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※全国保険医団体連合会では、下記の声明を名古屋高裁、名古屋地裁及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:129KB])。

【声明】性暴力被害者に寄り添った司法を

2019年5月26日
全国保険医団体連合会
女性部

 

 私たち全国保険医団体連合会女性部は、命と健康を守ることを使命とする医師・歯科医師として、性暴力に関する司法判断において被害者の身体的・精神的苦痛が充分に考慮されていない現状を危惧している。

 3月28日に名古屋地裁岡崎支部は、中学2年から実の娘に対して性的虐待を続けてきた父親が準強制性交等罪に問われた事件で、無罪を言い渡した。その理由を、被害者が「抗拒不能」の状態にあったと断定するには疑いが残るとしている。
 裁判所は、性交に合意がなかったこと、継続的な性的虐待で父親が娘を精神的支配下に置いていたことは認めている。しかし、娘が父親の性暴力に抵抗したときに受けた暴行で大きなあざができていたにもかかわらず、極度の恐怖心を抱かせるような強度の暴行であったと認めず、娘が親の反対を押し切って専門学校に入学した事実等もあげて、抵抗が不可能だったとはいいきれないとしている。
 実の父親に犯されるという耐え難い精神的・身体的苦痛を数年にわたって受け続け、必死の思いで抵抗すれば暴行を受けてきたという状況にあってもなお「抗拒不能」を認めない裁判所の判断は、被害者の苦しみをあまりにも軽視したものであり理解しがたい。
 この他にも、3月12日の福岡地裁の準強姦事件、19日の静岡地裁の強制性交致傷・傷害事件、28日の静岡地裁の強姦事件など、性暴力被害者の恐怖や苦痛に対する裁判所の無理解が疑われる無罪判決が立て続けに出されている。
 実父により13歳から7年間にわたって性暴力を受けていた山本潤氏(「spring」代表理事)は、当時の心境を、「抵抗することもできず凍り付いていた」、「受け入れるしかないんだ」と感じていたと語っている。「魂の殺人」といわれる性暴力では、被害者が物理的に抵抗することは著しく困難である。こうした被害者の恐怖や心の痛みに対して、現在の裁判所はあまりにも鈍感といえるのではないか。

 私たちは性暴力に対するこのような司法の姿勢を改善し、刑法の「暴行・脅迫」「抗拒不能」要件の撤廃等を含めて検討し、性暴力被害者に寄り添った司法に転換することを求める。

以上