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※全国保険医団体連合会では、下記の談話を国会議員及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:145KB])。

【談話】2019年10月基準材料価格改定を受けて
改めて歯科用貴金属の価格高騰問題の解決を求める

全国保険医団体連合会
社保・審査対策部
歯科部長 新井良一

 

 2019年度の消費税引上げに伴う診療報酬改定が告示された。歯科では歯科鋳造用金銀パラジウム合金(以下、金パラ)の市場価格高騰による経営圧迫が深刻な問題となっており、今次の基準材料価格改定でその改善が図られるかが重大な関心事であった。今次改定では金パラの材料価格は1グラム1,675円とされ、現在の1,458円から217円(14.88%)の引き上げとなった。しかし、この価格では不採算は解消されないという歯科医療現場の声は強い。
 2018年4月の基準材料価格改定以降、金パラの市場価格は急騰して高止まりしている。金パラの保険償還価格と歯科医院での購入価格の乖離是正は歯科医院の切実な要望だったが、2018年10月、2019年4月の随時改定は行われずに金パラの材料価格は据え置かれた。その結果、1年以上にわたり歯科医院での不採算は拡大するままにされた。その上、今次の基準材料価格改定でもなお乖離は改善されないというのが現状である。今後も金パラの市場価格が安定に向かう見通しはなく、多くの歯科医師がさらなる取引価格上昇を歯科医院経営上のリスクとして危惧せざるをえない中で、不安を抱えながら診療を行っている。
 現在の基準材料価格改定および随時改定の方法では、歯科用貴金属の市場価格の急変に対して有効に対応できないことがいよいよ明白になっている。ただでさえ多くの歯科医院が低歯科診療報酬のもとで厳しい経営を強いられている中で、歯冠修復・欠損補綴という歯科治療の中心的な分野での不採算を拡大してきた現在の制度が、歯科医院の経営をさらに悪化させている。このままでは、患者に保険で良質な歯冠修復・欠損補綴治療を提供していくことが困難になり、ひいては国民にも重大な不利益が及びかねない。歯科用貴金属の保険償還価格と市場価格との大幅な乖離を防ぐ抜本的な見直しが、今こそ求められている。
 基準材料価格改定については、そもそも算出の基礎となる「特定保険医療材料価格調査」の結果が非公開とされている。保険償還価格の決定プロセスが不透明であり、実態を適切に反映して価格が算出されているのか検証できない。まずは調査結果を公表し、問題点を広く検証して制度の改善を図ることが必要である。同時に、市場価格と保険償還価格が大幅に乖離した状況が継続してきたことを踏まえた、緊急の手立てが講じられるべきである。

以上