※全国保険医団体連合会では、7月22日の中医協総会における10月の金パラ随時改定での価格引き下げの決定に対し、宇佐美歯科代表及び田辺副会長連名での談話を発表し、厚生労働省、全国会議員及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:143KB])
【談話】2020年10月金パラ随時改定にあたり
再び「逆ザヤ」が生じないよう抜本的な制度改善を求める
2020年7月28日
全国保険医団体連合会
歯科代表 宇佐美 宏
副会長(社保・審査対策部担当) 田辺 隆
中医協総会は7月22日、歯科用貴金属の「随時改定T」を承認した。10月1日以降の金パラの告示価格は1グラム2,450円とされ、現在の2,662円から212円(8%)の引き下げとなる。30グラムあたりでは79,860円から73,500円となり、6,360円の引き下げである。
この間の「逆ザヤ」解消を求める運動に対して、厚労省は「随時改定U」を新設し、短期間の大幅な価格変動に対応できるよう制度を改めた。この制度により、7月1日に告示価格が引き上げられ、金パラ「逆ザヤ」による歯科医療機関経営の圧迫がようやく落ち着いた矢先の決定である。
保団連は「随時改定U」の新設に際し、随時改定が素材価格のみを参照し合金の市場価格に基づかないことや、素材価格の参照期間と改定実施までに大きなタイムラグがあることなど、制度の根本的な問題点はそのままであり、抜本解決には程遠いと指摘した。また、告示価格が市場実勢価格に一時的に追いついたとしても、これまでに積み重なってきた巨額の「逆ザヤ」は何ら手当されるものではない。保団連が実施した市場実勢価格調査「金パラ『逆ザヤ』シミュレータ」では、「逆ザヤ」が購入価格の4割に達する状況もあった。歯科医療機関が強いられてきたこの巨額の「逆ザヤ」は積み残されたままである。
金パラの告示価格と市場実勢価格の大きな乖離が生じ得る状況に変わりはなく、歯科医療機関が再び金パラ「逆ザヤ」に脅かされる可能性は依然として残っている。現場の歯科医師にとって、今次の引き下げの決定は、今後のパラジウム等貴金属の価格動向次第で再度「逆ザヤ」の負担を強いられる懸念と不安を抱かざるをえないものである。
折しも、新型コロナウイルス感染症の影響による診療収入の減少が歯科医療機関を直撃しており、多くの歯科医療機関が歯科医業経営の先行きに多大な不安を抱えているところである。歯科医療提供を継続するための強力な支援が求められている中で、価格改定の制度を機械的に運用し金パラ価格を引き下げることは、歯科医療機関経営の先行きの不安をさらに深めることにもなる。
現在の状況で金パラが再度「逆ザヤ」となれば、今後の歯科医療提供の維持・確保を脅かし、歯科医療の危機を加速しかねない。金パラの購入価格が過不足なく保険償還されるよう、金パラの市場実勢価格を適時に調査・把握し、実態に即した告示価格とするための抜本的な制度改善を進めることを政府・厚労省に強く求める。
以上