※全国保険医団体連合会では、下記の理事会声明を発表しマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:202KB])
【声明】「黒い雨」訴訟の控訴を断念し、
速やかに被爆者健康手帳を交付せよ
2020年8月11日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
7月29日、広島地裁は、原爆投下後に放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びて健康被害が生じた広島市や広島県安芸太田町の住民84人が、広島市と広島県が行った「被爆者健康手帳の交付申請却下処分」の取り消しを求めた訴訟で、原告全員を被爆者と認める判決を言い渡した。
広島地裁判決は、原告の訴えを全面的に認め、これまで国が根拠としてきた「広島市中心部の爆心地から市北西部にかけて広がる長さ約19キロ、幅約11キロの『大雨地域』(いわゆる「宇田雨域」)」にとどまるものではなく、「より広い範囲に降った事実を確実に認めることができる」と判断している。
また、「黒い雨」を浴びたとする原告たちに、「原爆の影響との関連が想定される障害を伴う疾病に罹患したことが認められる」として、84人全員への被爆者健康手帳の交付を命じている。
国の「大雨地域」、「小雨地域」の線引きは、75年前の原爆投下直後の混乱期に、しかも、わずか数人で調査された根拠薄弱なものであった。この間、長年にわたって「大雨地域」周辺の地域で「黒い雨」により被爆した人々は、その区域拡大を求めてきている。
国、厚生労働省は、被爆75年が経過し、被爆者が高齢化するもとでなお、原爆被害の「積極的救済」を事実上拒否し、被爆者に「受忍」を強いる態度を改めるべきである。そして、被爆者認定基準のありかたを抜本的に改め、「黒い雨」により被爆したすべての人々を被爆者と認めるべきである。
既に本裁判の被告である広島市と広島県は、国に対し控訴断念を認めるよう要望している。国、厚生労働省は、「黒い雨」による被爆者の長年にわたる苦しみに心を寄せ、絶対に控訴しないことを求めるものである。そして、一刻も早く、「黒い雨」により被爆したすべての人々を被爆者と認め、「被爆者健康手帳」を交付することを強く求めるものである。
以上