※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、厚労省、国会議員及びマスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:152KB]

【談話】歯科医師による新型コロナワクチン接種は
法律により適法性を確保して実施すべき

2021年5月21日
全国保険医団体連合会
歯科代表 宇佐美 宏

 

 厚労省は4月26日付で事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種のための筋肉内注射の歯科医師による実施について」を発出し、歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射の実施について、法的な整理を示した。
 歯科医師法第1条は歯科医師の任務を「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と規定している。新型コロナウイルス感染症が国民の生命と健康を脅かす中で、その対策に参画することは歯科医師の職業的使命である。必要に応じ、安全性を確保してワクチン接種に協力することは、歯科医師としてやぶさかではない。
 しかし、新型コロナワクチン接種のための体制確保は、ワクチンの開発・供給を巡る動向の中で十分に想定しえた課題である。厚労省が、円滑に対応できるよう予め法律による対応に動かず、人材の逼迫が起こってから緊急避難的に解釈による対応をとったことには問題がある。
 事務連絡は、ワクチン接種のための筋肉内注射は医行為に該当し医師法第17条に違反するとした上で、3点の条件(@歯科医師の協力なしにはワクチン接種が実施できない、A歯科医師に筋肉内注射の経験があるか必要な研修を受けている、B被接種者の同意)を満たす場合、「公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得るものと考えられる」とし、集団接種会場に限り、医師の監督下で歯科医師によるワクチン接種の筋肉内注射を可能とした。これは、歯科医師によるPCR検査の検体採取についての法的整理と同じ手法である。
 新型コロナワクチンについては、接種後一定頻度でのアナフィラキシーの発生や、死亡事例も報告されている。PCR検査の検体採取以上に深刻なリスクを伴うことは明らかであり、同じ医行為であっても検討には一層の慎重さが求められる。それにもかかわらず、PCR検査の検体採取と同様に、行政解釈により歯科医師の実施を可能とすることは不適切である。本来的に、国会審議を通じて必要性と安全性について広く合意し、立法により適法性を確保した上で実施されるべきものである。
 医師法の定めを超えて歯科医師の協力が必要と判断するのであれば、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、法律を根拠に実施できる条件を整えることが行政の責任である。ワクチンが必要な国民に円滑に行きわたるようにするとともに、これからも起こり得る緊急事態への対応も視野に、協力にあたる歯科医師の法律上の位置づけを明確にするよう、厚労省の責任ある対応を求める。

以上

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