保団連第49回定期大会活動方針(案)待合室から安倍政権の医療改悪と9条改憲 ストップ!!
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@ | 診療報酬の10%以上の引き上げを求めるとともに、6月代議員会で決定した周知期間の確保を含めた医科歯科診療報酬改善要求の実現を追求する。「花粉症治療薬」などの保険給付外し・制限を許さない。 |
A | 患者負担増計画、とりわけ「75歳以上の窓口負担原則2割化」「薬剤の自己負担引き上げ」を具体化させない。 |
B | 介護保険改悪法案を来年の通常国会に提出させない。検討されている改悪は、利用料が2〜3負担となる対象者の拡大、要介護1、2の生活援助の保険外し、ケアプランの作成費用の自己負担化、などである。改悪阻止とともに、国庫負担を増額して利用料、保険料負担の軽減、介護職員の抜本的待遇改善などを求める。 |
C | 消費税10%を8%にもどす法案の臨時国会での野党共同提出を実現する。 |
D | 9条改憲発議につながる動きを許さない。 |
E | この間の台風と豪雨被害の被災者救済 医療機関再開の公的財政支援、被災者生活再建支援法の抜本改善を求める。 |
上記の実現に向けて、国会議員だけでなく諸団体、関係審議会委員など関係各方面への要請、働きかけをすすめる。当面の具体的行動としては、「診療報酬の引き上げと窓口負担の軽減を求める医師・歯科医師要請署名(会員署名)」、「保険でより良い歯科医療を求める」請願署名の取り組みを旺盛に進める。
2019年6月の第2回代議員会では、当面の重点課題として参議院選挙に向けて安倍政権が計画している医療・社会保障改悪計画を会内外に広く知らせることを提起した。
参議院選挙結果は、改憲勢力が3分の2を割り、自民党は3年前の参議院選挙で27年ぶりに獲得した参議院での単独過半数を維持できなかった。これらは、安倍首相が選挙戦で強調した9条改憲の性急な動きには賛成できない、政治に望むことは社会保障の充実や生活改善という民意の表れである。この結果を生んだのは、全国32の1人区で野党統一候補を実現し、10の選挙区で勝利した市民と野党の共闘である。
参議院選挙で厳しい国民の審判を受けたにもかかわらず、選挙後の内閣改造後の記者会見で、改憲は「必ずや成し遂げていく」、社会保障改悪も「大胆に構想してまいります」と決意を語った。前述の「活動の基本姿勢」でもふれたように、今期は安倍政権の改憲、社会保障改悪を許さない運動が活動の大きな柱となる。医療分野では、後期高齢者の2割負担などの阻止が最重点課題である。
「全世代型社会保障検討会議」の立ち上げについては、すでにふれたとおりである。
政府は「全世代型社会保障」について「少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、人生100年時代の到来を見据えながら、お年寄りだけでなく、子どもたち、子育て世代、更には現役世代まで広く安心を支えていくため、年金、医療、介護、労働など社会保障全般に渡る改革を検討する(検討会議での安倍首相の発言)」と宣伝し、国民の理解を得ようとしている。
しかしその実態とねらいは、@高齢者と現役世代の世代間対立をあおりながら、高齢者に医療費負担増、介護保険改悪、年金削減を押し付ける、A高齢者だけでなく受診時定額負担、薬剤自己負担など実態としては全世代に負担を強いるものである。さらに言えば、高齢者の負担増と生活困窮は介護離職のように現役世代の負担につながる。
「社会保障の支え手を増やす」ために「70歳までの就労機会確保」「生涯現役社会の実現」が課題にあげられている。働く意欲のある高齢者が働き続けることは重要であるが、年金では暮らすことができず働かざるを得ないのが実態である。
就労するしないにかかわらず、生活できる年金をすべての高齢者に保障すべきである。年金水準を引き上げるとともに、基礎年金を実質3割も削減するマクロ経済スライド(年金受給者の増加と現役世代の減少を理由に毎年年金水準を引き下げる。現在は−0.9%。物価上昇が0.9%以下の場合は発動しない)はただちに中止する。生活保護の給付削減を元に戻すとともに、捕捉率を抜本的に引き上げる対策も必要である。
また、65歳以上の就業者で自営業者などを除く被雇用者469万人のうち非正規雇用は358万人で多くの高齢者が低賃金を強いられている。「生涯現役社会」を本気で実現するというのであれば、現役世代を含めて正規雇用を確保し、最低賃金を引き上げるなどの条件整備をすべきである。
「病気予防」「介護予防」が大きな柱に位置付けられている。「予防医療」の旗振り役は、経済産業省である。「生活習慣病」対策を強化すれば医療費が削減できると主張する。しかし、医療経済の専門家からは、「予防は医療費支出の先送りに過ぎず、削減効果はない」と指摘されている。経産省のねらいは、「予防」を名目に健康の「自己責任」を拡大することである。麻生財務大臣の「不摂生するものの医療費をなぜ我々が負担しなければならないのか」発言は、それを象徴している。第2のねらいは、病気と介護の「予防」分野にフィットネスクラブなどのヘルスケア産業、食事の宅配サービス、民間保険など企業参入を促進することである。
個人が自主的に健康管理や介護予防に努力することは、推奨される。しかし、政府が『社会保障改革』として推進することになると、何らかの理由で努力していない、できない人が病気や要介護状態になったとき、『自己責任だから』と社会保障から排除してしまうおそれがある。すでに、医療では国保の「保険者努力支援制度」、健保の「後期高齢者支援金の加減算制度」、介護では「介護インセンティブ交付金」などペナルティーを伴う推進策が導入されている。
70人以上の野党議員が名を連ねる「『医療の民主化』改革で次世代に責任ある政治を実現する議員連盟」も「登録制の『かかりつけ医』制度」とともに「ベース医療としての予防の推進」を掲げている。今後の動向を注視するとともに、働きかけを強める。
政府は2018年度で約121兆円の社会保障給付費が2025年度には約141兆円に2040年度には約190兆円に膨らむと宣伝し、多くのマスコミも「抑制と負担増は必至」との論調である。
しかし、その国の社会保障給付費の水準は、実額だけでなく対GDP比で考える必要がある。GDP比では2018年度は21.5%、2025年度は21.8%、2040年度でも24.0%である。厚労省の鈴木俊彦事務次官は、「2040年度の24%という水準は、日本よりも高齢化率の低いスウェーデンやフランスが現在負担している水準よりも低いものであり国民が負担できないという水準ではないことが分かりました(『社会保険旬報』2019年1月1日号「座談会 社会保障・税の一体改革をふり返り2040年の社会保障改革を展望する」)」と述べている。「国民が負担」という点は保団連と立場は異なるが、他の先進国と比較しても今後の社会保障費の伸びに日本経済は十分対応できるということである。能力に応じた税と社会保険料負担、所得再分配機能の強化が求められている。
医療においては患者負担増とともに「かかりつけ医の登録制」や「出来高払いから定額制へ」など様々な「効率化案」が出されているが、真に効率化すべきは新薬の高薬価である。この間の保団連の調査と運動によってオプジーボの薬価引き下げなどを実現してきたが、依然として8兆円を超す薬剤費のうち、数量ベースで2割に満たない新薬が6割近くを占めている。例えば新薬の薬価を2割程度引き下げれば1兆円近い財源が捻出できる。
高薬価の是正とともに、国民負担に頼らない保団連の3つの財源提案(@企業負担を増やして保険料収入を増やす、A法人税課税を先進7か国並に、B所得に応じた所得課税に)の宣伝・普及を行う。
政府が検討課題にあげているものは、@後期高齢者の窓口負担2割化、A外来受診時定額負担、B市販品類似薬の患者負担の引き上げ、C金融資産に応じた患者負担引き上げ、D70歳以上の現役並み所得の判定基準引き下げ、E高額新薬の保険給付外し、などである。
「団塊の世代が75 歳以上に入り始める2022年までに社会保障制度の基盤強化を進める(骨太方針2019)」としていることからも、政府が重視しているのは後期高齢者の負担増である。この点について、日医の横倉会長は9月18日の記者会見で「『現役世代の負担も鑑み、低所得者にも十分配慮しつつ、国民が納得できるよう、十分に議論を尽くしていくべき』と一定の理解も示した(日医プレスリリース)」と伝えられている。また、健保連は後期高齢者の2割負担を提案している。改悪阻止のために、患者・国民、国会議員とともに医師会、歯科医師会、労働組合など幅広い働きかけが必要である。
市販品類似薬の患者負担については、法律改悪とは別にこの間の診療報酬改定のたびに湿布薬、保湿剤などの保険外しがねらわれてきた。2020年改定でも、健保連の提案を契機に花粉症治療薬の「第2世代抗ヒスタミン剤」の保険外しが中医協で検討される可能性が高い。こうした動きにも、機敏に反撃をする。
保団連の受診実態調査からも無料化をめざして原則3割負担の2割への引き下げなど患者負担の軽減が求められているが、当面の緊急課題として高額療養費制度の低所得者の負担上限額の引き下げ、子どもと妊産婦の患者負担無料化を国の制度として実現することを求める。
供給体制面の改悪で最大のものは、地域医療構想による病床削減である。精神、結核などを除く125万床(2018年)を2025年に119万床まで削減する計画である。急性期病床については73万床から53万床に大幅に削減する。
そもそも計画自体がそれぞれの地域の実態を無視した机上の計算によるものであり、厚労省の調査では2018年9月時点で病床ベースで19%の到達点であった。厚労省としては、まず公立・公的病院から再編・統廃合により優先的に削減する方針を立て、2019年9月26日に検討対象の424の病院名を公表し2020年9月までに対応策を示すように求めた。民間を含めて全国の病院数は約8400、このうち公立・公的病院は1652、今回公表された病院数はその3割に当たる。同様に民間病院の検討対象病院名も公表する計画である。
今後、該当地域の「地域医療構想調整会議」で議論が行われる。政府は、地域の医師不足やそれによる勤務医の過密労働、産科など診療科目の縮小などを逆手にとって、病床削減、働き方改革、偏在是正を「三位一体」で推進するとしている。それだけに医療関係者の中に「止む無し」の声がある地域もある。しかし、そうした困難を作り出してきたのは政府の医療政策である。手術や治療件数などのデータだけではその地域で果たしている公立・公的病院の役割を評価することはできない。地域住民と医療関係者、地方自治体が連携して、地域の実態を無視した再編・統廃合を許さない運動に取り組む。
病床削減は、1985年の医療法改定により始まった地域医療計画も政府の思惑通りには機能せず、試行錯誤のうえ地域医療構想にたどり着いたものの2018年度までに「調整会議」で集中的に検討する予定がうまくいかなかった。診療報酬による急性期病床の削減も2018年改定で誘導策を導入したが、7対1病床で10対1に移行したのはわずか6.5%である。地域や医療現場の実態を無視した削減策は成功していない。
厚労省自身が「各医療機関が担う急性期機能やそのために必要な病床数等について再検証をお願いするもの」「必ずしも医療機関そのものの統廃合を決めるものではない」と強制力がないことを認めている。全国知事会は「自治体病院の使命は地域住民の命を守ることであり、全国一律の基準による分析のみで病院名を公表したことは、地域の命と健康を守る最後の砦である自治体病院が機械的に再編統合されるという住民の不安を招きかねず、地域の個別事情を無視するもので、公平な視点とは言い難い」との見解を発表している。地域の実態を無視した公立・公的病院の統廃合を跳ね返すことは可能である。「地域医療構想調整会議」でずさんな厚労省のデータを議論し、地域医療構想そのものが病床削減ありきの地域医療切り捨て構想であることを地域住民、医療関係者の共通認識としていく。
2018年4月より国保の財政運営が「都道府県化」されたことにより、国保料(税)の引き上げが相次いでいる。都道府県が示す「標準保険料率」に合わせた金額にするよう誘導しているためだ。2018年度、2019年度ともに3割近い市町村で値上げされ、とくに都市部で深刻になっている。大阪では府が「統一保険料」をめざすことを掲げているもとで9割が値上げ、東京でも65%が値上げとなっている。
政府は高すぎる国保料(税)を軽減するために市町村が独自に行っている一般会計からの繰り入れを「早期解消を促す」ことを掲げており、今後一層の値上げが予想される。社保協などとも協力して、一般会計からの繰り入れの維持・拡大を求める。
厚労省の調べでは、国保加入世帯1837万世帯(2018年6月1日現在)のうち、15%に当たる269万世帯が国保料を滞納している。滞納世帯のうち3軒に1軒は正規の国保証が交付されず、「短期保険者証」「資格証明書」の交付世帯となっている。国保料の滞納による財産差し押さえは、10年間で3倍に増加し35万件にものぼっている。
国保料には「応能割」のほかに子どもを含めた世帯員数に比例した「均等割」や世帯単位の「平等割」という制度があり、低所得者に高い負担が押し付けられている。全国知事会が要求しているように1兆円の国庫負担があればこれらを廃止し、協会けんぽ並みの保険料が実現できる。自治体国保の財政危機の根本原因は1983年の老人保健制度発足に伴った国庫負担率の削減であり、社会保障制度にふさわしく自治体国保への国庫負担率の引き上げを要求する。
口腔の健康が、慢性疾患をはじめとする全身の健康に大きな影響を与えることが、広く認識されている。「骨太方針2019」でも、「口腔の健康は全身の健康にもつながることからエビデンスの信頼性を向上させつつ、国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診、フレイル対策にもつながる歯科医師、歯科衛生士による口腔健康管理など歯科口腔保健の充実、入院患者等への口腔機能管理などの医科歯科連携に加え、介護、障害福祉関係機関との連携を含む歯科保健医療提供体制の構築に取り組む」と明記された。しかし、この認識にふさわしい対策が取られているとは言えない。とくに、診療報酬の面では、著しく立ち遅れている。
歯科医療の危機打開のためには、歯科医療費の総枠拡大が必要である。総枠拡大は、次の3つのことにより達成される。
@ | 歯科診療報酬を基礎的技術料中心に大幅に引き上げあげる。とりわけ初再診料については、医科と同評価の点数とする。1980年代の初めには国民医療費の10%以上を占めていた歯科医療費は、年々減少し2018年度は7%の3兆円である。かりに10%に引き上げるためには、約1.4倍化が必要である。内容上の問題では院内感染防止対策をはじめとする施設基準の評価などを抜本的に見直し、歯科医療機関全体の底上げが求められる。 |
A | 保険適用範囲を拡大する。歯科では、有用性と安全性が定着し通常行われている治療行為の新規保険導入がほとんどされてこなかった。歯科医師が納得できる適正な点数で、保険適用を検討する。 |
B | 歯科受診率の抜本的に引き上げる。経済的理由により必要な時に歯科にかかれない世帯は160万世帯と推計される。患者負担軽減が必要である。定率負担の引き下げとともに、医科歯科ともに低所得者の外来負担上限を月3000円程度に抑える高額療養費制度の改善を求める。 |
6割の人が口腔内の健康に不安を抱いているという調査結果もある。医科と異なる点として経済的理由以上に「時間がない」などの理由で歯科受診を控えている人が多い。潜在的ニーズを歯科受診に結びつけるためには、お口の健康の重要性と放置することの危険性について共通認識にすることが必要である。成人歯科検診の充実など行政への働きかけとともに、医科歯科一体の組織を生かして医科診療所でのチラシ、ポスターなど独自の取り組みを進める。
歯科技工士の実態は、年収300万円以下が8割、過労死水準を超える週の労働時間60時間以上が6割(保団連歯科技工所アンケート)など、深刻な状況である。歯科医療に欠かせない歯科技工士の後継者育成のためにも、こうした実態の改善は急務である。
歯科技工問題の解決には、歯科医療費の総枠拡大が必要である。6月代議員会で決定した「歯科技工料問題に対する保団連の要求」の以下の事項の実現を求める取り組みを進める。
・ | 形成、印象採得、咬合採得、試適、装着などの歯科医師の技術料を引き上げる。 |
・ | 歯冠修復及び欠損補綴の点数を現行の取引における「製作管理料」を3割として引き上げる。 |
・ | 「7:3」告示に準じた「製作技術料」が委託技工料として支払われるよう実効性ある制度的保障を確立する。その1つとして、現在歯科診療報酬点数表において一体的に示されている歯冠修復及び欠損補綴料について、「製作技術料」と「製作管理料」を区別して表示する。 |
以上のことを実現するために、歯科技工問題を患者・国民、国会議員、関係諸団体に広く宣伝するために「歯科技工パンフ」を活用する。
「保険で良い歯科医療」を求める運動は、2007年以降、総計143万筆超の署名を集約し、自治体決議も12道府県、645市町村議会(37%)に達した。こうした運動を反映して、2007年以降5回の改定ではすべて歯科診療報酬の引き上げを実現することができた。
この運動を歯科医師だけでなく患者、国民の運動としてさらに広げるには、保険の適用範囲拡大の具体的要求を掲げることが求められている。前大会以降、「『保険で良い歯科医療』を求める全国連絡会議」や山梨の「保険拡大を願う会」とともに運動に取り組む中で、「歯科矯正医との連携を図った上で、学校歯科検診調査項目、判定基準等を見直し、機能不全 に繋がる不正咬合で歯科矯正の必要があると指摘された場合、また、口腔機能発達不全症で矯正治療 が必要と診断された場合の歯科矯正については、これらの体制の整備も踏まえて、保険適用する(『2020歯科診療報酬改善要求』)」ことを確認した。さらに前大会で事例としてあげた小臼歯の前装鋳造冠などを含めて具体的事項を不採算とならない導入点数で要求できるよう検討を進める。
歯科用貴金属価格の2019年10月随時改定の内容が発表された。歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)は、約15%の引き上げとなり、告示価格は1グラム1,675円となった。しかし、8月末の金パラの実勢価格は1グラム1,830円台であり、依然として大幅な乖離が存在する。
適正な価格改定が実施されるよう、改定に係る関連資料の公開とともに「5%の増減」ルールを廃止し、「変動幅」にかかわらず6カ月ごとに改定を実施することを求める。
政府は、2024年4月から適用する勤務医の残業上限について、2036年まで1,860時間の「特例」を設け、都道府県が医療機関を認定するための要件などを検討中である。しかし、一般勤務医の年960時間も過労死水準であり、研修医等については「将来的に縮減を目指す」としつつも期限すら設けない設定は、異常と言わざるを得ない。
過労死水準の時間外労働を減らし、例外規定の早期撤廃ができるよう政府は対策を講ずるべきである。そのためには、第1に医師増への政策転換を速やかに行い、医学部入学定員の増員に足を踏み出すことである。「2022年度以降の医学部定員の減員に向けた議論」は撤回し、少なくとも2019年度の9,420人を維持し、今後、都道府県が求める地域枠定員を上乗せすべきである。第2は、勤務医の負担軽減をはかる具体的な措置を医療従事者の合意を尊重して進めることである。その1つとして、タスクシフティング・シェアリングがあげられている。それを進めるには看護師、薬剤師、救急救命士、放射線技師、臨床検査技師、事務職員の増員が必要であり、それらを保障する診療報酬による手当など財政保障を国の責任で行うべきである。なお、タスクシフティングにあたっては、医療の安全性とシフトされる側の過重負担にならないように十分な配慮と関係職種の合意が必要である。
厚労省は医師偏在是正法の4月1日からの施行に当たり、都道府県が医療計画の一部として2019年度中に策定する「医師確保計画」と「外来医療計画」についてのガイドライン(GL)をまとめ、3月29日付けで都道府県に通知した。この通知は、2月27日の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」の「とりまとめ」を受けてのもの。
同分科会は、新たに設けた「医師偏在指標」をもとに、上位16都府県を「医師多数県」、下位16県を「医師少数県」と規定、同じく「二次医療圏」についても3分の1ずつに区分けした。2036年度を目途に医師偏在の解消をめざすとしている。新指標は、これまでの「人口10万人当たり医師数」に代わって、住民の年齢や性別から算出した受診率、医師の年齢・性別などを加味した労働量、患者の流出入状況から導き出した数値。「医師の少ないところは、医師の多いところから医師の確保を図り、医師の多いところは他の区域から医師確保を行わない」方針である。
しかし、「医師偏在指標」はあくまで相対的な指数であり、「医師多数」と規定された都府県でも医師は不足している。上位の東京、京都、福岡でも、医師の過重労働は解消していない。今日の医師不足問題は、医師の絶対数が足りない上に、医師・診療科の偏在が事態を一層深刻にしている。当面の対策として「偏在是正」は必要であるが、医師数を増やすことと「医師多数」地域でも医師は不足していることを前提にした是正策が求められている。また、同一県内での偏在、へき地での医師不足は深刻である。その是正のためには診療報酬による手当だけでは限界があり、公的支援が必要である。
また、「外来医師多数区域」での開業への対応として、情報提供を行うことにより「個々の医師の行動変容」を促すとしているが、十分な効果が得られない場合は開業についての「新たな制度上の仕組み」を検討するとしている。開業規制につながる施策は取るべきではない。
政府が進めようとしている審査支払機関改革は、審査支払機関を医療費抑制のためのビッグデータ活用の推進役に変貌させるとともに、患者の個別性が考慮されない機械的審査の拡大、保険者の意向に応じた査定が強められるおそれがある。このことは患者が受ける医療の内容にも影響する。医療費抑制のための審査支払機関改革に反対する。
指導においては、高点数の選定基準による集団的個別指導、個別指導の選定が医療現場に強いストレスを及ぼし、大きなゆがみや矛盾を生む元凶となっている。また厚労省が強調する「大臣裁量」によって、未だに指導の中断や自主返還と称する経済的措置が行われており、一刻も早い解決が求められている。指導と監査の峻別とともに、現場の医師・歯科医師が切実に求める行政手続法の趣旨に則った指導の実現や、指導大綱にも規定する「懇切丁寧に行う」指導の実現等を引き続き求めていく。また、適時調査の改善を要求する。
また、医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)が2019年6月に公表した「医療事故の再発防止に向けた提言(第9号)」で「(入院中の)転倒・転落による頭部打撲(疑いを含む)の場合は、受傷直前の意識状態と比べ、明らかな異常を認めなくても、頭部CT撮影を推奨する」と提言したことについて、評価と対応を検討する。
国際的に有効性が認められているワクチンの定期接種化・供給確保をはじめ、費用の心配なく必要なワクチンが接種できるようワクチン接種による健康被害救済の拡充、予防接種施策を評価・検討する仕組み(日本版ACIP)の創設を国に求める。
政府は2019年5月15日に成立した「医療保険制度の適正かつ効率的な運用を図るための健保法等の一部改正法」にそって、2021年3月から医療機関の窓口でマイナンバーカードによる保険資格確認を本格的にスタートする準備を進めている。
カード読み取り端末を設置した医療機関で患者がマイナンバーカードを端末にかざすと、ICチップの電子証明書を読み取り、オンラインで資格確認を行う。医療機関の職員がカードにふれる必要がないように、備え付けのカメラで顔認証、本人確認をするという。
資格喪失の確認がリアルタイムででき便利なようであるが、保険証の番号が世帯から個人単位に変更となるので保険者番号によるオンラインでの資格確認もできる。職員がカードを手にする必要がないといっても、高齢者など端末の操作ができない場合は補助せざるを得ない。カードを持ち歩けば、待合室などでの紛失の危険もある。結果的には、医療機関のメリットはほとんどない。
政府は端末設置の費用を半額以上補助し、小規模の診療所や薬局には全額補助も検討していると伝えられている。数百億円かけて、わずか13.9%のマイナンバーカードの保有率を引き上げるのがねらいである。その背景には、マイナンバーによる個人統制、将来的には社会保障個人会計など税・保険料負担と社会保障給付を一括管理する企みがある。
こうしたマイナンバーのねらいと医療機関にメリットはないことを宣伝し、政府の端末普及計画を頓挫させる。
政府の機密情報をサイバー攻撃から守るため、総務省が開発した省庁向けのセキュリティーシステムが一度も使われないまま2年間で廃止されていた。会計検査院の調査で2019年10月に判明したもので、開発費用18憶8709万円が無駄となった。
会計検査院は、診療データなどを地域の病院や診療所、介護施設で共有する「医療情報連携ネットワーク」についても調べ、調査した60件のうち1割が利用されていなかったりすることが分かった。地域共有システムには、「地域医療介護総合確保基金」などを取り崩し、18都道県が事業者に計155億円を交付していた。
政府は、カジノ開設にむけた地方自治体の誘致活動を推進するために、2019年9月に「基本方針案」(「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)」)を公表した。大阪府・市、長崎県、和歌山県がこれまでカジノ誘致を正式に表明。8月には横浜市が新たに誘致に名乗りをあげ、北海道、東京都、千葉市などで検討が進められている。
カジノは法律が禁止する賭博である。日本は他の先進国に比べてもキャンブル依存症が多く、その数は320万人ともいわれる。その理由は、パチンコ産業である。カジノが解禁されれば、さらに増加することは間違いない。ギャンブル中毒により、多額の借金を背負い、会社を首になり、家庭崩壊に至る人々を作るカジノ解禁は、医療人として断じて認めることはできない。
カジノ開設を許さない地域のたたかいと連携し、「他人の不幸を前提にした地域振興や経済成長はあり得ない」の世論を広げ、カジノ開設を断念させる。
2020年度の防衛費の概算要求は5兆3223億円、6年連続で過去最高を更新した。次期中期防衛力整備計画(2019-23年度の5年間)27兆4700億円を着実に達成する計画である。防衛費の拡大の背景にあるのは、米国製高額兵器の大量購入である。空母化した「いずも」に搭載するF35戦闘機を1機141億円で6機分846億円計上。米国からの兵器調達額は5013億円にのぼる。
アメリカの圧力という点では、沖縄の辺野古新基地建設に対する固執も同様である。県民投票、県知事選挙、衆参の国政選挙で沖縄県民の意思は明確になっているにもかかわらず、新基地建設を継続している。どんな政策を推進するにせよ地元住民の意思を尊重するのが民主主義である。政府は直ちに新基地建設を中止し、アメリカとの普天間基地の無条件返還の交渉に着手すべきである。
沖縄だけでなく夜間訓練など全国で米軍の「やりたい放題」が止められない原因は、日米地位協定である。日本には、米軍の活動を規制する法的権限がない。沖縄県が独自に欧州4か国ドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスを調査したところ、どの国も国内法の適用があり、日本の地位協定の異常さが明確となった。全国知事会も求めている地位協定の見直しを要求する。
日米貿易交渉は、日本側の一方的譲歩で終了となった。牛・豚肉、穀物などの農産物市場をTPP水準まで開放する。日本が求めていた自動車などの関税撤廃は拒否された。畜産物の低関税輸入枠の設定やトウモロコシの大量購入などTPP水準を超えるものもある。日本の農畜産業にとっては、TPPに加えて大打撃である。
日米共同声明では「サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題についても交渉を開始する」と明記された。日米貿易交渉について安倍政権は「物品貿易協定(TAG)」とごまかしてきたが、「自由貿易協定(FTA)」であることが明確となった。医薬品、医療機器などにも及ぶことが予想される。
不公平な協定発効は見直すとともに、二国間の「自由貿易協定(FTA)」は断固拒否することを要求する。
2018年は大阪北部地震、西日本豪雨、関西を襲った台風21号、北海道胆振東部地震、2019年は九州北部豪雨、千葉県などに甚大な被害をもたらした台風15号、関東甲信越、東日本を襲った台風19号など豪雨、台風、地震、津波、火山噴火などの被害が続いている。東日本大震災被災地の東北3県(岩手、宮城、福島)では9年近くが経つ現在でも、いまだ避難生活を続けている人が5万人を超えている。
災害列島にふさわしい備えと対策を政府の責任で充実させることを要求する。被災者生活再建支援法では、住宅再建への支援は最大で300万円である。これはあまりにも低い額である。住居は生活再建の基盤である。支援額を500万円に引き上げるとともに、半壊、一部損壊、生業施設も対象にし、自治体との折半ではなく全額国庫負担にすべきである。災害被災者への医療費窓口負担減免については、被災者が被災前の生活を取り戻すまで、国の負担による窓口負担免除措置の復活・継続を求める。
老朽化した橋や道路の整備とともに、災害インフラの整備が求められている。公共事業の内容と財政配分を抜本的に見直す時である。
福島原発事故の避難者は、県外避難者だけで3万人を超えている(2019年9月現在)原発事故被害者がふるさとを取り戻せるよう除染など条件整備を進め、帰還を希望する人にそれを保障すると同時に、避難指示解除となっても「帰れない」「帰らない」選択をする人に対しては区域外避難者として切り捨てるのではなく、必要な補償を継続すべきである。
政府をあげて推進していた原発の海外輸出もすべてが頓挫した。原発がビジネスとして成り立たなくなったことは、経団連も認めている。原発は安全で安上がりという神話は、完全に破綻している。政府は、原発をベースロード電源とするエネルギー基本計画を直ちに見直し、原発ゼロ・自然エネルギー中心のエネルギー政策への転換を図るべきである。野党4党が共同で国会に提出している「原発ゼロ法案」の審議を開始することを求める。
保団連も取り組む「ヒバクシャ国際署名」が1000万人を超え(2019年9月末現在)、国連に提出された。
核兵器をめぐっては、トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約から脱退し、核軍拡競争の懸念が高まっている。一方、核兵器禁止条約の批准は1年間で14増え33か国・地域となった(2019年9月26日現在)。発効には、50か国・地域の批准が必要である。
被爆75年となる2020年4月には5年に1度の核不拡散条約(NPT)再検討会議が、ニューヨークで開かれる。アメリカの平和団体の提起で、原水禁世界大会も同地で開かれることになった。核不拡散条約(NPT)は米露英仏中の5大国のみに核兵器の保有を認める条約であるが、その第6条で核保有5大国を含めた締約国に「核軍縮交渉を行う義務」を課している。過去のNPT再検討会議では、核兵器の廃絶に向けて「枠組みを作る特別な努力(2010年)」などが確認されてきたが、核保有国はその実行に背を向けてきた。2020年の同検討会議は、核兵器禁止条約への国際的な支持を背景にして、核保有国に実行を迫る機会となる。
保団連として、「ヒバクシャ国際署名」をさらに広げるとともに、ニューヨークでの同検討会議と原水禁世界大会に代表を派遣する。唯一の被爆国として日本政府の核兵器禁止条約の批准を求める。
保団連結成50周年に向けた組織拡大では、医科開業医会員の組織率7割、歯科は6割をそれぞれ超えることを目標とした。2019年1月1日の到達は、医科が65.2%、歯科は目標を達成し61.8%となった。
保団連組織全体の到達点は上記のとおりであるが、協会・医会別にみると、医科で2割台が1協会、3割台が5協会、4割台が11協会・医会、歯科では1割台が1協会、2割台が2協会・医会、3割台が2協会、4割台が5協会・医会ある。すべての協会・医会が結成から30年以上を経過しているが、開業医会員の組織率ではばらつきがあるのが現状である。原因の1つは、すべての協会・医会が新規開業者への訪問活動を行っているが、開業後数年経った未入会員への働きかけは弱いことがある。とりわけ医科では、近年、新規開業者(世代交代を含む)の入会だけでは、死亡・廃院などによる退会者があり、開業医会員数が減少しているところもある。
こうした現状を改善するためには、新規開業以外の未入会員に計画的に訪問など働きかけをすることが必要である。しかし、組織率の低い協会・医会は事務局員の人数が少ないところが多く、日常活動に追われて未入会員訪問に時間が割けない現状もある。この間、愛媛協会が他協会の援助も受けて一定地域を決めた集中訪問を166件行い、7人の入会者を得るという経験があった。開業医会員の組織率向上のために、組織対策費を増額し保団連事務局だけでなくブロック内の援助なども含めて集中的な宣伝・訪問活動を計画する。
また、事務局3人以下の協会に対しては、事務局員の増員だけでなく日常業務軽減のための援助を検討する。
会員拡大の数値目標としては、2024年に向けて「医科開業医」の入会者数・年間1,700人(4年間で6,800人)、実増数・年間50人(4年間で200人)、「歯科開業医」の入会者数・年間1,500人(4年間で6,000人)、実増数・年間280人(4年間で1,120人)、「医科勤務医」入会者数・年間750人(4年間で3,000人)、実増数・年間40人(4年間で160人)、「歯科勤務医」入会者数・年間800人(4年間で3,200人)、実増数・年間300人(4年間で1,200人)をめざす。女性については、医科開設者数比11.0%、総医師数比21.1%、歯科開設者数比9.1%、総歯科医師数比23.3%(2016年医師、歯科医師、薬剤師調査)をめざして拡大に取り組む。
会員拡大を進めるためには、訪問活動ともに協会そのものを魅力ある組織とすることが欠かせない。 女性医師・勤務医を対象とした企画、会員の関心にかみ合った各種研修会、職員接遇講座、文化企画、35協会・医会が取り扱う大阪協同組合のM&D(共同購入)など、会員多彩な要求に応える活動を各協会で検討し広げていく。
共済制度も協会を魅力ある組織とするための重要な要素の一つである。保団連の保険医年金、休業保障制度は、約50年にわたりその時々の経済・社会情勢の中でも工夫して、安定的な運営を維持してきた。保険医年金は予定利率を保険会社が最低保証する制度であり、休業保障制度は安価な掛金で長期の休業に対応する制度として、多忙な保険医が日常診療に専念できるような制度をという会員の要求に応えて作られ、運営してきたものである。
近年、会員の年齢構成の高齢化とともに若年層の共済加入の割合が大幅に低下している。制度の維持・発展のためには、会員拡大ともに共済加入率を引き上げることが重要である。会員はもちろん、未入会員全体に普及対象を広げ、組織部と連携して普及活動を進める。
会員の大幅実増が厳しい情勢の下で、協会・医会財政の中長期的安定のための対策が求められている。保団連の各協会・医会財政アンケートでも、財政状況が悪化傾向の協会・医会が増えている。10月からの消費税10%の影響も軽視できない。
将来の財政見通しもふまえて、長期にわたって会費改定を実施していない協会・医会では、会費引き上げも検討課題となる。この間、会費引き上げを行った協会では、会費引き上げによる退会者はほとんど出ていない。
協会結成当時の第1世代の事務局員はほとんどリタイアし、現在は第2世代のリタイアが進行中である。こうしたもとで、事務局活動の継承が課題となっている。
保団連は、事務局員に求められる能力について@実務能力、A理論政策能力、B組織能力の3つをあげ、これらを総合して「政治的実務能力」と位置付けてきた。事務局員の世代交代が進む中で、政治的実務能力をいかに継承していくかが求められている。
第1は、保団連の制度学習会(新人研修会、全国事務局学習会、幹部学習会)の活用である。制度学習会は講義を聴くだけでなく、他協会の事務局との交流の機会としても重要である。保団連は事務局員の役割について、執行部を補佐し協会運営を実務的に保障するとともに、国民医療や社会保障改善の担い手としての自覚を持って業務に携わることを提起してきた。こうした事務局の役割について、他協会の経験も交えて考える機会を定期的に事務局員に与えることを役員会としても位置付ける。同時に、魅力ある学習会となるよう企画内容の工夫を行う。
第2は、協会・医会、ブロックなどでの学習の機会を設けることである。テーマ、講師を決めて定期的に学習会を開催している協会やブロック内での交流もかねて年1回程度ブロック事務局研修会を企画しているところもある。こうした事例を広げるとともに、リタイアする事務局員はこれまで培ったノウハウを後輩に継承することに努力する。
保団連は、今春の統一地方選挙、夏の参議院選挙を安倍内閣による消費税増税や社会保障抑制政策に審判を下し、今後の負担増計画や消費税増税にストップをかける機会となるよう取り組みを進めた。各協会・医会、保団連では、政党(会派)・候補者アンケートや政策要望の発表、機関紙での宣伝などに旺盛に取り組んだ。毎月の国会行動では、2018年から取り組んだ「みんなでストップ患者負担増」請願署名やクイズチラシに寄せられた声をもとに、地元国会議員への要請を行うとともに、保団連として国会議員との懇談会を開催した。また、2019年6月4日(国民)、6月10日(立憲)、6月13日(共産)、6月17日(社民)に野党各党に対して懇談・要請を行なった。
保団連が作成した「選挙の争点リーフ」は、新聞折込も含め6月末日現在で39協会28万8,770部が活用され、「わたしが変える 1票からはじまる」院内掲示ポスターは、全国保険医新聞5月25日号、6月15日号、7月5日号に掲載し、政党アンケートとの結果の会員への情報提供等も取り組んできた。この他、新聞やホームページ(特設ページの開設:宣伝物、解説・学習資料、TwitterやFacebookでシェアできる「キャラクターワッペン」のアップ、拡散)での政策宣伝に取り組んだ。
保団連は、2018年3月30日(経税部長談話)、7月31日(経税部長談話)10月10日(会長声明)、2019年1月20日(会長声明)、9月9日(理事会声明)と、この間に消費税10%の中止を求める談話・声明を発表した。
2018年5月から医療への「ゼロ税率」適用と消費税10%への引き上げ中止を求める会員署名に取り組み、8月2日には日医と、9月12日には日歯と懇談を行い、消費税増税阻止と損税の抜本解決を目指すためには「ゼロ税率」が必要であると訴え、各党にも要請を行った。会員署名の取り組みの後には、消費税10%の中止を求め、43 協会・医会で「2019年10月からの消費税10%中止を求める請願」署名が取り組まれ、リーフレット「名探偵イツでもん消費税増税の真相を解明せよ!」も活用した。2019年7月17日には、消費税増税が重要な争点となる参院選期間中に「プレミアム商品券」事業への協力依頼を行なうことは選挙の公平性の点から看過できないとして中央選挙管理委員会に申し入れを行なった。
保団連は、「10月消費税増税10%ストップ!ネットワーク(10%ストップ!ネット)」の対外的窓口となり、会内外へのさらなる広報・宣伝を行った。全国各地では、「10%ストップ!ネット」の地域ネットが立ち上げられた(24道府県他、市区町村・地域)。秋田、山形、神奈川、新潟、滋賀、兵庫の地域ネットでは保険医協会・医会の役員が呼びかけ人に名を連ねている。
請願署名は、3月20日(「10%ストップ!ネット」集会)、6月12日(国会内集会)9月12日(国会内集会)の各集会時で、合計108万6001筆を提出した。この他、「10%ストップ!ネット」では、5月24日に集会、6月24日に該当宣伝、8月1日〜2日に衆議院予算委員会の全委員と参院選で増税に反対した野党各党に緊急要請、8月2日全国各地で地元選出議員に働きかけようとのアピールを発表する等した。
前回大会以降では、「骨太方針2018」の策定、特に経済・財政一体改革の新たな計画に向けての議論が経済財政諮問会議で開始される情勢下で、「患者負担増を具体化させない=法案化させない」運動に取り組んだ。その前段の3月〜4月では、各地の新点数検討会での決議採択等の取り組み、「医療費負担の謎を考える」リーフレット・ユーチューブ動画を活用し、診療報酬改善や患者窓口負担軽減に係る取り組みを行った。
2018年9月から実施の「クイズで考える私たちの医療2018」(クイズはがき)と患者署名は、全ての協会で取り組まれ、「患者署名」は、177,217筆(前回178,638筆)、協力医療機関数は6,503となり、前回を上回った。協力医療機関が前回より大きく増えた要因は、待合室での取り組みの意義を訴えたことと院長自身の署名を呼びかけたことである。クイズハガキの応募数は79,944通となり、過去最高となった。安倍政権が患者負担増の具体的内容とスケジュールを示さず、マスコミも報道しない厳しい条件の中、署名用紙や提起の仕方の工夫が行われ、会員への働き掛けも重視した。
国保都道府県単位化について多くの協会でパブリックコメントを提出。また、社保協とも協力しながら、学習会や議会傍聴、自治体要請、マスコミ懇談会の開催などを実施。これらの取り組みは、国保料値上げを押しとどめる力となった。地域医療構想調整会議については、一般市民も含めた学習会、出前講座、シンポジウム、社保協とも協力しながらの情報収集やパブリックコメントの提出が行われている。
2018年2月7日、国会内で、「子ども医療全国ネット」主催で、「さらに広げよう 子ども医療費助成制度」国会内集会が開催された。全国から約170人が参加し、自民党を含む8人の国会議員も参加。1万6,000筆の署名を手渡した。集会では、中学卒業までの子ども医療費無料の国の制度創設と自治体が現物給付の医療費助成を行った場合のペナルティ(国保国庫補助金の削減)の完全廃止を求めるアピールを採択した。2019年2月5日には、すべての子どもが安心して医療が受けられる制度を求めて、国会内懇談会を開催。全国から約120人が参加し、衆・参国会議員9人が参加した。
2019年1月31日、「妊婦加算」が「凍結」された問題で、凍結前の2018年12月26日に国会議員へ要請書を提出し、麻酔や観血処置などを日常的に行う歯科にも適用すべき点数であること、背景には3割負担という窓口負担があることなどを指摘し、「妊産婦の医療費窓口負担について、少子化対策の観点から国の制度として無料化を検討すること」などを求めた。また、全国保険医新聞6月15日号で「診療報酬による評価が患者負担に跳ね返らないよう、妊婦さんの医療費助成が必要」と主張する日本産婦人科医会の谷川原真吾常務理事と齊藤副会長の記事を掲載した。
妊産婦窓口負担無料化を実現するために、9月には、保団連として国による制度創設を求めるとともに、各協会に自治体による助成制度の創設・拡充、意見書採択、アンケートの取り組みを依頼した。
2018年3月15日、医師の働き方を考える国会内集会が開催され、医師・歯科医師ら150人が参加し、医療現場の過酷な働き方の改善を訴えた。保団連として、労基法に基づく働き方の実現、必要医師数確保のための計画的な医師養成と診療報酬引き上げなどの要望を国会議員対して行い、後日に厚労大臣、医政局長に要望書を送付した。また、2月14日に「看護職員不足に対する保団連提言」を発表し、安倍首相宛に送付した。
2019年6月7日には、ドクターズ・デモンストレーション実行委員会や全国医師ユニオン、日本医労連などが厚労省に、医師の長時間労働解消のため大幅増員や診療報酬引き上げなどを要請した。
ワクチンギャップの解消、安定供給、経済的な負担なく接種できる環境整備を求める「ワクチンパレード」(2018/7/5、2019/10/10)に参加するとともに、インフルエンザワクチン不足や風疹患者拡大を受けたワクチン行政改善を求める要望書(2018/10/5、11/15、12/16)、被災地支援ボランティア等への公費による破傷風ワクチン接種の要望書(2019/3/11)の提出などに取り組んだ。また、地域医療交流集会(2019/11/24)では、シンポジウム「HPVワクチンをめぐる現状と課題」企画を実施し、活動交流を深めている。
2018年の年明け、米国のトランプ大統領が「TPP加盟諸国との再交渉を考える」と発言したことも受けて、保団連も参加する「TPPプラスを許さない!全国共同行動」は2月7日、「TPPプラス交渉をただす!院内集会」を開催し、関係省庁と政府交渉を実施した。また、4月23日にも院内集会を開催し、政府交渉を行なった。5月にはTPP11に反対する集会や行動が連日、国会前で実施された。7月4日には関連法案が成立したが、TPP11発効に反対する世論は、立場の違いを超えて広がっており、多くの協会で問題点の学習や署名などに取り組んだ。また、日欧EPAや日米FTA等に対する取り組みも進めた。
東京医大の女性受験生への減点が判明した直後の2018年8月5日に「いかなる理由があろうとも、性差別が行なわれることに厳重に抗議する」「医師数増など根本的な解決策をもって、男女とも医師として人間らしく働き続けられる環境整備を進めることを求める」とする理事会声明を発表した。その後、斉藤副会長は、2019年2月27日の国会内集会(「入試差別をなくそう!学生緊急アピール」)、9月6日の「医大入試シンポ」(東京医大等入試差別問題当事者と支援者の会主催)で、入試差別の背景にある性別役割分業や医師の過酷な働き方等を訴えた。
2019年の医学部入試では、昨年の女性受験生への差別またはその疑いがあるとされた4大学(東京医科大、順天堂大、北里大、聖マリアンナ医科大)で、女性の合格率が男性の合格率を上回った。一方、医学部全体でみると依然として、男性の合格率が女性の合格率を上回っている。文科省の調査によれば、大学学部の男女別の入学率(入学者/入学志願者)は医学部以外のすべての学部で女性の方が高くなっている(2018年)。医学部・医科大学の入試差別には大きな改善は見られず、医学界、医療界は相変わらず旧態依然の状況である。
国会開会中は毎月国会行動に取り組み、患者負担軽減と診療報酬引き上げを訴えるとともに、2018年では、保険で良い歯科医療(1/25)、子ども医療費助成制度(2/7)、TPPプラス(2/7)、ストップ患者負担増(2/15)、診療報酬改善(3/15、4/19)、医師の働き方改革(3/15)、診療報酬・患者負担・損税解消(5/24)、ゼロ税率適用(6/14)、患者負担増(11/15)、歯科技工問題懇談会、患者負担増署名提出(12/6)、2019年では、社会保障充実(3/28)、患者負担増軽減(4/25)、診療報酬改善・周知期間確保(5/16)、歯科決起集会(6/6)等の国会内集会を開催。併せて内閣府、厚労省、財務省等へ署名を提出、要請・交渉した。
また、ドクターズ・デモンストレーション(2018/10/27)や憲法・いのち・社会保障まもる国民集会(2018/10/11、2019/10/17)をはじめ、社保協や医団連、全中連、各界連、災対連及びその構成団体との共同の取り組み広げるとともに、医師会、歯科医師会、歯科技工士会、歯科衛生士会、看護協会、患者団体との懇談・要請にも取り組んできた。各協会でも、中央行動や院内集会への参加とともに、県内各団体と懇談・要請、政党・議員との懇談、自治体意見書採択などに旺盛に取り組んだ。
マスコミ対応として、各専門部からのプレスリリース(声明等)、マスコミへの取材協力、マスコミ報道への対応(記事への反論)などを行っている。また、毎月行われる国会行動での国会内集会は、全国紙等も含めて取材がきている。各協会・医会では、@学校歯科健診調査、A「クイズで考える私たちの医療」の患者さんの声、B金パラ問題などをマスコミに発信、テレビ放映や新聞掲載がなされた。
マスコミ懇談会では、2018年では、学校歯科治療調査等の結果、歯科技工所アンケート結果、働き方改革(6/7)、消費税損税問題、診療報酬改定の周知期間確保、働き方改革(10/18)、歯科診療報酬に係る会員アンケート結果、外来維持期リハビリの存続、ワクチン供給不足問題(12/13)、2019年では、受診抑制や治療中断といった患者の実態、大型連休の医療現場への影響、マイナンバーカードと健康保険証の「一体化」問題(3/28)、学校歯科治療調査の最終報告、超高薬価問題(キムリア)(6/27)、台風15号による被害状況、消費税増税の医療現場への影響、診療報酬改定に向けた保団連要求(一包化加算、在宅医療を含む)(9/19)をテーマに開催した。
さらにマスコミへの発信力を協会・医会も含めて高めていくために、保団連・マスコミ対策担当役員が参加し、「保団連・マスコミ対策会議」を開催した。
3月17日(歯科)と18日(医科)に新点数検討会を、4月21日には、第2次検討会(医科)を開催した。各地では、445会場(医科279会場、歯科166会場)で新点数検討会が開催され、8万3477人(前回比104.5%)が参加した。保団連、各地での新点数検討会では、医療運動対策を位置づけ、決議の採択、医療従事者署名、一言カードや動画の上映などが旺盛に取り組まれた。
改定に関わって、1月19日に医科・歯科ともに改定骨子案に対する意見書を、3月30日に「オンライン診療の適切な実施に係る指針」への懸念を意見書として厚労省に提出した。介護関連では、2月14日に介護報酬の大幅引き上げるなど求める意見書を提出した。
厚労省要請では、2月27日に地域包括診療料等の算定要件に「抗微生物薬適正使用の手引き」の遵守を追加しないよう求める要請を実施し、要件化を食い止める成果を得た。5月24日、8月30日、10月11日には、歯科診療報酬改定の不合理是正等を求める要請を実施した。各協会・ブロックにおいても要請行動が取り組まれた。
介護報酬関連では、1月25日に2018年4月以降で新規に介護報酬請求を開始する場合は紙媒体(書面)請求を認めない問題の是正を求める要請、1月26日に介護診療報酬の大幅引き上げ・改善を求めた談話を発表し、3月15日に告示・通知の早期発出等を厚労省等に要望した。
2019年10月改定での点数及び単位の変更について、全国保険医新聞6月5日号(介護)、8月25日号(医科、歯科)で周知した。
2019年6月30日の第3回代議員会で「2020年度診療報酬改定に向けた保団連要求」を取りまとめ、8月8日には、医科歯科それぞれで保団連要求にもとづく厚労省要請を実施した。先立つ2月21日には衆・参厚労関係国会議員に「診療報酬改定の周知期間確保を求める要請」を行った。
1月31日に2019年5月の大型連休に係り、休日加算の算定や入院料の「看護要員数と入院患者の比率」の要件変動の特例緩和、医療・看護・介護・保育・教育等の事業所の従業員に対する休日出勤手当分を国の責任で保障するよう対応を迫った。3月11日にも首相および厚生労働大臣に、再度の要請書を提出した。
2018年11月15日(大阪と共同)、2019年1月31日(京都と共同)、3月14日に要支援・要介護者への外来維持期リハビリテーションの廃止に反対する厚労省要請を実施した。
政府が2022年までにレセプト全体の9割程度をコンピュータチェックで完結させること、審査基準等の統一化や支払基金支部の統合等を進めるとしていることを受け、2018年2月8日に厚労省要請を実施。また、5月3日〜6日にコンピュータ審査に関する韓国視察を実施。7月の夏季セミナーで視察報告を行うとともに月刊保団連11月号にレポートを報告した。その間の6月以降に「審査事務の集約に向けた実証テスト」が宮城、大阪、福岡の府県で実施され、結果分析も不十分のままに計画が進められようとしていることを受け、2019年2月20日に強引な機能の集約化をしないように求める厚労省要請を実施した。
2019年1月16日に指導、監査等について改善を求め、厚労省要請を行った。要請では、この間に繰り返し要望している「指導は行政手続法の趣旨に則り行うこと」等を訴えた。要求の集約、各地の取り組み交流では、審査、指導、監査対策担当者会議(2018/11/18、2019/11/17)を開催した。
保団連は、適時調査の改善を求めてきたが2018年4月から「当日準備すべき書類」は1カ月前の適時調査の実施通知と同時に行われ、厚労省ホームページで、「適時調査実施要領」「事前提出書類」「当日準備書類」「重点的に調査を行う施設基準」等の資料が掲載されるようになった。
「保険で良い歯科医療を」全国連絡会が呼びかけた2017年の歯科国会請願署名に取り組みでは、31万4,020筆(保団連で約11万筆(38協会)、民医連で約21万筆)を集約し、国会議員に提出した。
2019年4月からは「保険でより良い歯科医療を求める」国会請願署名を推進している。署名注文が41協会・医会からあり、前回を上回る取り組みとなっている。「保険で良い歯科医療を」全国連絡会は、50万筆の署名を目標に取り組んでいる(7月24日現在で4万8,605筆(保団連2万4,321、民医連2万4,284))。
良い歯デー(4月18日)、イレバデー(10月8日)〜イイハデー(11月8日)の期間、全国各地で歯科市民集会や市民のつどい、歯のなんでも相談や歯の供養祭、入れ歯無料ネーム入れ、無料歯科相談会、市民講座など、創意あふれる取り組みを行い、市民に歯の大切さとともに、保険で良い歯科医療の実現をアピールしてきた。2019年のイレバデーからイイハデーでも多彩な企画が取り組まれる予定で準備が進められている。
保団連では、「歯科技工所アンケート」結果をふまえ、パンフレット「日本の歯科技工を守ろう」を2018年1月31日付けで発行。その後の2019年では、全国保険医新聞で「歯科技工料問題解決のために」をテーマに計6回の連載を行い、6月30日の第3回代議員会では、「歯科技工料問題に対する保団連の要求」を取りまとめた。この過程で保団連では、厚労省要請、国会行動での議員要請を実施するなどし、各協会、各ブロックにおいても厚労省要請、県技工士会や技工士学校等との懇談、記者会見が実施される等、旺盛に取り組みが推進された。また、「保険で良い歯科医療を」全国連絡会においても厚労省・内閣府要請を行なった。
こうしたマスコミや国会でも取り上げられ、厚労省も「歯科技工士の要請・確保に関する検討会」の設置、厚労科学研究での委託調査の実施等、対応が検討されるようになった。
2018年8月以降に歯科衛生士養成学校の学生を対象に、「歯科衛生士養成学校生就労意識調査」を実施。その後、調査結果をとりまとめ、全国保険医新聞に結果を掲載する等した。2019年5月10日には調査結果を反映させた「歯科衛生士の就労改善のための要望書」をとりまとめ、診療報酬上の評価や政府主導の奨学金制度の創設等を求めて厚労省要請を実施した。
2017年5月から各協会・医会協力のもと全国調査を開始し、2019年7月の最終報告時には24都府県で同調査が実施され、小学校、中学校、高校、特別支援学校における歯科健診後の未受診の状況や口腔崩壊の児童の存在が明らかにされた。この間の各地の取り組みは全国紙・地方紙、テレビで報道され、市教育委員会から協会への資料照会、県議会での予算審議内で取り上げられたり、小中学校の養護教諭との懇談が実現したりする等、取り組みが広がった。2019年5月10日には、同調査をもとに学校歯科検診後の未受診の児童・生徒に係る問題の改善を求め、厚労省・文科省に要請を行なった。また、6月11日の参院内閣委員会ではこうした問題の解決に係る審議がされる等した。
保団連は、診療報酬の改善を含め保険適用の拡大にあたって必要な条件整備等について議論を進めながら、子どもの健康・発達を願うお母さんの思いに応える方向で取り組みを進めてきた。この間に4協会では、「保険適用拡大を願う会」が呼びかけた署名(全体で6万5000筆)に取り組んだ。
2018年10月28日に第16回歯科全国交流集会を開催し、歯科医師を中心に40協会・医会から121人が参加。歯科技工問題と歯科衛生士問題、施設基準の評価を柱に討論し、経済的理由による受診中断や歯科医院経営困難解決のために、窓口負担軽減と歯科医療費の総枠拡大を求める決議を採択した。
2019年6月6日に歯科医療費の総枠拡大と患者負担軽減等を医療従事者と患者・国民の共通要求として、「保険で良い歯科医療を求める」全国連絡会主催の6.6歯科総決起集会が開催され、350人(保険医協会からは約200人)が参加した。集会には、14人の衆参国会議員(自民、立憲、国民、共産、無所属)が参加し、日歯をはじめ、24医療関係団体等からメッセージが寄せられた。集会では、共通要求の内容をアピールとして採択。集会後には、内閣府要請を実施。なお、当日は、議員本人72人を含む503人の国会議員室へ歯科医療改善を要請した。
第32回日本高齢者大会in熱海(2018/9/26)、第33回日本高齢者大会in福島(2019/9/26)では、歯科分科会の運営を担当し、歯科医療の重要性を解説する他、連絡会や患者署名等の取り組みへの協力を訴えた。
歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格高騰で歯科医療機関の経営が逼迫している問題に対して、2019年3月27日、社保・審査対策部歯科部長名で「歯科用貴金属の価格高騰に対する緊急対応を求める要望書」を厚労省に提出し、4月25日には国会行動と併せて、要請書を作成して国会議員要請も行なった。8月8日では保団連要求の内容をもとに厚労省要請を実施した。この間では、各協会、各ブロックにおいて、要請や協会紙での情報提供、抗議声明の発表等の取り組みが進められた。
地域医療における糖尿病と歯周病の関係での、医科歯科連携するツールとして2013年に千葉県保険医協会が発行した「糖尿病・歯周病医科歯科連携手帳」を保団連版として改版して普及することとした。2018年9月に発行し、初版は5万部。2019年9月末現在で40協会に約4万部普及した。
2018年5月12日に「保険で良い歯科医療を」京都連絡会が結成され、7月16日に「保険でより良い歯科医療を」三重連絡会が結成、9月に山梨県の「保険適用拡大を願う会」が全国連絡会に加盟した。 2019年10月には、「保険でより良い歯科医療を」宮城の会が結成され、各県連絡会は11団体となった。
また、全国連絡会では7月の参議院に向けて歯科医療政策アンケートを実施し、結果を全国保険医新聞に掲載し、政党懇談も実施した。
2018年1月17日、阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議(復興県民会議)主催の「阪神・淡路大震災23年メモリアル集会」が神戸市内で開催され、全国から248人が参加した(阪神・淡路大震災24年メモリアル集会は2019/1/17開催)。5月9日は、保団連も参加する全国災対連が岩手、宮城、福島などの被災者支援組織とともに「国は被災者の生活と生業の再建に責任を持て!」国会行動、政府交渉を実施した。6月18日の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、台風21号による災害、9月6日の北海道胆振東部地震では、被災会員へのお見舞い金支給や「保険医のための災害対策必携」の無料送付及び被害の大きな協会への事務局派遣等に取り組むとともに、被災者の医療確保を求めて要望書(7/12、9/6、9/19)を提出した。
「災害被災者と災害支援対策改善を求める全国連絡会」(全国災対連)は、2019年5月29日に東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨の被災者、被災地の実情を踏まえた要望の実現を求めて、内閣府、復興庁、厚労省、国土交通省に要請を行った。8月28日には、全国知事会と懇談し、被災者生活再建支援制度の拡充と安定について意見交換した。
岩手協会は第9回「東日本大震災被災者医療費窓口負担アンケート」を発表(6/26)。東日本大震災で被災し、通院している方を対象に4月〜6月にかけ実施し、記者発表した。
2019年9月9日未明に千葉県に上陸した台風15号の影響により、千葉県南部を中心に広範囲にわたり長期的な停電、断水被害を受けた。千葉協会には553件の被害報告が寄せられた。千葉協会では、個別訪問の上、損壊状況等を含めた状況把握を進めた。関東ブロック各協会の協力も得ながら、被災会員を再度訪問して災害見舞金と届けた。また、「台風15号、九州北部豪雨被害救援募金」を呼びかけた。
その後、10月12日に台風19号が上陸し、東海、関東北信越、東北に広範囲かつ甚大な被害をもたらした。この被害も含めて、救援活動に取り組んだ。被災者の医療費、介護保険の負担免除を政府に求め、実現した。
2018年3月4日、原発をなくす全国連絡会が主催した「原発ゼロの未来へ ふくしまとともに」が東京で開催され、3,000人が集まり、各協会役員等29名が参加。また、原発ゼロを目指す全国的な取り組みを受けて、3月9日には野党共同で「原発ゼロ基本法案」が国会に上程され、6月28日には、「原発ゼロ基本法の制定をめざす市民のつどい」が開催された。また、8月1日にモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の継続配置を求める要請書を原子力規制委員会委員長宛に提出した。
2019年3月9日、原発をなくす全国連絡会主催の「福島を忘れない3.9全国集会〜市民と野党の共同で原発ゼロへ」が開催された。集会には約1,300人が参加、協会・保団連からは、14協会の役員・事務局40人が参加した。「福島を忘れない、市民と野党の共同で原発ゼロへ」とのアピールを採択し、パレードを行った。3月11日には、池袋駅前で原発ゼロを市民に呼びかける街頭宣伝(イレブン行動)が開催された。6月7日では、昨年に野党共同で国会提出した「原発ゼロ基本法案」の早期国会審議入りを求める市民と議員による院内集会が開催され、早期審議入りを求める緊急団体署名も取り組みを進めている(全国から3,039団体6/18現在)。原発問題学習交流集会(2018/4/22、2019/4/14)では学習と意見交換も行った。
5.3憲法集会(2018、2019)、辺野古新基地建設現場など視察(2018/2/11・12)、核政策で外務省に抗議声明(2/13)、辺野古新基地建設反対の沖縄県民に連帯し、県民投票の成功を会長声明(2019/2/12)、沖縄協会の要請に答えた沖縄県民投票への取り組み(募金と人的支援)、沖縄県民投票結果を受けた新基地建設撤回等を求める会長声明(2/26)、INF全廃条約の失効に関する非核平和部長声明(3/15)、「戦争と医の倫理」パネル展・シンポジウムの開催(4/2〜7)、「9条の会・医療者の会」主催の国会内集会(5/16)、安倍9条改憲反対等を求める「6.19国会議員会館前集会」、「反核医師の会」でアメリカ未臨界核実験への抗議談話(6/4)と全国大会の開催(6/9)、「反核医師のつどい」開催(第29回in長崎2018/11/3・4、第30回in京都2019/9/14・15)等に取り組んできた。
また、「ヒバクシャ国際署名」は、31協会1,033医療機関25,677筆(10/2現在)に到達し、署名付きリーフの作成と活用もした。「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」(3,000万人署名)は、2019年4月に取り組み推進の新宣伝物(ポスター、リーフ、ステッカー、バッジ)も作成し、33協会1,726医療機関41,471筆(2019現在9月理事会)の到達点である。
「なくそう公害、まもろう地球環境、すべての被害者救済」などを求めて、第44回全国公害被害者総行動(2019/6/5・6)が開催され、公害被害者など92団体、約2000人が参加し、各省庁交渉、デモ行進、総決起集会などに取り組んだ(第43回全国公害被害者総行動は2018/6/6・7)。
この他、公害視察会として、沖縄基地問題(2018/11/24・25)、リニア問題(2019/10/26・27)をテーマに取り組んだ。
第48回定期大会で禁煙宣言をつくり、社会的な活動を行ってほしいとの要望を受け、研究部で素案を検討し、4月理事会(2019/4/21)で「保団連禁煙宣言」を決定した。喫煙は依存性があり本人や周囲に健康被害をもたらすとし、医学的事実を踏まえ、喫煙により生じる病気の予防と治療のため、禁煙を推進する社会的環境を形成する10項目からなる。
保団連も参加する全国中小業者団体連絡会(全中連)は2019年1月22日、全国中小業者決起大会を開催。全国から1100人の中小事業者が参加し、省庁交渉や議員要請などを行った。保団連は、厚労、総務各省への要請に参加し、総務省交渉では主に住民税通知へのマイナンバー記載問題について、マイナンバー漏えいを招いた責任を改めて追及するとともに、行政事務にマイナンバーを活用することの中止を求めた。
また、雇用保険関係の各種届出・申請でハローワークが5月以降にマイナンバー記載等がない場合に書類を返戻するとのチラシを配布している問題について、4月12日に関係団体や税理士ら専門家とともに厚労省雇用保険課へヒアリングを実施した。ヒアリングでは本人事由によりマイナンバー届出不可の場合であれば受理するとの取り扱いを確認した。
第48回夏季セミナー(2018/7/7・8)では、基調提案「医療・社会保障と憲法を守る運動を一体で攻勢的に推進しよう」(三浦清春副会長)、記念講演「憲法9条改憲と日本の外交・安全保障」(東アジア共同体研究所所長の孫崎享氏)、シンポジウム「医師の働き方と政府の『働き方改革』」、5つの講座を企画し、48協会・医会から384人(医師113人、歯科医師118人、事務局145人、講師他8人)が参加した。
第49回夏季セミナー(2019/7/13・14)では、基調提案「安倍政治を終焉へ」(住江憲勇会長)、記念講演「安倍政権の下での憲法9条改憲をめぐる情勢と対抗の展望」(首都大学東京教授の木村草太氏)、シンポジウム「国が進める医療提供体制再編に対峙する〜地域医療構想、医師偏在対策」、5つの講座・分科会を企画し、43協会・医会から362人(医師106人、歯科医師102人、事務局ほか154人)が参加した。
第33回医療研究フォーラムを、沖縄県保険医協会を主務として、「健康・長寿への挑戦−平和で生きやすい21世紀をめざして−」をメインテーマに開催した(2018/11/23・24)。当日は、502人(医師161人、歯科医師133人、事務局72人、コメディカル・コデンタル104人、一般市民等25人、講師等7人)が参加した。
第34回医療研究フォーラムを、大阪府保険医協会、大阪府歯科保険医協会、大阪府保険医協同組合を主務として、「いま・過去・未来〜これからの医療をデザインする」をメインテーマに開催した(2019/10/13・14)。医師・歯科医師、コ・メディカル、市民ら816人が参加した。
2018年度は、保団連結成50周年(2019年1月)に向けた最終年度となることをふまえ、年間組織拡大目標を年間実増1,000人と設定して取り組み、同年12月1日現在で、1,541人の実増となり目標を達成した(歯科では実増、入会とも目標を達成し、歯科勤務医は実増目標の3倍に達した)。
目標を達成できた主な要因は、2018年度診療報酬・介護報酬同時改定に重点をおいた新点数説明会や施設基準の届出に係る研修会の開催、新点数関連の冊子の普及、保団連作成の「保険医協会の栞」と「勤務医のための保険医協会ガイド」、各協会独自作成の女性医師・歯科医師向けの入会案内や勤務医ニュースなど各種宣伝媒体の活用、全国で取り組まれた入会対象者の紹介活動、訪問活動などが挙げられる。この他、保団連は、勤務医交流会、若手医師・歯科医師のつどい、ドクターズ・デモンストレーション主催による働き方改革に関するシンポジウムへの参加・協力などに取り組んだ。各協会・医会では、医師、歯科医師の立場や幅広い年齢構成ごとの要求をふまえた医科・歯科連携研究会や市民健康フェスティバルへの医科・歯科、勤務医会員の参加協力の訴えなど様々な取り組みが行われ保険医協会・保険医会、保団連への関心を高め、参加を促し、結果として入会にも結びついている。
2019年度は、前述の活動を継承・発展させ2019年7月、2019年8月過去最高現勢を更新している(2019年8月1日現在、医科65,146人、歯科42,189人、合計107,335人)。
会員1,000人以下・事務局4人以下の小規模協会の事務局長を対象に、日常業務や組織拡大強化の活動における悩みや情報を共有できるよう、4月22日に懇談会を開催した。これは、2018 年12 月の組織部会で愛媛協会から出された会員拡大に関する要望、組織拡大強化に関する四国ブロックでの勉強会の検討、3月の近畿ブロック事務局長会議で和歌山協会より出された開催要望などを受けて開催したもの。
当日は栃木、山梨、福井、和歌山、滋賀、京都歯、兵庫、鳥取、徳島、香川、愛媛の各協会(兵庫協会は勤務医対象者名簿の作成など会員拡大の報告)から参加があった。
「勤務医ガイド(保団連版)」や協会独自の宣伝物を活用し、病院・医局等への訪問、施設基準講習会、共済制度の奨励など、各協会・医会で未入会者を含む勤務医に情報提供や会員拡大の取り組みを進めてきた。2019年6月2日に第11回勤務医交流会を福岡、福岡歯科、長崎協会の協力を得て開催(於、福岡県)。「医師の働き方改革」の問題を学習講演と討論のテーマとして取り上げた。参加は、18協会・医会から70人であった。
2018年9月23〜24日に「若手医師・歯科医師のつどいin滋賀」を開催。全国21協会・医会から50人参加した(若手医師・歯科医師のつどいin沖縄は2019/11/3・4)。
保団連理事会構成役員の中での女性の比率は5%である。協会役員全体に占める比率は8%である。医師、歯科医師総数のうち女性の占める割合は約2割である。
女性役員を増やすために、制度的な枠組みの保障を含めて検討を行った。
上記の記載に加えて、病院・有床診セミナー、研究・学術活動交流会等、各専門部で主催される全国的な学習会、交流会、各協会・医会、各ブロックで開催される企画等を通じて、多彩な会員の要求実現を進める取り組みが実践された。