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※全国保険医団体連合会では、下記の談話を総理、衆参国会議員及びマスコミ各社などに送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:179KB])。

【談話】消費税増税の上に、医療・介護の負担増か
〜全世代型社会保障検討会議「中間報告」などについて〜

2019年12月24日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 政府の全世代型社会保障検討会議は12月19日、全世代型社会保障改革における現時点での検討成果を整理した「中間報告」を取りまとめた。中間報告では、75歳以上の窓口負担への2割負担導入、紹介状なしの大病院の受診時定額負担の大幅な拡大などが明記された。

 75歳以上の窓口負担について、財務省が主張した「原則2割化」には、保険医協会はじめ医療団体の反対の声や与党内からも慎重な対応を求める声などもあり、「一定所得以上」での2割負担導入の記載に止められる形となった。しかし、高齢者の窓口負担の引き上げは、収入の大半を低い公的年金に頼る一方で、複数の疾病を抱え、治療も長期に及ぶ高齢者の疾病特性や生活実態を無視したものであり、到底認められるものではない。
 別途、介護保険部会では、介護保険サービスの利用料負担増の議論も進められている。消費税増税も追い討ちをかける中、高齢者の医療・介護負担増は、高齢者の命と健康に深刻な影響を及ぼすとともに、親の介護などを担う現役世代も直撃し、ダブルケアも増える中、家族の共倒れにもなりかねない。
改めて、本会は75歳以上の窓口負担引き上げ、介護利用料の負担増に強く反対するものである。

 外来受診時定額負担については、病院・診療所での外来機能の明確化、かかりつけ医機能の強化などについて検討を進め、7割給付を維持する「健保法附則第2条」を堅持しつつ、外来機能の分化などを推進するとして、まずは現行の紹介状なしの大病院の受診時定額負担について、負担額を引き上げた上、増額分は公的医療保険財政に繰り入れる形に改めるとともに、対象を200床以上の一般病院にまで広げるとしている。しかし、既に病院の受診に際して事実上3割を超える窓口負担を更に増やすことは、同附則第2条に違反した状態を拡大するものと言わざるをえない。一般病院の3割近くが検討対象となり、医療アクセスへの大幅な制限とともに、地域に密着して一般外来を行う病院も少なくない中、減収に伴う病院経営の更なる悪化や、それ以外の医療機関への外来患者の過度な集中など、地域医療を根底から崩壊させかねない。
 なお、市販されている薬の保険外しや現役並み所得者の所得基準の引き下げなどは、今回は記載されなかったものの、「骨太の方針2020」や「最終報告」では盛り込まれる可能性もあり、予断を許さない。

 70歳までの就業機会確保では、定年延長・廃止など安心して働ける措置の確保は保障されておらず、労働条件を切り下げやすい継続雇用・再就職先確保や業務委託契約が示されているにすぎない。兼業・副業の拡大やフリーランス選択の環境整備などが示されているが、ダブルワークによる低賃金・長時間労働、労災・過労死の増加や最低賃金・健診はじめ労働法制の保護を受けない働き方が広がり、雇用環境全体が劣悪化し、働く者の心身が損なわれていく危険があり、医療者として看過しえない。

 患者・国民の命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、75歳以上の窓口負担引き上げ、大病院の受診時定額負担の拡大などに反対し、引き続き、医療・介護負担増の阻止に向けて運動を強めるものである。

以上