※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、マスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:148KB])
【談話】広島高裁による伊方原発3号機運転差し止め決定の
仮処分取り消しに抗議する
2021年3月19日
全国保険医団体連合会
公害環境対策部
部長 野本 哲夫
広島高裁は、3月18日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、昨年1月に運転を差し止めた仮処分に対する四国電力の異議を認め、運転を容認する決定を下した。
決定では、地震の揺れについて「海上探査の結果、原発の2キロ以内に活断層はないとした四国電力の評価に不合理な点はなく、南海トラフの地震による揺れの評価も不合理とは認められない」と指摘した。また、阿蘇山の噴火については「今後数十年か100年程度の間の噴火の危険性については専門家の間でも意見が分かれ、現在の科学的見解では、原発の運転期間中に破局的噴火が発生する可能性が高いとはいえない」と指摘した。
決定では「原発の安全性に影響を及ぼす大規模自然災害が発生する可能性が高いとはいえない」と判断するなど、四国電力の主張を一方的に取り入れた決定となった。
昨年1月の決定では、「活断層がある可能性が否定できず、火山灰などの想定も過小だ」とし、運転差し止め決定をしていたにもかかわらず、それに対する具体的な反証もないままの決定は許されない。
これまでにも、過去において、活断層はないとされていた地域にもかかわらず阪神・淡路大震災などの巨大地震が起こり、東日本大震災では大津波を経験してきた。そうした苦い歴史を全く無視する決定だといわざるを得ない。
今回の決定において、原子炉の安全性に関する自然災害リスクについて裁判所に独自の科学的知見はなく、具体的な危険を住民側が立証しなければ運転差し止めを命じる法的判断はできないと表明したことも重大な問題である。
決定後、住民側弁護団が「科学的に完全に立証するのは不可能で、原発の運転を停止する道を閉ざしたに等しい。東京電力福島第一原発の事故後の司法判断として常軌を逸した考えがたい決定だ」と批判しているが、本来、少しでも危険性があるのであれば、運転させないという決定をするのが司法の役割である。
私たち命と健康を守る医師・歯科医師として、今回の広島高裁の決定に抗議し、引き続き、原発ゼロに向けた取り組みを推進するものである。
以上