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※全国保険医団体連合会は、下記の要請書を厚生労働大臣、保険局医療課長ほか、マスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:178KB])。

【要請書】医療用保湿剤の保険給付外しは止め、
治療が必要な患者に対する処方が
制限されることの無いようにして下さい


2017年12月1日
全国保険医団体連合会
医科社保・審査対策部長
武田 浩一

 

 健康保険組合連合会(以下、健保連)は9月14日、レセプト分析に基づく調査分析として「保湿剤処方のあり方」と題する政策提言を発表しました。数年前から美容目的でのヘパリン類似物質の単剤処方が増加している可能性があるとした上で、▽皮膚乾燥症に対する保湿剤(ヘパリン類似物質又は白色ワセリン)は、他の外皮用薬もしくは抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合は保険適用から除外すべき▽中長期的には処方そのものを保険適用外とすることも検討すべき―と主張しています。

 これを受けて、本年11月1日の中央社会保険医療協議会(以下、中医協)でも「小児のアトピー治療用として処方してもらっておきながら、美容目的で使用されている実態があることが新聞等において指摘されている」として、医療用保湿剤の適正使用に関する議論が行われています。

 しかし、医療用保湿剤の単剤処方や一度の大量処方が本当に“美容目的”で行われていると断定できる客観的な根拠は、現時点では提示されておりません。同日の中医協総会において松本吉郎委員(日本医師会常任理事)が「学会やメーカーから適正使用に関する注意喚起がされており、暫くは様子を見るべきだ」と指摘したように、まずは今後の処方量の推移等を見守るべきです。

 また、患者団体も主張しているように、保湿剤治療が必要な皮膚科疾患を有する患者に対する処方は、たとえ単剤であっても制限されるべきではありません。悪性腫瘍に対する抗がん剤治療や放射線治療の副作用を軽減する等の目的だけでなく、軽症であっても保湿剤治療の継続によって皮膚の乾燥症状の悪化を防ぐことは患者のQOLを維持・向上させる上で重要です。特定の疾病に該当しなければ処方を制限するような要件設定も行うべきではありません。

 加えて、患者によっては定期的な受診及び必要な検査や薬剤等の費用のみならず、例えば洗髪剤や石鹸、衣服や寝具等の日用品についても身体に合う高額な物を選択せざるを得ず、治療に係る経済的な負担感は相当なものです。「国民の約1割がアトピー性皮膚炎に罹患している」という報告もある通り、医療費削減を目的とした医療用保湿剤の安易な給付制限は多くの患者・国民に影響を及ぼす恐れがあります。

 以上のことから保団連は、医学的エビデンスや患者負担に関する十分な議論無く、医療用保湿剤を保険適用外とすることには反対します。

以上