※全国保険医団体連合会では、下記の声明を発表し、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:135KB]

国民皆保険制度の土台を崩す

【声明】紹介状なし病院受診時定額負担拡大の撤回を求める

2020年12月23日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 12月15日に閣議決定された全世代型社会保障検討会議の最終報告「全世代型社会保障改革の方針」において、現在、特定機能病院および一般病床200床以上の地域支援病院を紹介状なしで受診した場合に徴収が義務付けられている定額負担(初診5000円等)について、対象病院を拡大することが明記された。合わせて保険給付の範囲から一定額(例:初診の場合、2,000円程度)を控除し、それと同額以上の追加定額負担を患者に求める仕組みに改めるとしている。

 対象病院の拡大については「地域の実情に応じて明確化される『紹介患者への外来を基本とする医療機関』のうち一般病床200床以上」が追加対象とされる。
 しかし、病院を受診する患者にはそれぞれの事情があり、また、地域における医療提供体制も様々な状況がある中で、患者の医療アクセスの確保の観点から、対象病院はこれ以上拡大すべきではない。

 患者に定額負担を求めることについて外来機能分化などを口実に挙げているが、患者負担増によって受診行動の変容を求めれば、結局は受診できる医療機関が個人の経済力によって左右されることにつながる。
 さらに、今回、保険給付の範囲から一定額を控除し、それと同額以上の追加定額負担を患者に求めるとしている。これは、保険給付範囲の縮小にほかならず、「国の財政」を理由に保険免責制の導入を狙うものであり、到底認められるものではない。「将来にわたって7割の給付を維持する」とした2002年改正健保法附則第2条の趣旨にもとるものである。
 厚労省は社会保障審議会医療保険部会において「例外的・限定的な取扱」に留めると説明しているが、そもそも、医療機関において任意(届出)である選定療養規定に義務(強制徴収)を規定した上、さらに国が徴収額を強制的に召し上げることまでが可能となれば、何でもありに等しい形と言わざるを得ない。
 今後、医療費抑制の手段としてこうした仕組みが他の診療報酬項目などにも拡大されていく事態が強く危惧される。
 また、外来機能分化のさらなる推進として、「かかりつけ医以外の受診時定額負担」の導入や、後発品の使用促進などとして、後発品の薬価を基準として保険給付額を決定し、先発品を使う場合、差額を患者負担とする「参照価格制度」の導入などに向けた地ならしを進める形ともなる。
 紹介状なしでの病院受診時定額負担の対象病院拡大、保険給付範囲から定額を控除しそれと同額以上の追加定額負担を求める仕組みの導入は、「いつでも、どこでも、だれでも必要にして十分な医療が提供される」というフリーアクセス、現物給付等、国民皆保険制度の諸原則を変質させ、その土台を崩すものであり、撤回を求める。

以上

ホームニュースリリース・保団連の活動私たちの提言・意見