※全国保険医団体連合会は、下記の声明をマスコミに送付しました(PDF版はこちら[PDF:222KB])。
【声明】生活扶助費引き下げ、医療扶助における
後発品使用原則化など、生活保護制度改悪に反対する
2018年2月21日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
2018年度政府予算案では、13年間引き下げ続けられた生活保護費の更なる引き下げが盛り込まれている。利用世帯の7割近くで生活扶助費が引き下げられ、最大で5%減額される。生活保護非対象世帯の所得が下がったことを根拠としているが、比較しているのは、所得が最も少ない10%の層にすぎない。
所得が最も少ない10%の層には、生活保護を利用する資格のある人が相当数含まれると指摘されているが、実際に生活保護を受給できている人の割合(捕捉率)は2割程度と極めて低い。まずは、捕捉率を引き上げることが必要である。
捕捉率が極めて低く、これら10%の層の実質所得も下がる中、現行の生活扶助の算定の方法では、際限なく生活扶助費が切り下げられていく悪循環とならざるをえない。改善に向けた手立てを喫緊に講じるべきである。
また、生活保護基準は、最低賃金をはじめ地方税非課税基準や国民健康保険の保険料・一部負担金の減免、介護保険の保険料・利用料の減額、就学援助の給付などの利用基準に連動しており、基準引き下げは、国民の生活水準を全般にわたって引き下げることにもつながる。
そもそも、政府は、個人の尊重(憲法13条)、「健康で文化的な最低限度の生活」を維持する生存権(憲法25条)などを実現する義務を負っている。政府は、ナショナルミニマム、更にはナショナル・オプティマムを展望しつつ、生活扶助の大幅な引き上げこそ行うべきである。
今通常国会には、生活保護法改定案も上程されている。医療扶助について、医師が「医学的知見に基づき」後発医薬品を使用できると判断した場合、「原則として、後発医薬品により給付を行うものとする」としている。現行法における「可能な限り…使用を促す」との努力義務規定よりも大幅に踏み込んで、先発医薬品の使用に制限を加え、より安価な後発医薬品の使用を原則化することを明文化するものである。
生活保護受給者のみに、差別・制限診療を持ち込むことは、経済力のあるなしにかかわらず、必要な医療を保障する国民皆保険の精神に反するものである。憲法に定める生存権(憲法25条)や法の下の平等(憲法14条)に抵触する恐れもある。
また、生活保護受給者に後発医薬品の使用を原則化することは、患者・国民の間に「後発医薬品は生活保護受給者が使う薬」という誤ったイメージも浸透しかねない。生活保護受給者における後発医薬品の使用原則化は撤回すべきである。
以上