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※新型コロナウイルスによる肺炎について政府は、1月28日に感染症法に基づく「指定感染症」と、検疫法による「検疫感染症」にすることを閣議決定しました。
しかし、オリンピック・パラリンピックを前に、他の感染症も含めた感染症対策の早急な強化が求められています。このため、全国保険医団体連合会では、下記の要望書を総理、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:157KB])。

なお、新型コロナウイルスに関する情報・留意点は、下記を参照ください。
厚生労働省(新型コロナウイルスに関するQA)
国立感染症研究所
東京都感染症情報センター
群馬県ホームページ
保健所一覧




【要望書】新型コロナウイルスをはじめとした
感染症対策の抜本的強化を求める要求

2020年1月29日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 前略
 国民の医療と健康確保に対する貴台のご尽力に敬意を表します。
 さて、1月15日に日本国内においても、中国・武漢市に滞在歴がある肺炎患者から新型コロナウイルスが検出され、1月28日までに、武漢市への渡航歴がない方も含む7人の感染者が確認されています。
 こうした事態の中で政府は、1月28日に新型コロナウイルスによる肺炎について感染症法に基づく「指定感染症」と、検疫法による「検疫感染症」にすることを閣議決定しましたが、オリンピック・パラリンピックを前に、他の感染症も含めた対策の抜本的強化が求められています。
 特に、2009年に発生した新型インフルエンザでは、公的医療保険制度が脆弱な国で感染が大きく広がり、国内でも国保資格証明書の取り扱いについては特別な対応が行われたところです。新型コロナウイルスのワクチンはまだ開発されておらず、重要なことは罹患の疑いがある場合に、必要な医療が受けられるようにすることです。
 そのためには、国保資格証明書の交付を止め、高すぎる国保や後期高齢者医療の保険料を軽減して無保険者をなくすこと、窓口負担の引き下げを行うことが、感染症対策として、最も重要であると考えます。現在検討されている窓口負担の拡大などは絶対に行うべきではありません。
 また、1996年に845箇所あった保健所は、2019年4月には472箇所にまで削減されています。感染症対策は、保健所の役割の大きな柱であり、保健所の増設をはじめとした保健所機能の強化が求められています。
 さらに、公立・公的病院の再編・統合が進められていますが、公的・公立病院は感染症対策の強化にとって必要・不可欠であり、公立・公的病院の再編・統合は行うべきではありません。
 なお、新型コロナウイルスに罹患した患者が一般医療機関を受診する可能性も想定されます。
 こうしたことから、早急に次の対策を取られるよう、要望します。

国内の検疫体制を抜本的に強化すること。
感染症対策の基本は、感染者を潜伏させないことにある。従って、新型コロナウイルスの感染の疑いに限らず、国保資格証明書による受診であっても、通常の国保証と同様に現物給付とすること。また、国保資格証明書の交付をやめ、通常の国保証をすべての加入者に届けること。患者負担増計画を止め、窓口負担の引き下げを行うこと。
新型コロナウイルスワクチンの開発・生産を早急に行うこと。医療担当者等へのワクチン接種を無償で行うこと。
新型コロナウイルス検査キットの開発・生産を早急に行うこと。
発熱外来を設置する自治体及び医療機関への財政支援を行うこと。
新型コロナウイルスの疑いのある患者が、一般医療機関を受診する可能性あることを考慮し、下記の対策を行うこと。
(1) 発熱(概ね37.5度以上)かつ呼吸器症状(せき等)のある方であって、「中国・武漢市への渡航歴がある方」又は「中国・武漢市へ渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人」との接触歴がある方は、最寄りの保健所に連絡した上で、保健所の指示に従って受診することを周知・徹底すること。
(2) 国内において人から人への感染が増加する状況となった場合には、下記の対策を行うこと。
@ 新型コロナウイルス感染の疑いのある患者を、他の患者と分離して診察を受けられるようにするために、プレハブの設置、スペースの確保、夜間・休日診察を行う場合への財政支援を行うこと。
A 一般医療機関に対して、マスク、ゴーグル、ガウン等を無償で配布すること。抗ウイルス薬や必要な医薬品・材料が、一般医療機関にも行き渡るよう、必要に応じ、政府備蓄分や自治体備蓄分の放出を行うこと。
B 医療従事者の出勤確保のため、保育所や幼稚園、小学校等の一斉休校に対応して独自に医療機関で保育体制を整備した場合の経済的保障を行うこと。
(3) 発熱外来における診療に協力したことにより医療従事者が新型コロナウイルスに罹患した場合は、公務災害を適用すること。新型コロナウイルス感染患者を診察したことにより、休診せざるを得なくなった場合の休業補償等を行うこと。
不確かな情報の流布やパニックの助長を防ぐため、国民、マスコミ、医療機関等への情報提供にあたっては、懇切・丁寧に行うこと。
新型コロナウイルスに限らず、感染症対策を強化する点からも、下記の点を実施すること。
(1) 必要なワクチンが自己負担なく受けられるよう、国が財政援助を行うこと。
(2) 保健所数を増やし、機能を強化すること。
(3) 公立・公的病院の再編・統合計画を中止し、民間病院も含め、強制的な病床削減を行わないこと。
(4) 一般医療機関において感染症対策を強化できるよう、診療報酬を引き上げること。

以上