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※全国保険医団体連合会では、下記の声明を厚生労働省及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:134KB])。

【談話】オンライン服薬指導の拙速な「解禁」に反対する

2018年12月20日
全国保険医団体連合会
政策部長 竹田 智雄

 

 厚生労働省より11月の医薬品医療機器制度部会に、2019年の通常国会に提出を目指す医薬品医療機器等法(薬機法)の改正法案に、薬剤師が行う服薬指導についてオンラインでの実施を全国で解禁する方針を盛り込むことが提案された。続く12月の制度部会に示された「薬機法等制度改正に関するとりまとめ(案)」にも記載され、薬機法改正案に盛り込まれる見通しとなっている。

 現在、身体への作用が著しい処方薬の服用は、重篤な副作用が生じる恐れがあることなどから、薬局で薬剤師が患者に対して薬の効能・効果、服用方法や副作用等などを伝える服薬指導は、対面での実施が薬機法で義務付けられている。

 7月より、離島やへき地などで薬剤師による訪問が難しい患者を対象に、国家戦略特区に指定された愛知県や福岡市の一部でオンライン服薬指導の実証事業が認められ実証が進められている。しかし、厚労省の報告によれば、特区において登録薬局は21件、患者数は6人(11月時点)にすぎず、実証は殆ど進んでいない。医薬品医療機器制度部会には実証結果の中身なども示されていない。

 本来、診療・服薬指導に係るオンライン医療は、信頼関係の醸成、医療情報の取得の質などに照らして、あくまで対面での診療・服薬指導の補完として限定的に位置付けられるべきものである。オンライン服薬指導についても、離島やへき地など医療機関や薬局に赴くことが困難な患者などにおいて、患者に医療アクセスを保障するなど真にやむを得ない場合に、安全性が十分に確保された上で慎重に実施されることが求められる。今回のように、特区での実証が殆ど進まない中での、オンライン服薬指導の解禁に向けた提案は、法改正ありきで見切り発車するものといわざるをえない。

 また、「患者の療養の場や生活環境が変化している」などとして、患者宅だけでなく「職場等」での利用も認めるとしている。しかし、特区は患者宅での利用として実証が進められている以上、「職場等」での利用の容認は実証を欠いており問題である。
 安全な薬物療法の確保に向けて、オンライン服薬指導については、拙速な解禁は止めるとともに、特区の実証事業の進捗状況や実証結果を十分に踏まえつつ、医療の質・安全性・信頼性などエビデンスに基づいた慎重な議論が行われるよう強く要望する。

以上