※全国保険医団体連合会では、下記の声明を発表し、マスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:231KB])
【声明】東日本大震災・東電福島原発事故から10年
真の復興と原発ゼロ社会実現を
2021年3月11日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
死者1万5,899人、関連死3,767人、行方不明者2,526人の被害を出した東日本大震災から、本日3月11日で10年を迎えた。避難生活を送る人は今なお8万人ともいわれ、その実態が明確にされておらず、福島県では帰還困難区域の大半で解除の見通しが立っていない。
国は今年度末までを第1期の「復興・創生期間」と定め、復興増税などで集めた約32兆円をかけて道路や防潮堤などハード面の復旧を進めてきた。しかし、被災者の生活・暮らしと日々の生業の再建はなお道半ばとなっている。
災害公営住宅入居者の「3割が健康状態悪化」「6割が抑うつ傾向にある」(宮城民医連調査)、また、国保と後期高齢者の医療費窓口負担免除打ち切りに対して「これまで通り通院する」は30.7%(岩手県保険医協会調査)など被災者の健康悪化が危惧される。
ところが、菅政権は被災者・被災地の実態を無視し、支援策を縮小・打ち切る方向を打ち出している。復興庁の設置期限は2030年度までと延長されたが、25年度までの5年間に投じる予算は1兆6千億円へと大きく減額しようとしている。
また、昨年11月に被災者生活再建支援法が改正されたが、最大300万円の支給金額では、住宅再建にも不十分である。少なくとも500万円までに早急に引き上げるとともに、全ての被災者の生活再建に向け、被災者生活再建支援法を抜本的に改正してさらに積み増し、今後も続く自然災害に備えるべきである。
今、求められているのは、生活・暮らし、生業の再建など、真の復興のために、全ての被災者の実態把握と支援を国が責任をもって、果たすことである。
東京電力福島第一原発の過酷事故は、10年たった今でも、廃炉に向けためどは全くたっていない。
福島県民・地元漁業関係者の強い反対にもかかわらず汚染水を海洋放出しようとしていることは、事故による被害を受けた県民・業者への背信といわざるを得ない。
福島避難者訴訟の控訴審では、2020年9月30日の仙台高裁に続き、今年2月19日の東京高裁でも、国と東京電力の責任を認める判決が出された。しかし、過酷事故から10年経過するにもかかわらず、いまだに国と東電は、「想定外」を主張し責任を逃れようとしている。原発事故で犠牲を強いられた多くの人々に背を向けるもので許されない態度である。国として廃炉に責任をもち、真の事故収束まで福島への支援を継続・強化すべきである。
さらに、安倍前政権とそれを引き継ぐ菅政権は、原発再稼働をさらに推進しようとしている。菅首相は、所信表明で2050年カーボンニュートラル政策を口実に原発依存のエネルギー政策を推進しようとしている。一方で、野党4党が2018年3月に提出した「原発ゼロ基本法案」が、与党の妨害で一度も審議されていないことも重大な問題である。多くの国民が求めている「原発ゼロ」に背を向け続けることは決して許されない。
原発はひとたび事故が起これば、現在の人類にとって回復不可能な事態を引き起こすことがこの10年で明らかになっている。今こそ、「原発ゼロ」の日本を実現し、再生可能エネルギーへとエネルギー政策を転換すべきである。
以上