※全国保険医団体連合会では、下記の声明を発表し、マスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:162KB]

【声明】「75歳以上の医療費窓口負担2割化」採決強行に抗議する

2021年5月10日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 政府・与党は5月7日、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」などを内容とする健康保険法等の一部改正案について、衆議院厚生労働委員会での採決を強行した。
私たちは、政府・与党が、高齢者の必要な受診の機会を奪う法案の採決を、受診抑制による健康影響の検証すらもなく、このコロナ禍において強行したことに厳しく抗議し、今国会で徹底審議の上、廃案を求める。

 政府の説明によれば「2割化」の狙いは、75歳以上の高齢者の医療機関受診を抑制することにあることは明らかで、その受診抑制効果を900億円と見積もっている。
 このことをめぐっては、衆議院厚生労働委員会での質疑の中で、野党から「高齢者が必要な医療を受けられなくなるのではないか」、「受診抑制によって健康への悪影響が生じないか」ということが再三にわたり問われた。しかし、今に至るまで政府から納得のできる答弁はなく、こうした問題があらかじめ検証された形跡もうかがえない。また75歳以上の高齢者のうち、2割負担の対象となる範囲(年収基準)は法改正を要せずに、今後拡大することができる制度設計になっていることも問題である。
 参考人質疑では、年金や介護の制度改悪が行われる中で、多くの高齢者とその生活を支える現役世代の不安と懸念の声が紹介され、「患者、国民の生活実態を踏まえた議論をすべき」との指摘もあった。「応能負担」を窓口負担に適用することや、所得再分配の在り方からして医療保険財源を高齢者の負担増で賄うことの問題性も指摘された。
 このまま政府の「2割化」が導入されれば「医療費抑制のためには、いのち・健康に影響が及んでもやむを得ない」というに等しいうえ、今後の医療のあり方にも重大な禍根を残すことは明らかである。
「2割化」導入を議論するための最低限のこれらの論点について、政府は根拠を示して説明し、議論を尽くすべきである。

 この間、私たちも取り組んだ「2割化反対」を求める国会請願署名は100万筆を超えた。コロナ感染症が依然猛威を奮い、日々の暮らしや健康への不安が高まっている中、さらに負担を押し付けることへの反対の声が高まっている。
 いま政府、国会が全力を上げねばならないのは、国民の生活、生業の保障であり、病床や検査体制の確保、速やかなワクチン接種など医療提供体制を立て直すことであって、断じて「2割化」導入ではない。
 私たちは、あらためて「2割化」に反対し、地域の患者・住民とともに成立阻止に向けた取り組みを進めていくことを表明する。

以上

ホームニュースリリース・保団連の活動私たちの提言・意見