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※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、マスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:284KB]

【声明】75歳以上の窓口負担2割導入は中止を

〜新型コロナウイルス感染拡大の下、負担増を求めるのか〜

2020年11月17日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 政府は、年末に向けて、75歳以上(現役並み所得除く)の「一定所得以上」の方について、医療費の窓口負担割合を1割から2割負担に引き上げることについて、具体的方針を取りまとめるとしている。
 今でも、年収383万円以上の70歳以上の高齢者は「現役並み所得」として3割の重い窓口負担を強いられ、更に来年8月には介護利用料の負担上限額が引き上げられようとしている。今回、現在1割負担となる年収80万円〜383万円となる「一般区分」において、低所得の年収155万円〜240万円以上(単身世帯の場合)の間で線引きし、2割負担を導入する案が議論されている。約200万人〜605万人の高齢者が負担増の対象と見込まれている。

 75歳以上のほぼ全てが外来受診している中、1割から2割負担となれば外来だけで窓口負担(年間)は4.6万円から7.6万円に3.1万円もの負担増となる。外来受診者の6割で窓口負担額(1人あたり)が文字通り2倍になる試算結果が示されている。入院ともなれば更に負担増となる。国が外来受診に対して示す「配慮措置」案にしても、負担抑制額は年4千円に留まり、焼石に水にもならない。しかも、2年間の経過措置であり、今後の原則2割化も見据えた弥縫策というべきものである。
 高齢夫婦(世帯主が無職で75〜79歳)で主に構成する世帯は平均年収280万円(月実収入23万円)で生計は年間27万円の赤字である(家計調査2019年)。75歳以上の世帯(18歳未満の未婚者も含む)で年収200万〜300万円の世帯では、貯蓄額300万円以下が3割前後を占め、50万円未満も15%前後に及ぶ。僅かな貯蓄を切り崩しつつ生活を続ける中、大病ともなれば一気に生活が破たんしかねない。この上、窓口負担増ともなれば、高齢者の命と健康に深刻な影響が及ぶことは明らかである。

 高齢親族の生計を支える世代のみならず、親の介護を担う世代や育児と介護を同時に担うダブルケア世帯なども増える中、高齢者の医療費負担増は、現役世代も直撃し、影響は高齢者本人よりもはるかに多く及ぶこととなる。更に、来年8月より介護施設入所者に月2万2千円もの負担増が予定されるなど、高齢者・家族の生活困難は一層深まる。
 高齢になるほど収入は低下する一方、疾病を多く抱えざるを得ないため、75歳以上の高齢者は原則1割負担の今でも、年収に対する窓口負担額の割合は現役世代(30〜50歳代)よりも2〜6倍も高い不公平な状況を強いられており、むしろ負担軽減こそが求められている。しかも、2割負担の導入が、多数の高齢者の命と健康、生活に与える深刻な影響に対し、税金(公費)の削減影響は最大2千億円にも満たず、審議会では「微々たる(財源)効果のために高齢者の生活を苦しめるべきなのか」と疑問視する声も出ている。

 新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、高齢者は受診抑制を強いられ、疾病・心身状態の悪化も報告される中、窓口負担増は高齢者に更なる追い打ちをかけることとなる。75歳以上への窓口負担2割導入は中止すべきである。少なくともコロナ禍の今、2割負担導入をめぐる審議は凍結・見送るべきである。

以上

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