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※全国保険医団体連合会では、下記の声明を厚生労働大臣、全国会議員及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:185KB]

【声明】介護保険法など地域共生社会関連法案の
衆議院委員会採決に抗議する

2020年5月26日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」が5月22日の衆議院厚生労働委員会において、自民党、公明党、維新の会の賛成多数で可決された。
 近年、改定法案の多くを一本に束ね、各論点について十分な議論を尽くさずに短時間で成立させるやり方が常態化している。本法案も、委員会審議はわずか3日間である上、新型コロナウイルス感染対策や検察庁法改定案に関わる問題に審議時間の多くが割かれており、法案の審議は極めて不十分と言わざるを得ない。本法案の委員会採決に抗議するとともに、今後徹底審議の上、廃案にするよう求めるものである。

 今回の法案には、医療では、2021年3月に開始するマイナンバーカードの保険証利用を進めるため、支払基金の業務に医療機関にマイナンバーカードを読み取る顔認証付きカードリーダーを調達・配布する業務を加えることが盛り込まれている。マイナンバーカードを医療機関内に持ち込むことはカード紛失や番号漏洩など危険が多い。オンライン資格確認は保険証でも可能となる以上、マイナンバーカードの保険証利用は不要である。支払基金の業務にカードリーダー調達・配布等を位置付けることはやめるべきである。

 法案審議で焦点となった介護福祉士養成施設を卒業すれば国家試験不合格でも介護福祉士の資格を付与する経過措置の期間延長(今回5年間)は、全ての者に国家試験合格を義務付けた2007年制度改正以降4度目の延長であり、事実上四半世紀にも及ぶ経過措置となる。
 政府は、介護現場で人出不足が深刻化する下、介護福祉士養成施設の数・定員・入学生が減少する中、養成施設において急増する外国人留学生の合格率が低いことや外国人労働者の確保などを措置延長の理由に挙げるが、介護専門職・国家資格の軽視にはかわりない。社会保障審議会福祉部会でも延長に反対する意見が圧倒的多数を占めている。努力を重ね合格率を高めてきた福祉系高等学校の校長会からは「このままでは国家資格としての評価を確立することができず、さらなる延長は介護福祉士資格への不信感を助長し、将来、介護を目指す者の減少に拍車をかけることにつながります」(全国福祉高等学校長会副理事長「意見書」、2019年12月16日)と厳しい指摘が出ている。
 そもそも、介護現場の人手不足は、基本報酬等を抑制・削減し一般労働者よりも月10万円以上も賃金が低い劣悪な労働環境を強いてきた政府の施策にこそ原因がある。政府は、基本報酬等の抜本的な引上げ・改善を早急に行い人材確保に努めるとともに、延長措置は解消し、介護福祉士の社会的評価を確保して、質が高い介護サービスを保障すべきである。

 また、今回の法案には規定されていないが、政省令改正により、低所得者が介護保険施設を利用する際の食事・居住費の助成措置(補足給付)で月2万2千円の利用料引き上げや、高額介護サービス費について月4万4千円の上限基準(年収383万円以上)の収入段階に応じた2〜3倍への引き上げなどが、21年8月より予定されている。新型コロナウイルス感染拡大により、事業者の経営危機、利用者のサービス手控えや生活困難などが深刻化している。現在の状況は長期化も予想されており、これら利用者負担増は撤回すべきである。介護保険部会で審議された昨年末の状況とは情勢が激変しており、少なくとも同部会に差し戻し白紙から検討し直すことが必要である。

以上