※全国保険医団体連合会では、下記の声明を発表し、厚労大臣、財務大臣及びマスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:303KB]

【声明】財務省が示す新型コロナに係る医療機関の支援策について

2021年4月28日
全国保険医団体連合会
政策部長(医科) 竹田 智雄
政策部長(歯科) 池 潤

狙いはコロナ対策費の削減

 財務省は4月15日、財政制度等審議会・財政制度分科会において、今後の新型コロナウイルス感染症に係る医療機関への支援策のあり方について考えを示した。今後、コロナ入院患者を受け入れる病院に対しては、緊急包括支援金等に代えて、コロナ以前などの診療報酬水準を支払う手法を検討すべきとしている。
 財政審の資料にあるように、これまで予算上ではあるが4.6兆円の財政支援策が打ち出されてきた。同資料によれば、昨年の病院の減収が9千億円(推計)であり、うち新型コロナ入院患者を受け入れる病院は約4分の1弱となる。かりに診療報酬(医療保険財政)で9千億円を補填する場合、国庫負担はその4分の1程度で済むことになる。財務省が言うコロナ対応病院に限定すれば更に少なくなる。
 事実上、「減収補填」を認めたことは重要ではあるが、財務省の提案は、限られた医療機関への減収補填などを口実にして、緊急包括支援交付金(国費)などを大幅縮小・廃止し、コロナ感染拡大に対する医療機関への財政支援を大幅に削減することに狙いがあるものと言わざるを得ない。

地域別診療報酬も狙う

 コロナ入院患者受け入れ病院への診療報酬による減収補填案にしても、「知事の同意」などが課された上、減収を補填する方式として1点単価を補正して支払う手法を述べている。合わせて、財務省の資料では、「1点単価に地域差を設ける対応」など含め「診療報酬制度における地域差の反映方法について幅広く検討すべき」としており、今回の1点単価を補正した減収補填の対応も奇貨として、財務省の宿願である都道府県別診療報酬の議論・活用につなげていく意向が垣間見える。

減収補填だけでなく、支援交付金、診療報酬特例措置の組み合わせで

 そもそも、減収補填だけでは、コロナ感染拡大に対する医療機関の体制確保は困難である。減収補填に加えて、空床確保、感染拡大防止等支援や医療従事者への特別手当などに係る緊急包括支援交付金の継続・拡充、診療報酬の特例措置などを組み合わせた、きめ細やかな支援策こそが必要である。

減収補填は国費で行うべき

 また、減収補填を行うのであれば、都道府県ごとの実施ではなく、全国の全ての医療機関を対象に、昨年のコロナ到来後に生じてきた過去分も含めて補填することが必要である。補填する方法も、1点単価を補正する手法ではなく、減収額を直接補填する方法で行うべきである。これは、昨年6月に資金繰り対策として実施された診療報酬の「概算前払い」を見ても、実務的に可能である。財源も国費とすれば、医療保険財政からの支出ではなくなり、「診療行為への対価性を欠く」とする財務省の指摘もクリアでき、更に患者負担も生じない。

全ての医療機関への支援が必要

 また、財務省は、「コロナに対応しない」医療機関に講じてきた支援策については、「目的及び効果に遡った見直しが必要」として、縮小・廃止を示唆している。しかし、全ての医療機関が地域を面で支えており、コロナ対応医療と一般医療の両方の確保が全国的に必要である。コロナ収束に向けて、コロナ入院患者受け入れ以外の医療機関に対する支援は不可欠である。
 コロナ収束に向けて、減収額の直接補填、交付金、特例措置など、医療機関全体に対するきめ細やかな支援策を実施、継続・強化するよう強く求めるものである。

以上

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