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※全国保険医団体連合会では、下記の要望書を発表し、総理、財務、新型コロナウイルス感染症対策担当大臣、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:311KB]

【要請書】新型コロナ感染症対策緊急要請書

新型コロナウイルス感染症拡大を阻止し、国民の命と健康を守るため、
医療・歯科医療、介護・障害者福祉の確保を求める

2021年4月19日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 新型コロナウイルス感染症拡大阻止と、医療供給体制確保に尽力いただいておりますことに、感謝申し上げます。
 しかし、政府の緊急事態宣言解除後も感染拡大は収まらず、急速な感染拡大に直面し、再び各地で医療供給体制が逼迫しています。
 こうした事態を招いた大きな原因は、政府が全ての感染者を把握・保護するために必要不可欠な検査体制の拡充や、医療供給体制の抜本的な拡充と財政支援といった積極的な対策を怠ってきたからです。21年度予算においてもこれらの具体策はほとんど盛り込まれず、コロナ対策は5兆円の予備費の中で確保する以外、ないに等しい状況です。
 一方で、コロナ禍で日本の社会保障制度の脆弱さが浮き彫りになったにもかかわらず、21年度予算では社会保障費の自然増を1300億円も削減し、「75歳以上の医療費窓口負担2割導入」などの医療制度改悪法案の今国会成立をも狙っています。これはコロナ禍の教訓に逆行するものであり断じて容認できません。
 今すべきことは、「第4波」を封じ込めるための対策として検査の大幅な拡充、全ての医科・歯科医療機関や介護事業所等への減収補てんなど医療・介護供給体制確保のためのさらなる財政措置を早急に行うとともに、休業や時短を要請する事業者への十分な補償、コロナ禍で仕事を奪われた労働者や倒産・休業を余儀なくされた事業者への支援策を拡充することであり、早急に補正予算を組むことを求めます。
 以上をふまえ、医療・歯科医療、介護・障害者福祉サービス事業者に対して、次の事項の実現を強く求めるものです。

1.新型コロナウイルス感染症患者の治療はもちろん、コロナ以外の病気の治療体制を整備することは国民の命と健康を守る上で、大変重要である。このため、すべての医科・歯科医療機関、介護・障害者福祉サービス事業所等の経営破綻を阻止すること

1-1.

医科・歯科すべての医療機関について

@ 実質的な減収を補填する財政支援を緊急に行い、少なくとも感染拡大による損失(赤字)が生じないようにすること。
A 空床補填、感染防止対策補填、慰労金等を速やかにもれなく支給すること。感染拡大防止等補助金を増額し、簡便、迅速に給付すること。
B 感染拡大局面において、医療・歯科医療に携わるすべての従事者を対象に、改めて慰労金(感染拡大特別手当)を支給すること。
C 感染拡大防止等支援事業は、対象拡大とともに金額を2倍化し2021(令和3)年度も継続すること。
D 雇用調整助成金の特例措置、家賃支援給付金制度を継続し、支給要件を緩和すること。持続化給付金は再支給し、事業規模に応じた金額とすること。
E 自治体独自の医療機関への支援策拡充のため、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を増額すること。
F 感染症対策のための取り組みを評価し、初診料・再診料、訪問診療料、入院料等をさらに引き上げること。小児への加算点数については歯科を医科並みに引き上げること。特例的な診療報酬引き上げは、患者負担増とならない措置を講じること。
G 今後の感染拡大による減収に対して、迅速、簡便な減収補填策として2020年4月以前の診療実績をふまえた診療報酬の概算払いを希望する医療機関に認めること。

1-2.

介護や障害者福祉サービス事業所についても、上記に準じた対応を図ること。

1-3.

新型コロナウイルス感染症患者の入院治療等を担う病院が赤字にならないよう、また、新型コロナウイルス感染症患者に対応する職員の尽力や身体的・精神的負担に報いることができるだけの給与・賞与が十分に支払えるよう、必要な財政支援を早急に行うこと。感染防護具・衛生材料等の確保についても国・自治体で援助すること。

1-4.

新型コロナウイルス感染症患者を受け入れていない医療機関等でも、新型コロナ感染症拡大によって職員の勤務や患者の受診状況が大きく変化し、施設基準要件を満たせない状況が生じている。新型コロナウイルス感染症が収束するまでは、「緊急事態宣言」の有無にかかわらず、全ての医療機関の全ての既届出施設基準について、当該施設基準を満たしているものとして取り扱い、適時調査再開時に自主返還の対象にしないこと。

2.新型コロナウイルス検査体制を抜本的に拡充すること

2-1.

保健所等が担ってきた相談・検査体制を縮小したり、民間医療機関に丸投げせず、新型コロナ感染症に対応する保健所等の人員と予算を大幅に増やし、全国どこでも相談・検査が実施できる体制を構築すること。

2-2.

PCR検査、抗原検査等の検査料及び判断料を全額公費負担とした上で、公費請求額を大幅に引き上げ、検査を実施する医療機関の尽力が報われるようにすること。また、医師の自己診療を認め、周知すること。なお、すべての保険医療機関を「行政検査に関する委託契約を締結した」とみなし、希望する保険医療機関が医師の判断でPCR検査及び抗原検査を実施し、公費請求できるようにすること。

2-3.

病院や介護・福祉施設でのクラスター防止に向け、下記の対象者に新型コロナウイルス検査を公費負担により必要に応じて適宜実施できるようにすること。

@ 医科・歯科医療機関及び介護・障害者福祉事業所などの、全ての職員
A 入院患者及び入所サービス利用者(予定者を含む)
B 手術や胃カメラなど感染の危険性が高いと想定される行為の予定患者

2-4.

地域の医師・医療従事者が協力して検査を行う「地域外来・検査センター」を増やすこと。そのため、設置・運営費用について、国が全額を負担し、出務する職員等に十分な給与・出務費を保障すること。

3.発熱外来への補助金等について

3-1.

診療・検査医療機関への補助金は、申請時の額及び変更申請の有無・額等にかかわらず、実績報告書に基づいて支給すること。また、発熱患者への診療体制を確保するため、診療・検査医療機関への補助金を4月以降も継続すること。補助の方式は最低給付額を設けるとともに、患者を診察するたびに補助金を減額する方式ではなく、発熱患者の診療をするごとに補助金を増額する方式とすること。

3-2.

職員への危険手当の制度化や、感染した場合の休業補償、損失補填を行うこと。

3-3.

コールセンターについて、制度をよく理解した職員を増員し、懇切丁寧な対応を行うこと。

4.医療機関や医療従事者等への誹謗中傷・風評被害や、コロナ陽性患者に対する誹謗中傷を根絶するため、医学的根拠に基づいた広報や教育の実施等、これまで以上に対策を講じ、医療機関や医療従事者への誹謗中傷・風評被害を根絶すること。

5.一般診療や、介護・障害者福祉サービス継続のための緊急対策を実施すること

5-1.

マスク、消毒液、ディスポーザブルのガウン、ゴーグルやフェイスシールド、手袋などの感染防護具等を確保し、医療・介護現場に供給すること。

5-2.

受診抑制は、国民の健康に悪影響を及ぼしている。受診控えが拡大しないよう、感染予防・疾病の重篤化予防の大切さ、医療機関は感染対策を徹底していることなどを紹介しながら、国、行政によるテレビ、新聞、ネットなども活用した受診、予防接種、健診を呼びかける広報活動を行うこと。

5-3.

75歳以上の窓口負担2割導入と紹介状なしでの病院受診時定額負担の拡大、介護保険利用料の引き上げを行わないこと。低所得者及び収入が減少した世帯の医療保険・介護保険の保険料・患者負担・利用者負担の徴収を直ちに免除すること。また、特に妊産婦や子どもの受診抑制をなくすためにも、中学生までの子どもの窓口負担無料制度と、妊産婦の窓口負担無料制度を国の制度として創設すること。

5-4.

通常の国保証をすべての加入者に届け、国保資格証明書の交付を止めること。

5-5.

無保険者をなくすこと。当面無保険者であっても通常の医療が受けられるようにし、受療案内を徹底すること。

5-6.

生活保護審査を簡素化するとともに、保護要件を大幅に緩和すること。扶養義務照会をやめること。

5-7.

 2021(令和3)年9月30日まで、新型コロナウイルス感染症対応の特例として、介護報酬の所定単位数の0.1%に相当する単位数を上乗せするが、上乗せ分は区分支給限度額の計算から除外し、上乗せ額を大幅に拡大するとともに、コロナ終息まで上乗せを行うこと。

6.感染症対策の抜本的強化

6-1.

新型コロナウイルス感染症治療薬やワクチンは、国として有効性・安全性をしっかりと検証するとともに、有害事象が発生した場合の補償・治療をしっかりと行うこと。

6-2.

コロナ禍によって日本の社会保障制度の脆弱性が露呈された。充実した社会保障こそ、感染症対策の基本である。すべての人が必要な医療・歯科医療、介護・福祉サービスを受けられるよう、社会保障を抜本的に拡充すること。

6-3.

公立・公的病院等の再編統合、急性期病床を中心とする病床削減計画を直ちに中止すること。医療供給体制を弱体化させる地域医療構想の検討は直ちに凍結し、地域医療構想を前提とした医師・看護師需給計画を抜本的に見直すこと。少なくともOECD平均に遜色のない医師数を確保するため、公的責任で必要医師数の養成を行い、医師不足の解消を図ること。看護師をはじめとした医療従事者の養成に公的責任を果たすこと。

6-4.

保健所及び地方衛生研究所の数・体制・予算等を強化し、公衆衛生行政の確立を図ること。

6-5.

国立感染症研究所の機能強化を行うこと。日本版CDC(疾病予防管理センター)を創設し、感染症に対応できる仕組みを構築すること。

以上

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