※全国保険医団体連合会は、下記の要請書をマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:270KB])。 【談話】医療経済実態調査について
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厚生労働省は、11月8日の中医協総会で「第21回医療経済実態調査(2017年実施)」を報告した。2017年3月末までに終了する直近の2事業年(度)の数値が示されている(以下、特に断りがない場合、2015年度から2016年度比)。
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有効回答率は一般診療所56.2%と、前回2015年調査より3.3ポイント増えて、有効回答施設数は1,744と前回1,637を上回ったものの、前々回の1,715の水準を若干超えた形である。歯科診療所も57.2%と前回調査比で5.4ポイント増えて、有効回答施設数も654と前回585を上回ったものの、前々回の645の水準に概ね戻った形である。
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医療経済実態調査は、@定点調査は2年単位でしか比較できない、A集計区分によっては回答施設数が一桁の診療科がある、B事業年度の対象期間が施設によって異なるため診療報酬改定年度通年の影響日を反映できない、C医療機関の実態をより反映した「最頻損益差額階級」の施設数も必ずしも十分な数とはいえない―など多くの課題がある。本調査だけを診療報酬改定の基礎資料とすることは不十分である。
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以上を踏まえた上で、第21回医療経済実態調査について本会の見解を述べる(以下、病院は医療・介護収益に占める介護収益の割合が2%未満のもの(特定機能病院等は含まない)。一般診療所、歯科診療所については、調査に回答した青色申告者(省略形式)を含む)。
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一般病院(全体)では、1施設当たりの損益率(損益差額を医業・介護収益で割ったもの)は▲3.7%→▲4.2%となり「過去3番目に大きな赤字幅」(厚労省)となった。同様に、精神科病院(全体)は0.2%から▲1.1%に赤字転落した。
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財務省は、実態調査結果は「損益率が高い医療法人の施設数の割合が実際より小さ」いなどとして補正結果を示し、一般病院(国公立除く)の損益は、前回改定時より「むしろ改善している」というが、補正した結果でも、2014年度からの改善は0.2ポイントに過ぎない。
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一般診療所では、損益率は、全体は14.0%→13.8%に低下した。有床診(全体)は8.7%→8.2%に低下し、無床診(全体)は14.9%→14.8%に微減している。
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歯科診療所では、損益率は、全体は21.0%→21.6%に、個人立では28.4%→28.9%、医療法人は4.8%→5.9%となっている(注:個人立では、損益差額に開設者の報酬、建物・設備について改善に要する費用を含む形になる。他も同じ)。ただし、損益差額では、全体は40.0万円増だが、歯科診療所の約8割を占める個人立は23.9万円増に過ぎず、最頻損益差額階級における個人立では逆に4.4万円減となっている。
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在宅療養支援診療所では全体が11.5%→10.6%に低下し、個人立では31.0%→31.0%で変わらず、医療法人では6.5%→5.2%に低下している。
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2000年〜08年度の4回連続の大幅マイナス改定、その後も抜本的なプラス改定がなされない中、医療現場の人員不足・過重労働などの矛盾は改善されていない。今回の結果は、地域医療を担う病院・診療所経営は改善されないどころかかえって悪化し、とりわけ病院は危機的な経営状況にあることを示している。
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一般診療所(個人・無床)では、伸び率は、医業収益+0.3%(外来診療収益+0.3%など)で、医業・介護費用▲0.4%となり、費用では医薬品費▲4.0%、給与費+2.0%などとなっている。
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一般診療所(医療法人・無床)では、伸び率は、医業収益+0.5%(外来診療収益+0.5%など)で、医業・介護費用+1.0%となり、費用では、医薬品費▲1.0%、給与費+1.8%などとなっている。
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一般診療所(個人・無床)の勤務医の給与等の伸び率は、▲1.7%と低下する一方、看護職員は+1.8%、看護補助職員は+4.9%、医療技術員(※)は+4.0%など上昇している(※放射線技師、臨床検査技師、栄養士、PT・OTなど。以下同じ)。
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一般診療所(医療法人・無床)の院長の給与等の伸び率は、±0.0%と据え置かれ、勤務医は▲2.4%と低下する一方、看護職員は+1.2%、看護補助職員は±0.0%、医療技術員は+0.8%など上昇している。
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診療所(無床)では、医業収益が伸び悩む中、給与費は上昇している。損益差額階級の最頻値では、医療収益が低下する中、給与費は維持・上昇している。それらの特徴は、医師の給与は据え置き・引き下げる一方、他の医療に直接携わる従事者の給与については引き上げる形となっている。
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ただし、賃金水準(2016年度)を見ると、診療所(無床)においては、看護職員は年375.9万円、看護補助職員は同217.8万円、医療技術員は同428.0万円に留まっている。
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診療所が担う地域医療の最前線において、外来医療では、高齢化が進み複合的な疾患様態や様々な生活背景を抱える患者が増えていくとともに、在宅医療では、取組み医療機関を増やし、その裾野を大幅に広げていくことが求められている。医療従事者の確保・充実、地域に密着した診療所全体の経営の改善・底上げに向けて、診療報酬の抜本的引き上げ・改善こそが必要である。
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歯科診療所(全体)の損益状況は、前年度が医業収益4789.9万円、介護収益12.8万円、医業・介護費用は3766万円で、損益差額は1036.6万円となり、伸び率は、医業収益+1.3%、介護収益+0.8%、医療・介護費用+0.5%とそれぞれプラスとなった。
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最頻損益差額階級の損益状況をみると、個人立の損益差額は623.3万円であった。個人立の平均値の損益差額との差は▲511.3万円と大きな開きとなっている。伸び率は、医業収益▲3.1%、医業・介護費用▲3.7%ともマイナスであり、費用では給与費▲6.1%、歯科材料費▲4.4%、委託費▲3.3%など軒並みマイナスとなっており、ここでも人件費はじめ諸経費の削減で、厳しい経営を乗り切ろうとしていることが見える。
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2006年の診療報酬改定での大きなマイナス改定以降、歯科診療報酬本体に係る改定率は、改定幅は減少してきているが、プラス改定となっている。2014年改定では、消費税増税の補填として基本診療料及び歯科訪問診療料が引き上げられ、それらが0.99%のうち0.87%を占める。にもかかわらず、歯科医療機関の経営改善には程遠い診療報酬改定の結果であり、それは、回答施設数は少ないものの医療経済実態調査にも示されている。
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長時間労働の改善はじめ歯科医療の現状を打開し、安心、安全、良質な歯科医療を確保するためには、歯科医療費を総枠拡大し、次回診療報酬改定での技術料を中心とした大幅な引き上げとともに、患者の窓口負担の軽減を早急に実現することが強く求められる。
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以上