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※全国保険医団体連合会では、平成30年8月診療分からの70歳以上の高額療養費自己負担上限額引き上げにともない、下記の要望書を総理大臣、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:201KB])。

高額療養費制度の改善を求める要望書


2018年9月9日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 前略 国民生活の向上に対する日頃のご努力に敬意を申し上げます。
 私ども、全国保険医団体連合会(会長:住江憲勇、略称:保団連、会員数10万7千人)は、全国の医師・歯科医師で構成する団体です。 

 この間、高額療養費制度において、高齢者(70歳以上)について、「現役世代との公平」や「負担能力に応じた負担」を求めるなどとして負担限度額が引き上げられました。
 外来枠(個人毎)について、一般(年収156万〜370万円)では、月12,000円が17年8月より同14,000円に、18年8月からは18,000円に引き上げられました(17年8月より、年14.4万円の上限を新設)。同様に、現役並み(年収370万円以上)では、17年8月より月44,400円から同57,600円に引き上げられた後、18年8月より外来枠(個人毎)が廃止されました。
 負担限度額(世帯)について、一般(同上)では、月44,400円が17年8月より57,600円に引き上げられ、現役並み(同上)では、月8万円超が18年8月より、年収に応じて3区分され、月25.2万円超、同16.7万円超、同8万円超と大幅に引き上げられました。

 後期高齢者のうち9割弱が外来で何らかの慢性疾患を治療し、およそ3人に2人が2つ以上の慢性疾患を治療するなど、高齢な患者ほど多くの受診が必要にもかかわらず、本会の調査では、経済的理由による患者の治療中断が様々に報告されています。原則3割等の窓口負担とともに、外来枠(個人毎)の負担限度額が高く、患者の多くが負担軽減の対象にならないことに問題があります。「現役世代との公平」などとして、負担限度額の引き上げや廃止をすることは実態を無視したものです。非正規雇用の増大など雇用環境が劣化する中、全世代に医療を保障するためにも、外来枠(個人毎)の負担限度額の設定を全年齢に広げるとともに、負担限度額を引き下げることが急務です。
 「負担能力に応じた負担」についても、税・保険料における応能負担にこそ適用されるべきであり、必要な時に迅速な受診が保障されるべき医療の窓口負担への導入・拡大は問題です。
 所得の低い層や受診が長期に及ぶ患者の実態などを踏まえ、高額療養費制度を改善していただくよう、下記の事項について要望いたします。

<緊急の要望>

1.

高齢者(70歳以上)の負担限度額について、改変前(2017年7月)の水準に戻すこと。

2.

外来枠(個人毎)を全年齢に拡大するとともに、負担限度額を引き下げること。

※外来特例は、2002年に月額上限を廃止し定率1割負担を徹底した際の負担軽減策として導入された。

3.

月をまたぐと合算できない問題について、少なくとも1カ月未満の入院について入院開始日から1カ月単位の起算とするなど改善を図ること。

 

<抜本的な改善要望>

1.

負担限度額を制度改変前(2017年7月)の水準の2分の1程度に引き下げること。

2.

高額療養費制度は国民の負担限度額を規定しているにもかかわらず、1%条項の「応益の仕組み」によって、重度で高度の治療が必要な人ほど負担が増える仕組みとなっている。この「応益の仕組み」を完全に撤廃すること。

3.

同一保険者である場合は、1カ月の負担額が21,000円未満であっても世帯合算ができるようにすること。
 同一世帯においては、異なる保険者であっても世帯合算できるようにすること。
 高額医療・高額介護合算療養費は、申請による償還ではなく、職権適用による償還とすること。

4.

月をまたぐと合算できない問題については、その治療が終了するところまでで合算できるようにすること(治療が長期間にわたる場合は、一定期間で区切りをつけて合算する)。

5.

「多数該当」は、1年以内に3回高額療養費給付月があった場合、4回目以降は減額される。1年以内という条件を緩和し、同じ疾患への治療で高額療養費の給付があった場合には、1年を超えても4回目以降について減額すること

6.

年間の負担上限額の設定について、適用対象を拡大すること。

7.

高額療養費制度を使いやすくするため、手続きを簡素化すること。
 制度のことを知らない患者が多いため、広報活動を充実すること。

以上