ホームニュースリリース・保団連の活動私たちの提言・意見

※全国保険医団体連合会は、1月26日に了承された2018年度介護報酬改定諮問案について、下記の談話をマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:268KB])。

【談話】介護崩壊を食い止めるため、
国庫負担を拡充し、介護報酬の大幅引き上げ・改善を


2018年1月26日
全国保険医団体連合会
地域医療対策部
医科部長 中島 幸裕
歯科部長 賀来 進 

 

1.介護崩壊を食い止めるため、介護報酬の大幅引き上げを改めて求める

 1月26日に開催された社会保障審議会「第158回介護給付費分科会」は、2018年度介護報酬改定案を諮問通り了承した。
 改定内容は、昨年12月18日に加藤厚生労働大臣と麻生財務大臣が合意した「0.54%引き上げ」を前提としたものだが、この引き上げ幅では、介護職員の処遇改善や求められる介護サービスの向上には不十分である。
 介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するものである。医学・医療の新たな知見や介護技術の進歩を介護報酬にしっかりと反映させ、介護担当者の労働条件を改善するためには、介護報酬全体の更なる引き上げが必要である。
 国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することである。介護崩壊を食い止めるためにも、国庫負担を拡大して介護報酬の大幅引き上げを行うよう、改めて求めるものである。

 

2.居宅療養管理指導における単一建物居住者数による単位数減額を廃止すること

 「同一建物居住者」への報酬減額が廃止される一方で、同一月に訪問した「単一建物居住者数」によって、2段階で報酬が減算される。しかし、「単一建物居住者数」は、その月が終了しないと判明せず、月末に窓口負担の返金や追加徴収が発生する可能性がある。
 そもそも、医師・歯科医師の居宅療養管理指導は、「居宅療養上の指導や他の事業所との連携」を評価するものであって、訪問診療にかかわる費用は、医療保険で評価している。
 したがって、「単一建物居住者」の人数によって報酬減額を行う理由はなく、「単一建物居住者数」に対する減額を廃止すべきである。

 

3.施設サービスや短期入所の評価を引き上げ、介護療養病床の廃止を撤回すべき

 介護医療院が新設される一方で、介護療養病床の経過措置は6年とされた。
 政府は、施設サービスの切り捨てを進めようとしているが、施設は介護を必要とする者と介護をする者が一箇所に集まることで、設備も人員も、そして介護のノウハウも蓄積するというメリットがある。居宅における療養環境を改善し、希望する者が居宅で必要な介護を受けられるようにすることは当然だが、施設の方が介護サービスの効率が良く、医療ニーズへの対応もしやすいという点を無視してはならない。
 施設サービスや短期入所の評価を引き上げ、介護療養病床の廃止を撤回し、必要な施設療養が受けられるようにすべきである。

 

4.医療系介護報酬は、区分支給限度額から外すべき

 訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、医学的な必要に応じて実施すべきであるが、区分支給限度基準額の範囲でしか介護保険給付を受けられない。
 これらのサービスや、区分支給限度基準額の対象外である居宅療養管理指導や介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院における介護を除く部分は医療そのものであり、医療保険の窓口負担率を大幅に引き下げて、医療保険給付に戻すべきである。
 少なくとも、区分支給限度に組み込まれた訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、区分支給限度の対象から除外すべきである。

 

5.65歳以上になっても障害福祉サービスを優先利用できるようにすべき

 共生型サービスが導入されるが、障害者が65歳になった場合に機械的に介護保険制度を優先させた場合は、区分支給限度基準額によって利用量が縛られ、利用者負担が課される。高齢化と共に身体機能が衰えることを考えれば、むしろサービスは厚くすべきであり、障害者がその能力を発揮できるよう、65歳以上になっても障害福祉サービスを優先利用できるようにすべきである。

 

6.訪問介護の回数が多いケアプランの届出義務化によるサービス抑制を止めること

 全国平均利用回数+2SDを超える訪問介護を位置づけたケアプランは2018年10月から届出が義務化される。ケアプランそのものは無効にならないが、届出義務化で訪問回数が抑制されかねない。区分支給限度額の枠内でのサービスの種類や提供回数は、利用者の状況を踏まえ、かつ利用者の同意を得て行うものであり、その内容を規制すべきではない。

 

7.告示・通知を速やかに発出し、改定実施まで、十分な周知期間を設けること

 2015年4月実施の介護報酬改定では、告示が3月中・下旬、通知が3月27日に発出されたため、介護現場に大混乱をもたらした。こうした事態を再発しないよう、告示・通知を速やかに発出し、十分な周知期間を設けるべきである。

 

8.2018年4月以降も紙媒体による介護報酬請求を新規に認めること

 「居宅療養管理指導」など、現在紙媒体での請求が認められている医療機関等は、3月末までに都道府県国保連合会に「免除届出書」を提出すれば4月以降も紙媒体で請求を行うことが可能だが、4月以降に新規開設する医療機関等は、紙媒体請求が認められない。  
 居宅療養管理指導は、介護保険制度の円滑な運営を行うために必要不可欠であるが、新規に紙媒体請求を認められなければ、介護報酬の請求をあきらめる医療機関が出てくることも予想される。新規開業や新たに居宅療養管理指導を実施する場合について、2018年4月以降も「紙媒体(書面)による介護報酬請求」を認めるべきである。

以上