※全国保険医団体連合会では、下記の声明を厚生労働省及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:122KB])。 【談話】「医療ツーリズム」病院開設は地域医療に混乱をもたらす 2018年12月26日
病気の治療等を目的に来日する「医療ツーリズム」に関わり、川崎市(神奈川県)で、外国人向けの自由診療を専門とする病院開設(100床)の動きが報道されている。当該医療法人グループが川崎市に示した施設概要案によれば、外国人患者に自由診療で最先端医療を提供するとして、内科・外科はじめ8診療科で、医師14〜22名、看護職員50名含め最大110名程度の人員で構成するとしている。 外国人への医療保障に関わる環境整備は重要だが、自由診療専門の海外富裕層を対象とした医療提供は全く別ものというべきである。川崎市医師会等からは、今回のケースは「営利目的」であり、営利目的の病院開設は許可しないことができるとする医療法(第7条)の定めに照らしても、開設は認めるべきではないなどの意見が出されている。 そもそも、医療従事者が不足するなど、保険診療において医療需要を賄える体制が必ずしも十分でない中、優先されるべきは保険診療における医療供給体制の確保にあるというべきである。 仮に、病院が開設され、自費で高額な治療費を支払う外国人患者を受け入れることが定着・拡大していくならば、受け入れ病院において、利潤追求のため、患者の選別や医師・看護職員等の過度な確保・集中が危惧され、医師・看護師不足の悪化や地域医療の疲弊にも拍車をかけることとなる。医師の健康を守るなどとして、この間進められている医師の「働き方改革」の議論にも逆行する。 また、自由診療なら、法的規制が緩く幾らでも病床開設が可能ともなれば、今後、日本人の富裕層を対象に申請・許可されるケースの発生なども懸念される。自由診療病床のなし崩し的な開設により、医療の営利化・市場化に途を拓く事態になりかねない。また、公的保険外の医療市場が拡大することは、原則禁止である混合診療の解禁に向けて後押しすることにもつながる。 以上 |