※全国保険医団体連合会では、2021年度介護報酬改定に対して下記の談話を発表し、マスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:245KB])
【談話】介護崩壊を食い止め、新型コロナ感染症対策を強化するため、
国庫負担を拡充し、介護報酬の大幅引き上げ・改善を改めて求める
2021年2月5日
全国保険医団体連合会
地域医療対策部
医科部長 中島 幸裕
歯科部長 小山田 榮二
1. |
介護崩壊を食い止め、新型コロナ感染症対策を強化するため、介護報酬の大幅引き上げを改めて求める |
1月18日に開催された社会保障審議会「第199回介護給付費分科会」は、2021年度介護報酬改定案を諮問通り了承した。
改定内容は、昨年12月17日に決定した「0.7%引き上げ(うち0.05%は、COVID-19の特例的対応として9月までの時限的措置)」を前提としたものだが、この引き上げ幅では、新型コロナ感染症対策の強化、介護職員の処遇改善や求められる介護サービスの向上には全く不十分である。特に、コロナ対策のための特例的対応として、今年9月までは所定単位数の1000分の1001で算定できるとしているが、こんなものでコロナ対応は不可能である。恒久的かつ大幅な引き上げが必要である。
介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するものである。医学・医療の新たな知見や介護技術の進歩を介護報酬にしっかりと反映させ、介護担当者の労働条件を改善するためには、介護報酬全体の更なる引き上げが必要である。
国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することである。介護崩壊を食い止めるためにも、国庫負担を拡大して介護報酬の大幅引き上げを行うよう、改めて求めるものである。
2. |
居宅療養管理指導における単一建物居住者数による単位数減額を廃止すること。少なくとも、介護報酬の引き下げを行わないこと。 |
医師・歯科医師の居宅療養管理指導は、「居宅療養上の指導や他の事業所との連携」を評価するものであって、訪問診療にかかわる費用は、医療保険で評価している。
したがって、「単一建物居住者」の人数によって報酬減額を行う理由はなく、「単一建物居住者数」に対する減額を廃止すべきである。
少なくとも、単一建物居住者月10人以上の場合であってもプラス改定とすべきである。
3. |
介護療養施設サービス費の引き下げを中止し、介護療養病床の廃止を撤回すること。 |
介護療養施設サービス費について認知症疾患型は引き上げられたが、病院型は1日につき1人45単位〜117単位も引き下げられ、60床では年間2,000万円以上もの減収となる。また、診療所型も1日につき1人43単位〜85単位もの大幅な引き下げとなっている。
これは、介護医療院への転換を強要するためのものであるが、転換できない施設は、直ちに経営が立ち行かなくなる。介護療養病床は、新型コロナウイルス感染症拡大の中で必要な施設サービスを提供するために献身的に努力している。こうした中で報酬を引き下げることは、施設、職員の献身的な努力を踏みにじるものであり、施設サービス費の引き下げは、直ちに中止すべきである。しかも、介護医療院等への移行等に関する計画を届け出ることができない場合は、さらに10%もの減算を行うこととされたが、少なくともコロナ感染症が収束するまでは、実施を凍結すべきである。
そもそも施設サービスの確保は、十分ではない。介護療養病床の廃止は撤回し、必要な施設療養が受けられるようにすべきである。
また、介護療養施設サービス費以外にも引き下げが予定されているサービスが一部あるが、基本報酬の引き下げは中止すべきである。
4. |
医療系介護報酬は、区分支給限度額から外すこと。 |
訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、医学的な必要に応じて実施すべきであるが、区分支給限度基準額の範囲でしか介護保険給付を受けられない。
これらのサービスや、区分支給限度基準額の対象外である居宅療養管理指導や介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院における介護を除く部分は医療そのものであり、医療保険の窓口負担率を大幅に引き下げて、医療保険給付に戻すべきである。
少なくとも、区分支給限度に組み込まれた訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、区分支給限度の対象から除外すべきである。
5. |
告示・通知を速やかに発出し、改定実施まで、十分な周知期間を設けること |
これまでの介護報酬改定では、告示が3月中・下旬、通知が3月下旬に発出されるため、介護現場に大混乱をもたらし、利用者に十分な説明もできない状況が続いている。
介護は、区分支給限度基準額の枠の中でケアプランを作成した上でサービスを提供することを前提としている。今次改定においては、これまでのように介護の現場と利用者に多大な負担を負わせないよう、告示・通知を速やかに発出し、十分な周知期間を設けるべきである。
6. |
介護保険の利用者負担拡大をやめ、介護保険料・利用料の減免の拡充を実施するとともに、高額介護サービス費の上限額を引き下げ、利用者負担を軽減すること。 |
コロナ禍によって、さらに国民生活は一層厳しさを増している。介護保険料・利用料の減免の拡充を実施するとともに、高額介護サービス費の上限額を引き下げ、利用者負担を軽減すべきである。
少なくとも、介護保険の利用者負担拡大は絶対にすべきではなく、食費の負担増、低所得者の補足給付に対する資産要件締め付け、高額介護サービス費の自己負担限度額の引き上げは中止すべきである。
以上