※全国保険医団体連合会では、下記の声明を内閣総理大臣、財務大臣、厚労大臣及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:219KB])。
【声明】国民の生活と経済に重大な禍根残す
消費税率の引き上げは中止を
2018年10月10日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
政府は6月に発表した「骨太の方針2018」で、2019年10月に消費税率を10%に引き上げる方針をあらためて明記した。同方針はあわせて社会保障費の「自然増抑制」を継続し、「適正化」や「効率化」の名目で医療・介護をはじめとする社会保障の給付削減を進めようとしている。
現在、非正規労働の増大や働く人々の賃金が低迷していることに加え、この間の税・保険料の負担増、年金支給額の削減、高齢者を中心とする医療費の窓口負担や介護利用料の引き上げにより、国民の生活困難と将来への不安がかつてなく広がっている。この上さらに、消費税率が引き上げられることになれば、家計は切り詰められ、医療について言えば、さらなる受診抑制を招くことは明らかである。
医療機関にとっては消費税損税の増大が経営の困難を招来する上、診療報酬で損税を補てんするという対応が今後も継続される限り、その負担が患者さんに転嫁されることになる。
今回の消費税率引き上げに際しては「軽減税率」制度が導入されるものの、実際は税率の据え置きであるに過ぎず、国民の生活困難を「軽減」するものではまったくない上、インボイス方式の導入による中小業者の負担と混乱による地域経済への影響は計り知れない。
さらに、この夏から秋にかけては各地で豪雨や水害、台風、地震といった災害が相次ぎ、被災地ではいまなお不便な生活や経済的な困難を余儀なくされている。消費税の増税は、住民の困難に輪を掛け、被災者と被災地の復旧・復興、生業の再建に逆行することになる。
このような中での消費税率の引き上げは、国民の生活はもとより、わが国の経済にとっても重大な禍根を残すことは必至であり、中止すべきである。
1989年の消費税導入以来、消費税の税収は累計349兆円であるのに対して、2017年度までの法人三税の減税額は累計280兆円で、消費税収の大部分が法人三税の減収分の穴埋めに使われているとの試算もある。国税収入に占める消費税収の割合は、既に法人税収を上回っている一方、この間の政府統計では、大企業(金融・保険業を含む資本金10億円以上の企業)の内部留保は過去最高を更新し、425兆円に達した。
社会保障の運営、充実に必要な財源は、応能負担の原則に基づいて、所得税、法人税の適切な課税で税収を確保すべきものである。低所得者にも大きな負担を課す消費税をそれに充てることは、税の所得再分配機能からも、社会保障そもそもの目的からも、問題があるといわざるを得ない。
所得税減税、法人税減税による税収不足を消費税に頼るのではなく、所得税課税、法人税課税を適切に行って確保し、雇用と賃金の安定、医療、介護、年金、福祉など社会保障の充実を図るべきである。
以上