※全国保険医団体連合会では、下記の要請書を発表し、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:154KB])
【声明】2021年度薬価改定について
〜医療機関の経営悪化は避けるべき〜
2020年12月11日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
2021年4月に予定される薬価改定(毎年薬価改定)をめぐり、中医協で議論が進められるとともに、2021年度政府予算案の編成過程において薬価改定の取扱いが最終的に決められる見通しとなっている。
薬価調査結果(9月取引分)では、平均乖離率は約8.0%と例年並みの数値が示された。しかし、数値の信頼性をめぐり、価格形成の期間が半年と例年よりも大幅に短い上、新型コロナウイルス感染拡大の下で交渉の期間・回数が更に限られており、正常な取引がされた上での結果とは言い難いとの指摘が、診療側委員、医薬品卸や製薬メーカーから相次いで出されている。
中医協に示された薬価改定に伴う影響試算では、改定品目の大半は長期収載品と後発医薬品が占めるが、後発品等の過度な薬価の引き下げは、昨今取りざたされている医薬品の供給不安のリスクを更に高めることになりかねない。
しかも、コロナ感染拡大が続き、通常医療にも支障が出始め、医療崩壊の再燃すら危ぶまれる地域も出てきている。この上、薬価改定ともなれば、医療機関、薬局の経営状況を更に悪化させることとなり、地域医療に更なるダメージを及ぼすことは明らかである。現下、可及的速やかになされるべきは、医療機関への経営支援策や感染拡大防止支援策の充実をはじめ、医療提供体制の再建・整備にこそある。薬価改定により、医療崩壊を進めるようなことになっては本末転倒である。
患者・国民負担の軽減に向けて薬価引下げは必要だが、今回の薬価調査結果の信頼性をめぐる疑問の声や改定に伴う供給不安への懸念、とりわけ医療機関の経営の更なる悪化などに鑑みて、本会は、2021年度薬価改定については実施すべきではないと考える。かりに薬価改定を行うのであれば、改定で捻出された財源は、初診料・再診料、訪問診療料、入院料等を緊急に引き上げるなど、医療提供体制の維持・確保のために充てられることが担保されるよう強く求めるものである。
以上