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※全国保険医団体連合会では、下記の要望書を発表し、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:299KB]

【要望書】「発熱外来診療体制確保支援補助金」等に
関する緊急要望書

2020年10月2日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 新型コロナウイルス感染症対策に対するご尽力に敬意を表します。
 さて、厚生労働省におかれては、新型コロナウイルス感染症拡大の中で季節性インフルエンザ流行に備えた対策として、「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」との事務連絡を9月4日に発出するとともに、9月15日には、「発熱外来診療体制確保支援補助金」の交付に関する事務連絡を発出されました。
 地域で発熱患者等の診療・検査を行う医療機関に、十分な補助金を給付することは重要です。しかし、制度の内容が自治体にも保健所にも医療機関にも十分に周知されていません。
 医療機関はもとより、自治体にも保健所にも十分な情報が提供されないまま、マスコミでいきなり「まずはかかりつけ医に電話相談することを周知徹底する」旨の報道がされましたが、「診療・検査医療機関」の整備ができていない状況で電話相談をかかりつけ医に押し付けられても、十分な対応をすることはできません。このようなやり方は、行政の不作為を医療機関に押し付ける行為であり、患者さんと医療機関のトラブルが生じかねず、患者にとっても不利益です。
 また、PCR検査の少なさが日本における新型コロナウイルス感染症対策の問題ですが、これを解決するためには、まずは保健所の数と職員数、地域外来・検査センターを増やすべきであり、これを実施するための設置・運営費用について、国が全額を負担し、出務する職員に十分な給与・出務費を保障すべきです。
 なお、「発熱外来診療体制確保支援補助金」等の取扱いについては、いまだに不明な点も多く、かつ、不十分な点もあります。
 保団連では、新型コロナ感染症対策の一環として、民間医療機関での発熱外来設置費用への国の負担や試薬・感染防護具などの確保を求めてきていただけに、今回の厚生労働省の対応の不十分さは、残念でなりません。
 全ての国民が必要な検査と診察、そしてコロナ以外の医療・歯科医療がしっかりと受けられるよう、「発熱外来診療体制確保支援補助金」の執行等にあたっては、下記の点につきまして実施いただけますよう、要望いたします。

1.

「診療・検査医療機関」に関する要望

(1) 「発熱患者等専用の診察室」で診療を行った患者が想定患者を上回った場合に、補助金がゼロにならないよう、定額給付とするか最低給付額を設定すること。
 
理由
現在は、1日に20人を限度とする想定患者数から受診患者数を差し引いた人数に13,447円を乗じた額としているが、1日20人以上となれば補助額はゼロとなる。別途保険請求・公費請求ができるものの、その額は不十分である。現場で大変な思いをして対応した医療機関が報われるよう制度設計を見直していただきたい。
(2) 現在予定の補助額の算出方法の場合、「クラスター発生地域等において、濃厚接触がなく、かつ無症状である医療機関や入院・入所患者に対して委託を受けて、当該診察室で行った行政検査の数」は、受診患者数に入れないことを明示すること。
 
理由
クラスター発生地域等において、都道府県知事の判断によって濃厚接触がなく、かつ無症状である医療機関や入院・入所患者に対してPCR検査等が実施できる扱いとなっているが、その場合保健所は検査を医療機関に委託することを積極的に考慮するとされている。この場合の検査費用は保険適用されるわけではないため、当然「発熱外来診療体制確保支援補助金」の算出にあたって、受診患者数に入れないものと考えるが、現在はその点が明示されていない。入れないことを周知いただきたい。
(3) 「発熱外来診療体制確保支援補助金」を新型コロナウイルス感染症が収束するまで、延長し、それに必要な財源を確保すること。
 
理由
「発熱外来診療体制確保支援補助金」は、3月末をめどとすると言われているが、インフルエンザが収束したとしても、患者・国民や医療機関にとって新型コロナウイルス感染症リスクへの対応は引き続き必要であり、新型コロナウイルス感染症が収束するまで延長し、来年度予算で財源を確保いただきたい。
(4) 「発熱外来診療体制確保支援補助金」は、1カ月単位で請求し、請求があればすみやかに支払うよう明示すること。
 
理由
補助金の請求単位は1カ月単位が管理しやすく、かつ資金繰りに困っている医療機関にとっても必要である。1カ月単位で請求し、請求があれば速やかに支払っていただきたい。
(5) PCR検査試薬、抗原検査キット、感染防護具の提供方法を早急に示すこと。
 
理由
令和2年度補正予算(第2号)において、PCR検査試薬、抗原検査キットの買上げ等が計上されている。当該予算は、「診療・検査医療機関」等に対する支援と思うが、いまだに出されていない。また、感染防護具の提供も示されている。早急に提供方法を示していただきたい。
(6) 「診療・検査医療機関」情報の、インターネット等を通じた住民への公開については、公開を希望する医療機関に限ることを都道府県および各自治体に徹底すること。
 
理由
現時点での公開は、風評被害が生じる危険性もある。自治体のホームページなどで公開するにあたっては、公開を希望した医療機関のみとすることを厳守していただきたい。
(7) 「診療・検査医療機関」の指定を受けずに、委託契約のみでもPCR検査及び抗原検査の保険請求・公費請求ができることを周知すること。また、「保険医療機関であれば、委託契約がなされているものとみなす」扱いとし、希望する保険医療機関が医師の判断でPCR検査及び抗原検査を実施し、保険請求(公費請求)できるようにすること。
 
理由
PCR検査及び抗原検査を抜本的に増やすために、検査が可能な全ての医療機関で実施し、保険請求(公費請求)できるようにしていただきたい。
(8) 「診療・検査医療機関」の職員が感染した結果、診療を休止せざるを得なくなった場合の損失補填を別途行うこと。
 
理由
「診療・検査医療機関」においては、必要な感染防止策を講じた上で、検体採取を行うとされており、通常は職員が感染する恐れは少ないと考えられるが、万が一、診察・検査を行ったことで、職員が感染して診療を休止せざるを得なくなった場合には、多大な損失となる。休診期間の損失補填をしていただきたい。

2.

PCR検査、抗原検査の保険請求額(公費負担額)を引き上げること。

理由
新型コロナウイルス感染症患者等(疑いを含む)に対する検査については、唾液などでの実施も可能とされているが、他の検査に比べて更に感染防御を行うことが求められている。しかし、現在の検査料及び判断料では、実際にかかる医療機関の負担を評価できていない。感染防御対策は検査実施に伴うものであることから、PCR検査、抗原検査の保険請求額(公費負担額)を引き上げ、実際に検査にかかる報酬評価が患者負担増につながらないようにしていただきたい。

3.

「地域外来・検査センター」について、少なくとも二次医療圏に複数箇所を目安に設置するとしているが、インフルエンザ検査も含めて時間・曜日に空きなく実施できるよう、設置や運営費用の全額を国が負担し、医師・歯科医師、看護職員等に相当の出務費を保障すること。

理由
地域外来・検査センターについて対策推進本部では、複数個所の設置を目指しているが、検査が実施可能な時間が少ないセンターも少なくない。少なくとも時間・曜日の空きがなく実施できる体制を構築する必要があり、そのためには、出務する医師・歯科医師、看護職員への相当の出務費を保障するよう、設置や運営の費用の全額を国がしっかりと負担していただきたい。

4.

「診療・検査医療機関」の整備が不十分な地域においては、保健所で引き続き検査等を行うこととし、その旨を周知すること。

理由
全ての地域において「診療・検査医療機関」の整備ができるわけではなく、整備ができるまでは、当該地域において保健所で引き続き検査等を実施すべきである。

5.

かかりつけ医等の地域で身近な医療機関において電話相談を行うこととしているが、電話での診察行為に当たらず保険請求の対象にならない電話対応についても補助金を創設し、交付すること。なお、補助金の対象は、医科・歯科及び介護保険施設とすること。

理由
今も医療機関では一定の対応を行っているが、医師の診察に当たらない場合は保険請求ができないが、受付や看護職員等によってかなりの負担となっている。保険請求の対象とならない電話対応業務についても補助金を創設し、交付いただきたい。

6.

医療機関や医療従事者への誹謗中傷・風評被害を根絶すること。そのため、政府や自治体として医学的根拠に基づいた広報や教育の実施など、必要な対策を講じること。

理由
新型コロナウイルス感染症患者等(疑いを含む)や患者等への診察、治療を行う医療機関、そこで働く医療従事者に対する風評被害が後を絶たないことが、「診療・検査医療機関」の指定を受けることを躊躇する原因ともなっている。風評被害の根絶に向け、効果的な対策をとっていただきたい。

7.

保健所及び地方衛生研究所の数・体制・予算等を強化し、労務負担軽減を行うこと。

理由
この半世紀だけでも、エイズ、エボラ出血熱、SARSS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、ニパウイルス感染症、腸管出血性大腸菌感染症、ウエストナイル熱、ラッサ熱、新型コロナウイルス感染症など様々な感染症が拡大している。また、自然災害は毎年日本を襲っている。コロナ禍の中で保健所の職員は大変な過重労働となっている。その原因は保健所数・体制・予算の削減にある。国民の命と暮らしを守るために、保健所や地方衛生研究所の数や体制、予算などを強化していただきたい。

以上

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