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※全国保険医団体連合会では、下記の要望書を発表し、総理、財務、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:255KB]

【要望書】新型コロナウイルス感染症拡大から国民の命と健康を守るため、
PCR検査の拡充、 一般の医療・歯科医療や定期接種・健康診断などの受診勧奨、
医療・歯科医療機関、介護・障害者福祉サービス事業所への減収補填の
徹底を求める緊急要請書

2020年9月14日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 新型コロナウイルス感染症対策に対するご尽力に敬意を表します。
 しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まりません。
 また、重症患者も増えており、新型コロナウイルス感染症の治療を担う医療機関では、人的、物的、経済的に大きな負担を強いられています。
 一般病院や医科・歯科診療所においても、新型コロナウイルス感染症拡大阻止に向けた対策の強化を行いながら、日常診療に取り組んでいますが、受診患者だけでなく、定期接種や健康診断なども大幅に減少しています。必要な医療や歯科医療、定期接種、健康診断を受けなければ、命と健康を守ることはできません。また、医療機関にとっては、医業収入が大幅に減収となり、医療機関の経営に重大で深刻な影響が出ています。介護事業者や障害者福祉サービス事業者も同様です。このままでは廃業を余儀なくされる医療機関や事業者が出てきます。さらに感染症の再拡大によって、マスクや消毒液をはじめとした感染防護具・衛生材料等の価格の高騰や不足で、対応は困難を極めてしまいます。
 新型コロナウイルス感染症の治療を行う医療機関はもちろんのこと、一般病院や医科・歯科診療所の継続は、患者・国民の命と健康を守るために大変重要です。また、介護事業所や障害者施設等は、社会にとってなくてはならないものです。
 直ちに下記事項の実現を図られるよう、強く要望いたします。

1.医科・歯科医療機関、介護・障害者福祉サービス事業所等の経営破綻を阻止すること

1-1.

医科・歯科すべての医療機関について

@ 実質的な減収を補填する財政支援を緊急に行い、少なくとも感染拡大による損失(赤字)が生じないようにすること。
A 2次補正予算の空床補填、感染防止対策補填、慰労金等を速やかに、もれなく支給すること。
B 持続化給付金、家賃補助などの支給要件を緩和すること。
C 支援金、交付金は膨大な事務手続きが必要になるだけでなく、医療機関に支払われるまでに数カ月を要する。速やかに過去の診療実績による概算払いを認めること。
D 地方創生臨時交付金を増額し、自治体独自の医療機関への支援策の拡充を図ること。

1-2.

介護や障害者福祉サービス事業所についても、上記に準じた対応を図ること。

1-3.

新型コロナウイルス感染症患者の入院治療を担う病院が赤字にならないよう、また、職員の給与・賞与が十分に支払えるよう、必要な財政支援を行うこと。感染防護具・衛生材料等の確保についても国・自治体で援助すること。

1-4.

 京都府保険医協会等の調査によると、新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れていない医療機関であっても、コロナ禍による職員及び患者の受診状況の変化によって施設基準要件を満たせない状況が生じていることが明らかとなっている。
 8月31日に出された事務連絡では、「緊急事態宣言」の期間については、新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れていない医療機関であっても、基本診療料における「定数超過入院の減額措置免除」「月平均夜勤時間数」「看護配置」「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」「研修等」「その他の実績要件等」及び、特掲診療料等における「実績要件等」について、施設基準に係る要件を満たさなくなった場合であっても、引き続き、当該施設基準を満たしているものとして取り扱うこととすることが提案された。
 中医協では、「緊急事態宣言」が一部都道府県で出された場合も、対象は全ての都道府県を特例の対象とすることが提案されたが、「緊急事態宣言」の有無にかかわらず、コロナ禍によって、施設基準要件に大きな影響を受けている。
 従って、コロナ禍の期間については、「緊急事態宣言」の有無にかかわらず、全ての医療機関の既届出施設基準について、当該施設基準を満たしているものとして取り扱い、適時調査再開時に自主返還の対象にしないこと。

2.新型コロナウイルス検査体制を抜本的に拡充すること

2-1.

可能件数の抜本的な拡大を図り、医師の判断で迅速に実施できるようにすること。

2-2.

民間医療機関での発熱外来設置や地域外来・検査センター運営費用の全額を国が負担し、設置数を大幅に増やすこと。また試薬や検体採取に必要な感染防護具・衛生材料等の確保を国・自治体として行うこと。

2-3.

PCR検査及び抗原検査の行政検査に関する委託契約を簡素化し、「保険医療機関であれば、委託契約がなされているものとみなす」扱いとし、希望する保険医療機関が医師の判断でPCR検査及び抗原検査を実施し、保険請求(公費請求)できるようにすること。

2-4.

感染者の多発地域やクラスター発生地域では、医療施設、高齢者施設等に勤務する者や新規入院・新規入所者等について、当該施設で感染者がいない場合でも、行政検査の対象としても良いとされ、医療機関への検査の委託を積極的に考慮することが示されているが、この場合の費用の支払い(医療機関からの請求方法)が示されていない。この検査費用の請求方法を明示すること。

2-5.

唾液によるPCR検査について、自宅等で患者自らが採取して持参させる場合も保険請求(公費負担)できることを明示すること。また、その場合の感染防御の留意点など必要な対策を周知すること。

3.一般診療や、介護・障害者福祉サービス継続のための緊急対策を実施すること

3-1.

下記の対象者で希望する場合は、新型コロナウイルス検査を公費負担により必要に応じて適宜実施できるようにすること。

@ 医科・歯科医療機関及び介護・障害者福祉サービス事業所などの、全ての職員
A 入院患者及び入所サービス利用者(予定者を含む)
B 手術や胃カメラなど感染の危険性が高いと想定される行為の予定患者

3-2.

マスク、消毒液、ディスポーザブルのガウン、ゴーグルやフェイスシールド、手袋などの確保を国・自治体として行うこと。

3-3.

受診抑制は国民の健康に悪影響を及ぼしており、医療機関の経営にも影響を与えている。国、行政によるテレビ、新聞、ネットなども活用した受診、予防接種、健診を呼びかける広報活動を行うこと。

3-4.

低所得者及び収入が減少した世帯の医療保険・介護保険の保険料・患者負担・利用者負担の徴収を直ちに免除すること。

3-5.

通常の国保証をすべての加入者に届け、国保資格証明書の交付を止めること。

3-6.

受無保険者をなくすこと。当面無保険者であっても新型コロナウイルス検査や通常の医療が受けられるようにし、受療案内を徹底すること。

3-7.

生活保護審査を簡素化するとともに、保護要件を大幅に緩和すること。

3-8.

介護報酬については、新型コロナに関する臨時的措置として利用者の同意を得た上で上位の報酬区分を算定できるようにしているが、患者負担増となるため活用が困難である。患者負担の引き上げとならないよう、増額分は全額公費負担とし、利用者の同意を不要とすること。

4.感染症対策の抜本的強化

4-1.

治療薬・ワクチン開発については、有効性・安全性を担保できるようにするとともに、副反応・有害事象が発生した場合に、十分な治療と保障ができるよう、国として管理・責任をもってすすめること。

4-2.

充実した社会保障こそ、感染症対策の基本である。すべての人が必要な医療・歯科医療、介護・福祉サービスを受けられるよう、社会保障を抜本的に拡充すること。

4-3.

急性期病床を中心とする病床削減計画を直ちに中止すること。地域医療構想を前提とした医師・看護師需給計画を抜本的に見直すこと。

4-4.

保健所及び地方衛生研究所の数・体制・予算等を強化し、労務負担軽減を行うこと。

4-5.

国立感染症研究所の機能強化を行うこと。日本版CDC(疾病予防管理センター)を創設し、感染症に対応できる仕組みを構築すること。

4-6.

感染者・濃厚接触者や、診療に携わった医療機関・医療関係者その他の対策に携わった方々に対する誤解や偏見がおこらないよう、一層の対応を図ること。

以上

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