※全国保険医団体連合会では、下記の声明を厚生労働省及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:147KB])。
【談話】「妊婦加算」の「凍結」について
妊婦の医療費窓口負担軽減の検討を
2018年12月26日
全国保険医団体連合会
政策部長 竹田 智雄
中央社会保険医療協議会(中医協)は、12月19日、4月1日からの診療報酬改定で導入された「妊婦加算」について来年1月1日から「凍結」することを了承した。
今回、中医協での必要な調査・検証が行われることなく、自民・公明の与党の政治的圧力により、いきなり厚労省が中医協に「凍結」を諮問したことは遺憾と言わざるを得ない。「妊婦加算」は、中医協答申書にあるように「妊婦の診療に積極的な医療機関を増やし、妊婦がより一層安心して医療を受けられる体制の構築を目的」としたものである。妊婦への外来診療にあたっては、投薬、検査方法の選択など妊娠の継続や胎児への特別な配慮が必要であり、診療報酬での評価は当然である。医科のみが対象であったが、麻酔や観血的処置など、妊婦への特段の配慮が必要な歯科にも加算を適用すべきであった。
SNS等で問題となったコンタクトの処方や診察後に妊婦であることが判明した際の算定などの事例は、自民党の厚労部会に厚労省が提示したように算定ルールを明確にすることで対処できる。また、「妊婦加算」の主旨が十分理解されず、妊婦や家族に誤解や不安を与えたことについては、厚労省の国民への診療報酬改定の主旨・内容の説明不足であり、同「加算」の是非とは切り離して論じられるべきである。
今回の問題の背景にあるのは、3割負担という高額な窓口負担である。自治体の医療費助成により無料となっている子ども医療では、「乳幼児加算」で同様の問題は起きていない。
現行の定率負担制度では、それぞれの患者の特性に合わせた丁寧、適切な診療を診療報酬で評価すると患者負担が増加することになる。この矛盾を解消するために我々は患者負担の大幅軽減を求めてきたが、少なくとも妊婦の窓口負担については、少子化対策として減免制度を早急に検討すべきである。また、当初厚労省は「妊婦加算」部分を国の負担とすることで、自己負担の上乗せを実質ゼロにすることを検討していたと伝えられており、そうした緊急措置も必要である。
今後、有識者会議で「妊婦が安心できる医療提供体制の充実や健康管理の推進を含めた総合的な支援の内容(中医協答申)」が議論される。今回の問題を契機に、窓口負担だけでなく妊婦のさまざまな負担軽減策が検討され、子どもを産み、育てやすい環境整備が実現することを強く望む。
以上