※全国保険医団体連合会は、下記の要請書を厚生労働大臣、保険局医療課長ほか、マスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:177KB])。
【要請書】健保連提言に基づく
特定疾患療養管理料の算定要件の改悪に反対します
2017年12月1日
全国保険医団体連合会
医科社保・審査対策部長
武田 浩一
健康保険組合連合会(以下、健保連)は10月30日、レセプト分析に基づく調査分析として「生活習慣病患者に対する指導管理料のあり方」と題する政策提言を発表しました。当該調査では、124健保組合の2年間のレセプトデータから高血圧症又は脂質異常症の患者に限定して分析を行い、「特定疾患療養管理料の算定月数及び回数は施設類型で異なり、病院(100〜199床で12回/2年、100床未満で14回/2年)よりも診療所(22回/2年)の方が多い」との結果を示しています。そして、主に諸外国の高血圧症・脂質異常症に関する診療ガイドラインに示された経過観察の頻度(概ね数カ月に1回の間隔で診察や検査の実施を推奨)を引用した上で、「これら2疾患について特定疾患療養管理料を2月に1回の算定とした場合、日本全体での医療費の削減額は年間2,000億円程度」と推計し、現行の「1月に2回に限り」という算定要件を「2月に1回」まで制限すべきと主張しています。
一方、日医総研は、2010年12月に公表した「長期処方についてのアンケート調査報告(No.225)」の中で▽約2割の医師が、5週以上の比較的長期の処方を原因として、患者の容態の変化に気づくのが遅れた経験がある▽高齢患者は、長期処方中に容態の変化を感じても次回受診時まで我慢してしまう―等の結果を示し、長期処方が患者の病態の悪化を招く危険性があると指摘しています。また、2016年診療報酬改定では「薬物療法の安全性・有効性の向上等の観点から、病状の安定及び服薬管理が可能な点を医師が確認しない限り、原則30日以内に再診を行う」等として、30日超の投薬に一定の制限が設けられました。今回の健保連提言は、中央社会保険医療協議会の審議を経て決定された、投薬に係る現在の医学的到達点とも矛盾する内容です。
診療に当たって国内の各学会が定めるガイドラインは当然参考にすべきです。しかし、病態の異なる個別の患者に対して適切な慢性疾患管理を行うためには、医師が患者毎に必要と認める期間での診察及び投薬が担保されるべきであり、その点について、各学会のガイドラインは臨床現場の医師の裁量を制限してはいません。
以上のことから、診療報酬で定める各指導管理料の算定回数については患者・国民が置かれている受診抑制の現状や、個別の病態に応じた診療の必要性も十分に調査・検証した上で議論すべきであり、保団連は、特定疾患療養管理料の算定要件の改悪には反対します。
以上