※全国保険医団体連合会では、下記の声明を全国会議員及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:131KB])
【声明】新型コロナウイルス対策に
ジェンダー平等視点からの見直しを求める
2020年5月27日
全国保険医団体連合会
女性部
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、社会の歪みが様々なかたちで噴出しており、とりわけ女性に対して非常に大きな影響を与えている。
多くの働く女性は、同時に家事・育児・介護の大部分を担ってきたため、学校や保育園の休校・休園、介護サービスの休業や外出自粛要請によってすぐさま勤務が困難になった。
女性医師は平時でさえ家事労働との二重負担に耐えるか、仕事を制限して肩身の狭い思いをしながら働き、一方で男性や単身女性は過酷な働き方を強いられてきたが、コロナ禍でさらに激化した。医療機関では看護師や一般職も含め多くの女性が働いているが、高いリスクに晒される一方で、感染者を受け入れたり院内感染が発生したりした医療機関の職員・家族が差別や偏見に悩まされている。感染者を受け入れた愛知県のある病院では、すぐに公表し、約40人の職員を自宅待機として院内感染を発生させなかった。それにもかかわらず、職員の子どもは保育園で別室に閉じ込められていたという。政府として差別・偏見をなくす積極的な対策が急務である。
働く女性の半数以上が非正規雇用であり、就業先は医療・福祉を含む対人サービス業が上位3業種を占める中で、営業自粛と経済悪化によって職を失うのも、やはり女性が多くなる。総務省「労働力調査」によれば、2020年3月は35〜44歳の非正規雇用者が最も減少し、このうち男性は3万人減なのに対し、女性は25万人減少した。このことは母子世帯では特に深刻な問題である。
また外出自粛要請等で家事・育児・介護の負担が増すのは女性ばかりである。「ステイホーム」や今後の経済悪化に伴いDVや虐待の深刻化・増加も懸念される。全国の配偶者暴力相談支援センターへの相談は4月13,272件で前年同月より約3割増加。また虐待や無防備な性行為による10代の妊娠が増え、3〜4月に各地の支援団体などに寄せられた相談件数は従来の2〜5倍に急増しているという。
こうした状況において、女性やジェンダー平等の視点を欠いた対策が、既存の差別や格差を拡大させるばかりか、問題を悪化させる恐れも指摘されている。
経済対策として当初打ち出された減収世帯への給付は、世帯主の減収のみを対象とするもので、大きな批判を受けて取り下げとなった。代わる特定定額給付金も、世帯主への給付が原則とされ、女性団体などからの批判を受けて非同居のDV被害者等が申請すれば個別に受給できるようになったものの、家庭内で被支配的な立場にいる女性や子どもにお金が届かない恐れがある。
問題の根底にあるのは、性別役割分業意識や、「男性稼ぎ主」モデルを前提として根強く残る家父長制的考え方である。
この危機下において医療と社会の崩壊を防ぐために、意思決定の場における女性の参加を格段に増やし、あらゆる対策をジェンダー平等視点から見直すことを求める。
以上