※全国保険医団体連合会では、下記の要望書を発表し、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:185KB])
【要望書】「適時調査」の改善を求める要望書
2020年12月7日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
前略 国民医療の確保に対するご尽力に敬意を表します。
さて、8月31日に出された事務連絡では、新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れていない医療機関であっても、「緊急事態宣言」の期間については、基本診療料における「定数超過入院の減額措置免除」「月平均夜勤時間数」「看護配置」「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」「研修等」「その他の実績要件等」及び、特掲診療料等における「実績要件等」について、施設基準に係る要件を満たさなくなった場合であっても、引き続き、当該施設基準を満たしているものとして取り扱うこととすることとされました。
しかし、新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れていない医療機関であっても、コロナ禍による職員及び患者の受診状況の変化によって、施設基準要件を満たせない状況が生じています。このままでは、地域医療に大きな影響が生じ、患者が必要な医療を受けられない事態にもなってしまいます。
また、コロナ禍であるか否かにかかわらず、施設基準の届出を行った場合は原則として年1回(届出受理後は6カ月以内を目処に)適時調査が実施されることとなっております。
しかし、地方厚生局等の人員不足などによって現在は、数年に1回の実施がほとんどです。施設基準の要件は複雑で、行政側ですら解釈の誤りが散見されます。適時調査による自主返還は個別指導よりも多額となっていますが、施設基準の要件を満たしているかどうかの点検が毎年しっかりと実施されていれば、このような自主返還には至らないはずです。
適時調査を受ける医療機関は、多大な労力を要します。適時調査を受けるために医療の現場が疲弊することは、地域医療にとって大きなマイナスです。
こうしたことから、適時調査に関し下記の改善を行うよう、強く求めます。
記
1. |
「緊急事態宣言」の有無にかかわらず、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間は、全ての医療機関の既届出施設基準について、当該施設基準を満たしているものとして取り扱い、適時調査再開時に自主返還の対象にしないこと。
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コロナ禍による職員及び患者の受診状況の変化によって、施設基準要件を満たせない状況が生じています。このままでは、地域医療に大きな影響が生じ、患者が必要な医療を受けられない事態にもなってしまいます。 |
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2. |
適時調査の対象医療機関及び実施予定日を前年度(少なくとも3カ月前)に知らせること。
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臨場による適時調査は、すべての病院を対象に定期的に実施されることや、診療時間内に医療機関において長時間実施され、診療を制限せざるを得ないことも起こりうります。このことからも、適時調査の実施予定を前年度に知らせておくことは、地域医療の確保の点からも重要です。したがって、対象医療機関に実施予定日を前年度(少なくとも3カ月前)に知らせてください。 |
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3. |
自主返還は、施設基準に適合しないことが判明した場合も、ただちに返還を求めるのではなく、まずは改善を指導し、後に再調査してもなお改善されていない場合に初めて返還を求める扱いとすること。少なくとも、適時調査による「自主返還」の対象期間は、長くとも1年以内とすること。
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@ |
適時調査による自主返還は、法令・通知には明記されていない。届出に関する通知にも「適合しないことが判明した場合は、所要の指導の上、変更の届出を行わせるものである。その上で、なお改善がみられない場合は、当該届出は無効となる」とあり、 返還を求めずにまずは改善を指導し、後に再調査してもなお改善されていない場合に初めて返還を求めることとするべきである。 |
A |
上記@が不可能な場合でも、臨場による適時調査の自主返還の対象期間について、前回の適時調査以降で基準を満たしていない期間分を「自主返還」の対象としているが、2〜3年分に及ぶ「自主返還」が求められている。長期間に及ぶ「自主返還」は医療機関に過大な経済的負担を強いることになる。適時調査の実施が本来は年に1回とされているところ、実際には2〜3年に1回程度となっており、調査側の実施ペースにより「自主返還」に期間が異なることになる。以上のことも考慮し、適時調査による「自主返還」の対象期間を個別指導と同様に1年とすること。 |
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4. |
施設基準の内容や解釈について、疑義が生じないようにし、周知徹底を図ること。
全ての地域において「診療・検査医療機関」の整備ができるわけではなく、整備ができるまでは、当該地域において保健所で引き続き検査等を実施すべきである。 |
以上