ホームニュースリリース・保団連の活動私たちの提言・意見

※全国保険医団体連合会では、下記の緊急要請書を、総理大臣、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:190KB])。

【要望書】公立・公的病院等424病院への再編統合などの
再検証の強要を止め、再検証の要請を
民間病院に行わないよう求める要請書

2019年11月12日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 国民医療の確保に対する貴職のご尽力に、敬意を表します。
 さて、厚生労働省では、9月26日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の第24回会議で、再編統合などの再検証を要請する対象であるとして、公立・公的病院等の約3割にあたる424病院の病院名を公表しました。
 ワーキンググループは、公立・公的病院等を対象に、がん・心臓・脳疾患領域など急性期の診療実績が特に少ない場合や、自動車で20分以内に似た実績の病院がある場合に、病院の再編統合を検討し、遅くとも2020年9月末までに結論を得るよう求めています。
 しかし、診療実績は急性期医療機能の一部だけを取り出して、しかも2017年6月の1カ月分のみで判断するなど大変不十分なものです。また各症例の総数に基づくため、医師不足等で患者を受けいれることが困難だった場合は、診療実績が低いと判断され、その地域で医療ニーズが強くても削減対象とされてしまいます。特に地方の中小病院は対象となりやすく、実績が少ないとされた病院は、200床以下が7割強を占めます。公表された病院には、へき地医療を担う病院や災害拠点病院なども含まれており、これらの病院が地域で果してきた役割なども考慮されてないなど、基準自体が稚拙すぎます。
 厚生労働省が病院名を公表したことで、「公表された病院への就職を再考する看護師まで現れている」(知事会代表)、「副院長が辞表を出して大変だった」(日赤病院)、「内定していた技術部門の職員が辞退した」(済生会病院)など、ただでさえ地方の病院では医療従事者の確保が困難であるのに、公表による「風評被害」が広がり、怒りの声があがっています。また、地域住民からも「受診できる病院が身近になくなる」、「お産できる病院を探すのが困難だ」など大きな不安が広がっています。
 橋本岳厚生労働副大臣は、10月17日に福岡市で開催した意見交換会の初会合で「ご心配をお掛けしたことを反省したい。医療機関に何かを強制するものではない」と釈明しましたが、この発言に基づき再検証の強要は行うべきではありません。
 しかし、今年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」では、「民間医療機関についても、2025 年における地域医療構想の実現に沿ったものとなるよう対応方針の策定を改めて求めるとともに、地域医療構想調整会議における議論を促す」とされています。また、10月28日に開催された経済財政諮問会議では、民間病院を含めて全国の病床数を約13万床削減することが提案され、安倍総理は「持続可能で安心しできる地域医療・介護体制を構築するためには、地域医療構想を実現することが不可欠」と発言しました。
 しかし、病院は、住民の命や健康を守ることはもちろんですが、地域における様々な取り組みの拠点でもあります。また、特に地方では基幹産業ともいうべき社会的・経済的役割をも持っており、病院の縮小・廃止は、地域そのものの存廃にも関わる重要な問題です。
 地域医療の提供体制は、一度崩壊すると再生は極めて困難です。民間病院も含めて拙速で強権的な再編・統合によって、地域医療の崩壊を加速させてはなりません。
 また、加藤厚労大臣は10月8日の会見で、民間病院のリストを公表するか否かについては、「自治体の声も踏まえて対応を考えていく」と述べていますが、民間病院のリストの公表をすべきでないことはもちろん、公立・公的病院や民間病院にかかわらず、再編統合の再検証の強要は絶対に行うべきではありません。
 こうしたことから、全国保険医団体連合会では、下記の点の実現を強く求めます

一、 橋本岳厚生労働副大臣の発言を踏まえ、今回示した公立・公的等424病院への再編統合の再検証の強要を行わないこと。また、その旨を通知、広報すること。
一、 今後、民間病院に対する再編統合などの再検証の要請を行わないこと。
一、 地域医療構想調整会議については、地域における医療供給体制を確保する観点から、貧困や窓口負担の拡大等による受診抑制の発生から地域住民の命と健康をどう守るかという観点も含めて論議が行えるようにすること。病院・病床については、地域の住民や医療関係者、自治体関係者の声を真摯に受け止めて、必要な病床を確保するという観点で論議を進めるようにすること。

以上