・自民党は「全世代型社会保障」や「憲法改正」などを争点にするとしている。全国保険医団体連合会の住江憲法会長は、「大義なき解散とはいえ、総選挙は保険医の要求を実現するチャンス」と話す。解散・総選挙をどう見るか、医師・歯科医師にとっての争点は何かを聞いた。
増税迫る安倍首相
今回の解散は、野党が憲法に基づいて要求した国会開会要求を無視し続けた挙句、ようやく開会した臨時国会の審議も拒否して冒頭で行われました。安倍首相が「森友・加計」疑惑の追及から逃れるための党利党略によるもので、国民を愚弄する大義なき解散です。
この批判をかわすためか、安倍首相は取ってつけたように、「全世代型社会保障」を打ち出しました。2年後に10%の消費税増税を予定通り行い、使途を乳幼児教育や高等教育無償化などに広げるというものです。教育や子育てと引き換えに増税を迫っているのです。
1989年の消費税導入以来、法人税と、所得税の最高税率は引き下げが続き、この減収分が、消費税で補われてきました。選挙では、消費税増税を前提とする「使い道」ではなく、こうした税収構造の是非こそが問われるべきです。
2012年に発足した安倍政権の下では、社会保障費の抑制、患者負担増が押し進められてきました。16年度から18年度の3年間で社会保障費の自然増分を年間5,000億円に抑えることを目標とし、14年、16年に続き18年も診療報酬の実質マイナス改定を進めようとしています。
解散を表明した記者会見でも安倍首相は、社会保障費の自然増分抑制は続けると明言しました。若者から高齢者までが影響を受ける患者負担増計画は、今も進行中です。
こうした社会保障削減路線を転換しない安倍首相の言う「全世代型社会保障」は、まやかしにすぎません。消費税増税がされた上、さらなる全世代への負担増が進んでいくばかりです。
「生活守れるか」争点
国民生活すなわち医療機関を訪れる患者の生活を守れるのか、これこそが私たち医師・歯科医師にとっての選挙の争点です。今、企業が内部留保を溜め込む一方で、格差と貧困が広がっています。保団連の調査では、4割の医療機関が経済的理由による治療中断を経験していました。最善の医療の提供という医師・歯科医師として果たすべき役割が果たせない実態があります。社会保障の財源のあり方を改め、患者負担を軽減し、医療の質を担保する診療報酬の引き上げが必要です。
保団連では、診療報酬の引き上げと患者負担の軽減を求める医師・歯科医師要請署名、「保険で良い歯科」署名、待合室から皆保険を守る世論を広げるための「クイズで考える私たちの医療」に取り組みます。
要求実現の機会に
今回の選挙で与党が勝てば、安倍首相は9条改憲に踏み出すことでしょう。保団連は、平和を守るため、改憲を阻止する取り組みを強めます。
大義なき解散とはいえ、総選挙は保険医の要求を実現する大きなチャンスです。社会保障と平和を守る選択を訴えていきたいと思います。
以上