※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、厚労省、国会議員及びマスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:299KB]

【要望書】新型コロナウイルスワクチン接種体制等の
早急な改善を求める緊急要望書

2021年5月24日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 前略 新型コロナウイルスワクチン接種に向けたご尽力に敬意を表します。
 しかしながら、ワクチン接種を実施する現場では、国による十分な周知がされておらず、疑問に応えるべきコールセンターも電話がつながらず、予約もできない、ワクチンが届かないなど、様々な問題が噴出しています。
 新型コロナウイルス感染症の拡大を食い止め、変異株の出現を抑え込むためには、新規感染者が減っているイスラエル、イギリス、アメリカなどのように、少なくとも人口の半数に新型コロナウイルスワクチンを早急に接種する必要があります。
 ワクチン接種で現場が大混乱している原因は、そもそものワクチン不足、ワクチン接種に関する複雑なシステム、接種体制を自治体・医師会・医療機関など現場に丸投げし、mRNAワクチンの特性に見合った接種体制の構築の不十分さ等にあります。
 新型コロナワクチン接種体制の構築と実施、有害事象への対応は、国と自治体が公的責任を発揮して実施すべきです。
 当会は、地域においてワクチン接種に携わる保険医の団体として、下記の点の改善を早急に行うよう、強く求めるものです。

1.新型コロナウイルスワクチン接種の優先順位等について

(1)

 医療従事者、介護事業所・障害者施設等の従事者へのワクチン接種を優先すること。また、医療機関等での実務実習が求められる医学生・看護学生・薬学生等についても優先接種を行うこと。

(2)

 高齢者への接種に合わせて、居宅で看護・介護に携わる家族等(若い世代を含む)への接種も優先すること。

(3)

 在宅での接種方法について、移送等における留意事項や、より効率的・効果的な実施方法など科学的根拠のある指針を早急に出すこと。当面の間は、巡回バスなどで接種会場へ患者を移動させ、経過観察ができるような体制の確保を行うこと。

(4)

 接種対象群ごとの接種予定時期及び、接種を受ける手順などについて各自治体からの広報を強化すること。なお、広報にあたっては、目が見えない方、耳が聞こえない方、日本語がわからない方への周知にも留意し、国として必要な補助を行うこと。

 

2.新型コロナウイルスワクチンの確保と接種スケジュールについて

(1)

 新型コロナウイルスワクチンの確保に全力を挙げること。ワクチン接種の混乱の原因は、国が情報を透明化せず、情報を小出しに発表し、実施を丸投げしているためである。国の責任ある計画決定が求められる。特に、国はファイザーとの契約を盾に入荷予定を明らかにしていない。このことが、現場を混乱させ、国民に不安を与えている。再度交渉し、入荷時期及び入荷時期毎の入荷数量を明らかにすべきである。

(2)

 接種の進め方について、市町村任せにせず、基本的なスケジュールおよび当面の接種目標数を示し、対応が困難な自治体には、国が直接手を差し伸べるべきである。

(3)

 新型コロナワクチンを多くの方に接種いただくとともに、学業や仕事への影響を最小限にとどめるためには、接種当日及び翌日は、学校においては欠席扱いとせず、企業においては有給休暇扱いとすべきであり、中小企業に対してはこれに伴う損失を補填すべきである。

(4)

 河野担当大臣は4月13日の記者会見で予約キャンセル時の対応として、接種券を持っていない高齢者らに接種が可能との考えを示したうえで、「他市、他県の方でも一向に構わない。まったく制約はないのでワクチンが廃棄されないように、現場対応でしっかりと打っていただきたい」と呼びかけたが、こうした柔軟な取り扱いが現場で行えるようにすること。

(5)

 今後出現しうる新興感染症等に対応できるよう、新型コロナウイルスワクチンを含めた国産でのワクチン開発を進めるため、財政支援を強化すること。同時に、日本脳炎ワクチン・おたふくかぜワクチンについては、ワクチン製造工程における不備によって供給停止が生じているが、こうしたことが生じないよう、監督を強化すること。

(6)

 予防接種施策を評価・検討する仕組み(日本版ACIP)を創設し、予防接種施策を強化すること。

3.新型コロナウイルスワクチン接種体制について

(1)

 予防接種は、接種後一定時間の経過観察を要する。また被接種者の既往歴等も把握した上で接種する必要があるため、下記を前提とすること。

@  かかりつけ医師がいる場合は、かかりつけ医師及び患者の双方が希望する場合は、かかりつけ医療機関での接種を優先すること。
 ただし、医療機関が希望すれば、これまで通り、かかりつけ以外の患者に対しても接種を行えるようにすること。 なお、かかりつけの患者のみに接種を希望する医療機関を改めて募集し、かかりつけの患者のみに接種を行う医療機関についても公費により費用を支給すること。
A  かかりつけ医師がいない場合及び、かかりつけ医師又は患者がかかりつけ医療機関での接種を希望しない場合は、集団接種とすること。
 なお、接種会場までのアクセス・3密回避・一定時間の経過観察を確保する必要があることから広域住民を対象とする接種会場ではなく、小中学校区ごとの集団接種会場及び集団接種会場に出務する医療従事者を、自治体の責任で確保し、その費用は全額国が負担すること。また、企業内及び高校・大学等で接種できる体制の構築についても支援すること。

(2)

 歯科医師等による新型コロナワクチン接種は、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、歯科医師等の法律上の位置づけを明確にし、適法性を確保して実施すること。

 

4.相談・予約体制の構築

 電話等がつながらない、予約が取れないなどの問題が発生している。予約及び相談・質問に十分に対応する必要があることから、下記の対応を行うこと。

(1)

 疑問や相談に対応するコールセンターの電話回線及び対応職員を増やし、不安や疑問に応えること。

(2)

 ネットに精通していない方への対応を図るため、電話予約によるワクチン接種本数をネット予約によるワクチン接種とは別に確保すること。

 

5.情報提供の徹底について

 電話等がつながらない、予約が取れないなどの問題が発生している。予約及び相談・質問に十分に対応する必要があることから、下記の対応を行うこと。

(1)

 新型コロナウイルスワクチンの特性、有効性、安全性等、副反応事例も含めた最新の情報及び接種対象群別の接種時期及び接種に向けた手順、接種後の留意点等を平易にわかるように情報提供を行うこと。

(2)

 本人の同意が得られない認知症患者その他の者に対して、家族の同意によるワクチン接種を認め、そのことを周知すること。

 

6.有害事象・副反応への対策の強化

(1)

 4月30日に開催された予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に提出された「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(19,807例)」では、1回目調査19,190例、2回目調査17,838例中、全身症状(1回目35.7%、2回目76.3%)、倦怠感(1回目23.2%、2回目69.6%)、頭痛(1回目21.2%、2回目53.7%)等の副反応が報告されており、他のワクチンに比べて身体への影響は大きい。

(2)

 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き(2.1 版)では、接種実施医療機関等で準備する救急用品や救急体制の確認、接種不適当者及び予防接種用注意、接種後の経過観察、副反応報告で積極的な報告を検討いただきたい症状が示されているが、これでは不十分である。@有害事象・副反応の起こりやすい人の特徴を示し、接種者の気づきを促す、Aアナフィラキシーについては、起こりやすい人の特徴、はじめの症状を周知する、B有害事象・副反応に対する具体的な対応方法を周知するなど、有害事象・副反応発生時のマニュアルなどを示すこと。

(3)

 新型コロナワクチンの接種について健康被害が生じたと厚生労働大臣が認定した場合には、予防接種法に基づく救済(定期接種のA類疾病と同じ水準)がされるが、新型コロナワクチンの接種に起因した有害事象・副反応に関し、コロナ禍の「有事」を鑑みワクチンとの因果関係を問わず救済することとし、補償額を引き上げること。また、健康被害にかかる医療費は全額を公費で負担すること。少なくとも無保険者や国保資格証明書を交付された方の健康被害についても窓口負担なく医療が受けられるようにすること。

(4)

 新型コロナワクチンの接種について健康被害が生じた場合だけでなく、新型コロナワクチンの接種によることが疑われる場合、因果関係が不明な場合を含む診療・治療体制をしっかりと構築すること。

(5)

 新型コロナウイルスワクチンについて、1回目と2回目の接種について異なるメーカーのワクチンを接種することを防ぐシステムを早急に構築すること。

 

7.新型コロナウイルスワクチン接種費用について

 新型コロナワクチン接種費用は、全国統一の単価として1回につき2,070円(時間外の場合は2,800円、休日は4,200円)とするとともに、時間外・休日に集団接種会場に医療従事者を派遣する場合は、医師は1時間当たり7,550円、医師以外の医療従事者は1時間当たり2,760円を派遣元の医療機関に補助を行うとしている。
 しかし、新型コロナウイルスワクチンの接種にあたっては、感染防御対策の徹底、有害事象等への対応など、通常の予防接種以上の対策が必要である。こうした対応に見合うよう、接種費用は少なくとも初診料と同額(1回につき2,880円)とし、時間外や休日に実施する場合は、初診料の時間外加算(850円)、休日加算(2,500円)と同額を上乗せすること。
 また、5月11日の事務連絡で「訪問診療に合わせて新型コロナワクチン接種に係る診療等を実施した場合は、在宅患者訪問診療料(T)又は(U)が算定できる」とされたが、訪問診療とは別日に在宅において新型コロナワクチンを接種する場合は、往診と同額を接種費用とすること。外来診療を実施する日にワクチン接種を行う場合は、ワクチン接種費用とは別に、再診料・外来管理加算等が診療報酬で算定できるようにすること。
 これら取り扱いは、4月に遡及すること。

 

8.ワクチン接種者及び非接種者への対応

(1)

 ワクチンを接種しても、新型コロナウイルスに罹患する事例もある。また、有効期間もまだ不明である。このため、接種者に対して、今後も@身体的距離の確保、A効果的なマスクの利用、B手洗いや3密を避ける等の周知をさらに徹底すること。

(2)

 職場・学校等の集団生活の場においてワクチン接種者と被接種者において差別的な扱いが生じないよう、特に「接種証明」のようなもので社会的・福祉的サービス等が受けられないなどといったことがないよう、十分な配慮を行うこと。

以上

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