※全国保険医団体連合会は、2017年12月11日に発表された平成30年度診療報酬改定の基本方針に対し下記の声明を発表し、厚生労働大臣ほか、マスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:167KB])。
【声明】国民皆保険制度の確保のために大幅なプラス改定を
―「平成30年度診療報酬改定の基本方針」について―
2017年12月15日
全国保険医団体連合会
社保・審査対策部
医科部長 武田 浩一
歯科部長 新井 良一
厚生労働省の社会保障審議会は12月11日、「平成30年度診療報酬改定の基本方針」を発表した。
医療従事者の負担軽減や、働き方改革の推進、生活習慣病の重症化予防の取り組みなど、重要な課題として掲げ、個別の課題でも、複数医療機関からの訪問診療料の算定を可能とすることなど、一部地域医療の実態に見合った改善提案をしている。
しかし、「第21回医療経済実態調査」では、16年度の一般病院の損益率はマイナス4.2%で、厚労省も「過去3番目の悪い数値」と報告している。中医協の診療側委員も「病院経営がいかに悪化したかわかる」と述べている。一般診療所及び歯科診療所(個人を含む)の損益率も、調査のたびに悪化している。特に16年度の損益差額をみると、前回14年度と比較して、医科診療所(無床)では▲651.1万円(▲33.3%)、歯科診療所でも▲218.6万円(▲18.9%)の悪化となっている(当会の声明はこちら)。
基本方針を実現するためには、診療報酬の大幅引き上げが必要であり、基本方針ではそのことを明確に掲げるべきである。
保団連は、医療機関が患者さんに提供する医療水準を担保できるように、初・再診料をはじめ医療従事者の技術を正当に評価し、診療所や病院それぞれの医療施設の基盤強化のためにも、薬価引き下げ等で生まれる財源を全額充当し、10%以上の引き上げを改めて求めるものである。
また、2018年診療報酬改定の個別課題について、以下の点の見直しを求める。
入院医療では、「評価方法の抜本的な変更」が提案され、新たな機能分化が進められようとしているが、数度にわたる急激な改革は、医療現場に混乱と疲弊を持ち込み、看護労働や患者の安全に重大な影響を及ぼしかねない。また、地域における入院病床の確保への影響が危惧される。今次改定で「評価方法の抜本的な変更」を拙速に行うべきではない。また、療養病棟入院基本料2は、当面2年間の経過措置とされているが、地域医療に果たす役割を再評価し、廃止そのものを見直すべきである。
外来医療では、多職種連携、業務の共同化・移管や算定要件一部緩和等で「地域包括診療加算」や「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」など「かかりつけ」関連点数の算定を広げ、地域における患者の受入機能の強化をはかりたい考えである。しかしこれは「ゲートオープナー」機能を広げフリーアクセスの一層の制限につながりかねない。地域医療改善のためには、初・再診料など基礎的技術の報酬の底上げこそ求められている。
在宅医療については、一般診療所の在宅への参入を促し、複数の医療機関で患者を支え合う方向に誘導する。一方で介護医療院に対する医療の評価も含めた施設医療については適正化を行う方向である。総じて安上がりに患者を管理することが狙われているが、地域における在宅患者の療養を支えていける十分な報酬設定をするべきである。
また、アウトカム評価を推進するとして、回復期リハビリ病棟に加え、ICUなどにも成果による判断を導入、強化する議論が進められているが、医療の不確実性を否定するものである。本来医療とは患者の病態の個別性に対応し、その時点でなし得る最善の治療をするというものであり、アウトカム評価はなじまない。
大病院受診時定額負担の拡大を図り、さらに患者の受診を抑制し誘導をはかろうとしているが、必要な医療まで制限しないか危惧するものである。
将来の課題として、予防・健康づくりやセルフケア推進等を掲げている。しかし医師の管理が必要な慢性疾患へのスイッチOTC拡大や、医療費削減を前提とした湿布薬、保湿剤等の保険給付外しなど、ますます医療から患者を遠ざけ、自助努力の強調により、かえって重症化する患者を生み出しかねず、絶対に認められない。
保団連は、以上の点を踏まえた再考を求めるものである。
以上