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※全国保険医団体連合会では、下記の要望書を厚生労働大臣とマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:189KB])。

【要望書】「医師の働き方改革」に関する要望

2019年3月5日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 厚労省は2月20日、「医師の働き方改革に関する検討会」に勤務医の時間外労働の上限を原則年960時間、地域医療確保の「特例」として時間外年1860時間を2035年まで認める案を示した。
 特例対象は全勤務医師の4割にあたり現状追認と言わざるを得ない。過労死基準の2倍となる上限規制は医療安全や過労死防止の観点から大いに懸念が残る。
 また、過労死基準を大幅に超過する基準の追認により、研修医がただでさえ労働時間が長い外科、救急、産科などの科目選択を敬遠し、医師確保がかえって困難になるとの指摘も出されている。早期に一般労働者の上限と同じ時間外年960時間以内の達成を目指すべきだ。
 そもそも過酷労働を招いた原因は、国の長年にわたる医師養成数の抑制政策にある。政府は、医療費抑制に向けて1980年代から2008年まで医学部定員を抑制してきた。その結果、日本の医師数は、OECD加盟国(単純平均)に比べて約10万人少ない状況にある。医師数抑制政策を抜本的に改めることが必要だ。
 政府は、2028年に医師需給が「均衡」するとし医師数増は不要と説明してきた。しかし、この推計は働き方の改善を見込んでいない。この推計でも政府が偏在解消の目標年限とした2036年時点で全国335の2次医療圏のうち約220で約2万4千人の医師不足が見込まれている。
 厚労省は、勤務医の負担軽減として医師が担っている業務の多職種への移管や共同化、ICT等の技術を活用した効率化や勤務環境改善などを掲げている。医療界の英知を結集して負担軽減に臨むことは必要だが、重要なことは、国の責任で必要な財源と体制を整備し、働き方改善に向けた医療機関の取り組みを財政的に支援することだ。医師や医療従事者を確保するため、出産育児後の復職支援をはじめ働き続けられる環境を整備し勤務医の負担軽減につなげることも必要だ。
 全国各地で医師が足りないとの声は多い。拙速に結論を急がず、粘り強く議論すべきである。医師偏在や診療科偏在が深刻化する中、地域医療を確保し、勤務医の働き方の改善につなげるため、下記事項を要望する。

一、

医師養成数の抑制政策をあらため、少なくともOECD平均に遜色のない医師数を確保するため、医学部入学定員を増員し、医師不足の解消を図ること。奨学金制度を拡充すること。

一、

医師の健康確保措置の実施など過労死や過労自殺を防止するため診療報酬を含む条件整備を早急に行うこと。

一、

医師の当直明けの休日保障や月間での完全休日の保障などが可能となるよう診療報酬を含む条件を整備し、過重労働へ対処すること。

一、

医師事務作業補助体制加算、看護補助加算はじめ医師や看護師の事務負担軽減に関する診療報酬を拡充すること。

一、

院内保育、病児・病児後保育の整備運営に対する公的補助を拡充し、就労継続や復職支援を強化すること。

一、

医師や看護師などの医療従事者の確保に、国・都道府県が責任を持つこと。

以上