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※全国保険医団体連合会では、下記の要請書をマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:210KB])。

【声明】原爆症認定訴訟の最高裁判決に対し抗議し、
国の責任を果たすよう求める

2020年3月9日
全国保険医団体連合会
非核平和部長 永瀬 勉

 

 最高裁判所は、2月25日、広島、長崎で被爆し、原爆症の認定を求めていた原告3人に対して、原告の訴えを退け、認定申請を却下し、国の主張を支持する判決を下した。

 被爆者援護法に基づく原爆症認定には、@原爆の放射線で病気になったこと(放射線起因性)、A現在医療が必要な状態にあること(要医療性)の条件を満たす必要がある。原告3人は、各高裁の判断で、「放射線起因性」は認められていたが、「要医療性」の判断において、分かれていた。
 広島高裁は白内障の原告、名古屋高裁では慢性甲状腺炎の原告の訴えを認め「要経過観察も治療の一環として」原爆症の認定を行った。一方、福岡高裁では白内障の原告については「経過観察にとどまる場合は要医療性を認めない」として認定を拒否する判断をしていた。
 今回の最高裁判決は、広島高裁、名古屋高裁の各判決を破棄、福岡高裁の判決を支持し、全面的に国の主張を認め、被爆者の原爆症認定に背を向ける判決となった。

 経過観察を理由に「要医療性」を認めないとする国の姿勢は、原爆症認定の抑制のための運用に過ぎない。医師にとって症状を継続的に把握し、手術の必要性を含め経過観察は重要な医療行為であることは常識だ。特に放射線の影響は、まだほとんど未解明と言ってよく、経過を観察することは不可欠である。積極的な治療の有無を問わず「要医療性」が認められるのは当然であり、原爆症を認定すべきである。

 そもそも原爆症認定は、被爆者に対する国の責任を果たすために制定されたものである。被爆によって病気が引き起こされているにもかかわらず、「要医療性」の判断によって認定・更新がされなくなることがあってはならない。

 本来、最高裁は「人権の砦」であるべきだ。にもかかわらず、行政に追随し、人道と被爆者援護に背を向ける判決を下したことは、到底容認できない。

 私たち国民の命と健康を守る医師・歯科医師は、75年間、様々な健康被害に苦しまれてきた被爆者の方々の声を聞かず、寄り添わない非人道的な最高裁の判決に強く抗議するとともに、被爆者に対する国の責任を果たすよう求めるものである。

以上