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※全国保険医団体連合会では、下記の申し入れを厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:165KB])。

後発ARB製剤の発がん物質混入に関する申し入れ

2018年11月1日
全国保険医団体連合会
研究部長 鵜飼 伸

 

 貴職におかれましては、日頃の厚生行政に対するご尽力に敬意を表します。
 さて、先般、あすか製薬(武田薬品系列会社)が製造販売していたジェネリック医薬品であるバルサルタン錠『AA』において、中国の原薬メーカー製造の原薬に発がん物質とされるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)とN-ニトロソジエチルアミン(NDEA)が混入していたことがわかり、あすか製薬が自主回収いたしました。

 今回の事例は、2018年6月29日、スペイン当局からの情報が厚労省に入り、その情報をもとに、あすか製薬が社内調査を経て7月5日に自主回収に着手し、翌7月6日に自主回収が公表されました。8月21日までに自主回収を終えています。
 その後、9月25日に、厚労省は、薬事食品衛生審議会−医薬品等安全対策部会安全対策調査会で審議されました。審議を受けて、10月5日、厚労省では、事務連絡を出し、160r(最大用量)を4年間毎日服用したとして生涯発がんリスクは1.5万〜3万人に1人と推定し、公表しています。

 一方、欧米では、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会は、7月5日、バルサルタンのNDMA混入問題の検討を開始し、8月2日には、EMAがこのバルサルタンを320mg(最大用量)で7年間服用するとがん発症リスク5,000人に1人の割合と発表しています。また、米国FDA、カナダEMAでは、9月に新たにNDEAを検出したと発表しています。

 こうした欧米の対応から見て、今回の厚労省の対応は、どうであったのか、検証が必要ではないでしょうか。これまで後発医薬品の使用を促進してきた経緯からみても、後発医薬品の製造品質管理に対し、大きな懸念と不安をもつものです。

 現在、製薬企業の87%が海外に製造所を持ち、特に過半を中国やインドで製造していることからも、医薬品の原薬を含めて、海外で製造した医薬品の品質管理を強化することは大変重要な課題といえます。

 日本においては、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が設立されていますが、今回のような事例で、海外製造の原薬を含めた医薬品の承認・管理において、PMDAが十分な役割を果たしたのかはなはだ疑問です。また、海外からの情報により、事態が発覚した上、健康被害推定の公表は、約3か月後ということであったことは、患者・国民の不安に応える点で大きな問題があったといえます。

 私たちは、今後、こうしたことがおきないよう、厚生労働省において、海外での製造や原薬も含めた医薬品の品質管理を徹底すること、特にPMDAによる品質管理強化をすすめることを強く求めるものです。

以上